壱頁完結物
「あ!ねぇねぇ」
「…んだよ」
「ぱぱみた?」
「中也さん?見てねえな」
自分を指差す幼女の背の高さまで屈む立原。
「お前な、俺の名前早く覚えろよ」
「えっと…おなまえなぁに?」
「たちはら、だ」
「たー、たっ…」
「たっちゃ!」
「…一先ず其れで良いわ」
*****
「中也さん、娘さん連れて来ました」
「悪いな」
結局パパ探しに付き合わされ、立原は幼女を引き渡した。
「ぱぱ、あのねー」
「如何した?」
「たっちゃ!」
立原を指差す娘の意図が判らず首を傾げる中也。
「俺の名前っス」
「お、おお…漸く覚えたのか」
「全然云えてませんけどね」
*****
後日、不機嫌極まりなく部下でさえ声を掛けられない立原の下に幼女が寄って来た。
「あのねー」
「…」
「あれ、たっちゃ?」
「んだよ」
「おはなしきいて!」
「ったくしゃーねーな」
幼女を抱える立原に部下がザワついた。
「最初から名前呼べってんだ」
「たっちゃ!」
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