壱頁完結物
「首領、明けましておめでとう御座います」
「おめでとう。今年も宜しくね」
首領の執務室にて中也が恭しく頭を垂れる。
其の足元には艶やかな振袖を来た娘が居た。
「ほら、お前も挨拶しろよ」
「うん!」
娘は背筋を伸ばして首領にお辞儀をする。
「ぼしゅ、あけおめことよろ!」
「はい、宜しくね」
*****
和やかな雰囲気だが、中也の顔は真っ青になった。
何が如何なっているのか理解が追い付かない。
「おや、顔色が悪いねえ」
「ぱぱどしたの?」
首領に抱き抱えられ心配する娘に睨みを利かせる。
「先刻の言葉は何処で覚えた」
「?」
「パパ云ったよな。首領には失礼の無いようにって。忘れたか」
*****
「??」
「もう一回ちゃんと挨拶しろ。でないともう今日は口利いてやらねえぞ」
「!?」
口利いてやらねえぞ、の言葉に自分が何か悪い事をしたのだと理解した娘は慌てて首領の方を見る。
「ぼしゅ、しつれいなことしてごめんなさい…」
「可愛かったし私は良いんだけどね」
項垂れる娘に温かい手が乗る。
*****
「ぼしゅ、あけましておめとごじゃます」
「うん、おめでとう。今年も元気一杯遊んでね」
「はぁい!」
舌っ足らずだが何とか無事挨拶をした娘にホッと胸を撫で下ろす父。
「なぁ、本当に何処で覚えてきたんだ?誰に教わったんだ先刻の」
「んとね、たっちゃ!」
後ろに並んでいた立原の肩が跳ねた。
*****
「わかものはみんなこやっていうんだって!」
「ほぉ…」
扉を切り裂く勢いの眼光が立原に注がれる。
「や、真逆首領の前で云うと思わなくて…」
「そりゃ残念だ。もう少し後で教えるべきだったなぁ」
「ヒィ!スンマセン中也さん!!」
「後で面貸せや」
「…っス」
隣で銀がひっそりと同情した。
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