壱頁完結物

「りゅー!かぼちゃさんして!」
突然の幼女の要望に首を捻る。
幼女の手は大きなカボチャを抱えている。
どうやら異能で重さを軽減しているようだ。
「…何だ其れは」
「かぼちゃさんだよ!しらないの?」
「知らぬ」
「えー…」

あからさまにガッカリした様子の幼女を見ていると後ろから声がした。


*****


「先輩、ジャック・オ・ランタンの事ではないですか?」
金髪を纏めた後輩が声をかけて来た。
「何だ其れは」
「南瓜をくりぬいて顔を彫るんですよ」
「それー!いちょすごーい!」

幼女が満面の笑みで飛び跳ねる横で端末を操作すると、不気味な顔を彫られた南瓜の画像が幾つも出てきた。


*****


「此れを作れば良いのか」
「うん!」
自分に抱き着く幼女の頭を撫で乍ら、外套を刃物に変え慎重に南瓜を切り始めた。
「りゅー、おかおかわいくしてね!」
「僕に其の要望は無意味」
「どゆことー?」
「保証できぬと云っている」
「えー、りゅーはできるこだもん」

其のやり取りを後輩は指を咥えて見ていた。


*****


「此れで良いか」
「あんまりかわいくない」
「保証せぬと云った筈だ」
出来上がった南瓜を見た幼女は少し不満げ。
「帽子を被せてみたら?」
後輩が何処かから持って来た魔女風の帽子を被せると、幼女は華のような笑顔を見せた。
「かわいー!」
「ふふ、良かった」

「りゅー、いちょ、ありがと!」
「構わぬ」



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