「これぱぱのばいく？」
「そうだ」
「かっこいい！」
バイクの点検中に娘が太宰に抱えられてやって来た。
「ね、あおしゃばしゃん！」
「でもね娘ちゃん、パパはこのバイクに乗ると足が地面に届かないのだよ」
「え、そうなの！？」

「勝手に話を作るんじゃねえ太宰！！」


*****


中学生になった娘。
制服のスカートの丈が短いと叱る中也に反抗期真っ盛り。
「もー！パパ五月蝿い！」
「あのなあ！手前まだちゃんと異能制御出来ねえんだから…」
と云った瞬間、娘の手がスカートに触れ異能が発動した。

「…見たわね、パパのエッチ！」
「俺のせいじゃねえよ！！」


*****


「帰ったぞ」
中也が任務から帰ると拠点で娘が待っていた。
「あ、パパ足に怪我してる！」
「只の掠り傷だ」
「私が手当してあげる！」
そう云うや否や中也の体が宙に浮いた。
「おい、手前…」
「捕まっててね、パパ！」

「最近娘が異能で俺を姫抱きするのにハマっててな…」
「何それ羨ましい」


*****


「ねえ娘ちゃん、私も姫抱きしてみない？」
「太宰さんを？」
中也から話を聞いた太宰が興味本位で娘に頼んでみた。
「無理だよー」
「なんで！？」
「抱き上げた瞬間異能が解けちゃうもん」
「あ…」
「私より軽くなったら出来るかも」

「中也位小さくならないと無理だね」
「太宰手前…」


*****


「あおしゃばしゃん！これね、たくしー！」
「おお、ミニカーなんて持ってるの」
「こやってね、あくの！」
「開閉式か。今のミニカーは凄いねえ」
「それでね…これなに？」
「今タクシーって自分で言ったじゃないwww」

「最近四六時中こんな感じだ」
「“これ何”期か。中也も大変だねえ」


*****


「あおしゃばしゃん！」
「その呼び方やめようよー」
「や！」
太宰さんが中原さんの娘に圧されている。
「ぱぱがよんでいいって！」
「中也の云う事全部信じちゃ駄目だよ」
「あとね」
「まだあるの？」
「あおしゃばしゃんってだれもよんでないからね、とくべつなの！」

太宰さんが負けた。


*****


「女の子がこんな処に一人？」
学校の帰りに男に声を掛けられた。
「そうだけど」
「なら俺と遊ばない？」
「如何して？」
「暇そうにしてるからさあ」
グイグイ来る男に嫌気が差したと同時に男が視界から消えた。
「うちの娘にナンパたあ命知らずだなあ？」

「ぱぱ！」
「明日からは迎えに行く」


*****


風呂上りに牛乳を煽る中也。
「ぱぱ、ぎゅうにゅーのんでる」
「ママに見つかったら弄られるから内緒な」
「ん」
「良い子だ。手前はパパより大きくなるなよ」
「うん、あおしゃばしゃんもおんなのこはちっちゃいほうがいいっていってた」

「あの糞鯖…いらん事吹き込みやがって…」


*****


「青鯖…娘に妙な事吹き込みやがって…今日こそ死なす！」
「やってみなよ」
探偵社に遊びに来た筈が中也と太宰の乱闘を見せられる娘。
「ぱぱ…あおしゃばしゃん…」
「二人とも止めて下さい！娘さんが…」
「やだぁ…けんかしないでぇ…！」

「吃驚させたな、悪かった」
「御免ね娘ちゃん…」


*****


「れもんさんみてみてー！」
中也の娘が梶井の前でクルンと回る。
「おお！檸檬柄の洋服か、似合っているじゃないか」
「ほんと！？」
「嗚呼、素敵なレディだよ」
「えへへ、れもんさんとおそろなの」
「おそろ？お揃いの事か。光栄だな」

「梶井、娘はやらねえからな」
「ぱぱおかおこわい」


*****


「ぱぱ、おそとまっくら」
中也の娘が外を見つめる。
「台風が来るらしい」
「たいふー？」
「前も来たろ？ざざ降りだ」
「まどがたがたいってたやつ」
「そうだ。予定してた買い物は出来ねえな」
「えー。ぱぱとでえとしたかった」
「ならお家デエトはどうだ？」

「おうちでえと！する！」


*****


「ぱぱ、ねよ」
「悪い、先寝てろ」
目を擦りながら服の裾を摘まむ娘の髪を梳く。
「やだ、ぱぱといっしょ」
「パパまだ一寸仕事残ってんだ」
「ぱぱといっしょじゃないとねれない」
「…判った、五分待ってろ」

「まま、さくせんせいこうした！」
「今日は三人一緒に寝ようね」


*****


「にもつつめつめ」
「嗚呼、明日から出張なんだ」
「しゅっちょー？」
娘が鞄に入るのを止める中也。
「遠くまでお仕事だ」
「いっしょにいくー！」
「危ねえから駄目だ」
「えー」
「その代わりママの事頼むな」

「まかせて、ぱぱよりらぶらぶになっちゃうから」
「マジか、それは困る」


*****


「はかせー」
トタトタと廊下を進みながら梶井を呼ぶ中也の娘。
「おや嬢、何か用かな」
「けんきゅーみたい」
「父上に怒られるぞ」
「もうおこられたからいーの！」
そう云い研究室を覗き込む幼子に諦めて溜め息を吐いた。

「今進めている研究の話をしてあげよう。ようこそ我が城へ」


*****


「ぱぱ、おふろ」
「おお、一寸待てな」
寝間着を持って準備万端の娘に引っ張られる。
「本当中也にべったりね」
「悪いな」
「ま、お風呂は何時まで一緒に入れるか判らないしね」
「…え」
妻の言葉が心臓に深く刺さった。

「何時までもパパと風呂入ろうな」
「いや無理でしょ」
「おふろまだ？」


*****


「れもんさん」
「おや嬢」
「たいふーくるって」
「嗚呼そうだね。知らせに来てくれたのかい？」
「うん、けんきゅーでわすれてるかもってぱぱが」
「成程。では嬢、暇潰しに付き合ってくれるかな？」
「いいよ！」

「ぱぱ！れもんさんつれてきたー！」
「連れて来いとは言ってないぞ」


*****


「ぱぱ、とりっくおあとりーと！」
「お、如何した黒猫さん」
「おかしちょーだい！」
「ったくしょうがねえな」
中也に近付いてきた黒猫、もとい娘は南瓜の篭を持って楽しそうに笑う。
「既に沢山入ってんな」
「みんないっぱいくれた！」

「んじゃ俺からはいらねえかな」


*****


「えー、でもおかしくれなかったらいたずらしちゃうよ？」
「ほお、一体どんな悪戯してくれんだ？」
「んとね、ちゅーしちゃうの！」
「俺はそっちの方が良いな」
娘を抱き上げるとお菓子をくれない事に拗ねたのかぷくっと頬を膨らませて中也の頬に口付けた。

「おかし！」
「判った判った」


*****


「あけましておめでとーございます！」
「おう、今年も元気に過ごしてくれよな」
「ぱぱも！」
「パパも手前が居てくれたら何時でも元気だ」
「ほんとー！？」
「勿論だ。パパの傍に居てくれるよな？」
「うん！」

「今年も旦那と娘が可愛くて幸せだわ」
「男に可愛いって云うな」


*****