壱頁完結物


「おきものはー?」
「着物か…悪い。今年は用意してねえんだ」
「えー」
漸く拠点内の招宴が落ち着き初詣に出掛けようと支度をしていると娘が着物を着たいと云い始めた。
昨年のはもう丈が短いし如何したものか。
「如何かしたかえ」
「姐さん」

「ねねしゃん、おきものきたいの!」


*****


「おや、用意せんかったのか」
「すっかり忘れてました…」
「おきもの…」
足に擦り付く娘の頭を姐さんが撫でてくれる。
「私のお古で良ければ着るか?」
「いいの!?」
「有るんですか」

「柄が気に入っていての、何時か此の子に着せてやろうと思っておったのじゃ」


*****


「ぱぱみてー!」
「おお、似合ってるじゃねえか」
艶やかな朱色の着物は俺と同じ髪色の娘に良く合った。
「有難う御座います、姐さん」
「代わりに初詣の時は私が抱くからの」
「えっ」
「私と一緒に初詣行ってくれるかえ」
「いくー!!」

「くっ…用意しておくべきだったぜ…」



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