壱頁完結物


「ぼしゅはおしゃしゃんだから、あかちゃんのつくりかたしってるってきいたの」
「そっかぁ。誰に聞いたのかな?」
「ぱぱ」
森は眉間に指を置いた。
現在目の前にいる幼児の両親は不在にしており、本来はエリスと遊ばせる予定なのだが先刻から質問攻めに遭っている。
「そうは云ってもねぇ…」


*****


「教えてあげれば良いじゃないリンタロウ」
「この子はまだ三歳だよ?余りにも酷と云うものだ」
盛大な溜め息を吐き乍ら背凭れに身を任せる。
幼児は森の足をよじ登り膝に座り始めた。
「おしえてくれたらえぃすちゃのおさがりきたげる」
「本当かい!?いやぁ如何しようかなぁ!!」
「リンタロウキモい」


*****


「赤ちゃんと云うのはね、ママの体にある卵とパパの体にある赤ちゃんの元を混ぜ合わせると出来るんだよ」
「とりさんみたいなたまご?」
「否、触るとすぐ潰れてしまう柔らかい卵だよ」
其れにとても小さい、と付け足す。
「最初は丸かった卵が、赤ちゃんの元を加えるとどんどん複雑な形になって」


*****


「最終的に赤ちゃんの形になるのよ」
エリスが画用紙に赤ちゃんの絵を描いて持って来た。
「えぃすちゃじょーず!」
「流石エリスちゃんだ」
得意気に笑うエリスを見つつ、森は話を続ける。
「卵から赤ちゃんになるまでは10ヶ月かかる。其の間ずっとママのお腹の中で育つんだよ」
「あたしも?」
「勿論」


*****


「理解出来たかな?」
「うん!」
首を大きく縦に振る娘に安堵する。
「でも、あかちゃんのもとはどやってままにどうぞするの?」
「…そこに触れるのか」
「あおしゃばしゃんね、ままのなかにぱぱがはいるのよーってどーなつでおしえてくれたの」
「ドーナツとはまた際どい選択をしたね彼は…」


*****


「まるどーなつにまっすぐどーなつが…」
「其れは太宰君の嘘だからもう忘れなさい」
ピシャリと云い放ち娘の口を塞ぐ。
「そしたらね」
「まだ喋るか」
「ふたりともこなこななるんだって、どーなつちぎちぎしてたの」
「良いかい、今後太宰君の話は全部嘘だと思って聞きなさい」
「?はーい」



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