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うらみちお兄さん 表田裏道


≪お兄さんとお風呂≫



「寒かったね…」

「全然寒くなかったし」

「家で意地張るのやめようよ」



屋外ロケが終わった冬の夜、風が強い中やっとの思いで家に帰って来た。
俺よりも厚手のコートを着ているにもかかわらず、彼女はガタガタと震えている。



「先に風呂入れよ」

「でも、裏道さんが…」

「俺は平気だから」

「肌に寒イボできてたの知ってるよ」

「………」



まあ、こんなクソ寒い日にタンクトップと半パンやら海パンで半裸やらクソ寒い格好してたら正直クソ寒い。
でも震えている彼女を差し置いて俺が先に入って風邪でも引かれたら困る。
彼女も彼女で、俺に風邪を引かせまいと頑なに意見を譲らないらしい。



「じゃあ一緒に入るか」

「……へ?」

「狭いけど」

「いやいやいやいや!狭いとかそういう話じゃなくて!!」



拒否の姿勢を取る彼女にこの提案のメリットをつらつらと言葉にすると、渋々首を縦に振った。



「…どうぞ」



浴槽にお湯を張り、彼女が先に入るのを待ってから俺も後に続いた。
この短時間にいつ入れたのかお湯は入浴剤で乳白色に染まっている。



「あんだけヤってるんだし裸なら見慣れてるけど」

「……人間恥じらいが無くなったら終わりだと思うんだ」

「……そうだな」



真っ当な意見に納得せざるを得ない。
かくいう俺も一応腰にタオルを巻いてるし、人の事は言えないわけで。
そろそろ寒さの限界を向かえ、湯気のたつ浴槽に体を沈めた。



「はぁ~~~…」

「やっぱり寒かったんじゃん」

「そりゃ真冬の海であんな格好したら死ぬわ」

「見てるだけでも寒かったもん」

「二度とやりたくない」



彼女と向かい合わせに入ったものの、やっぱり狭い。
一人暮らしの風呂が大きいわけ無いのだが、足が微妙に不自由だ。



「なあ、こっち来いよ」

「なんで?」

「足が狭い」

「えー…」

「俺にもたれて良いから」

「………ん」



両手を広げると、恥ずかしがりながら彼女が俺の方へやって来た。
後ろから抱き締めるとお湯の温かさと人肌の温かさが相まって、体温が上昇するのを肌で感じた。



「あったけぇ…」

「裏道さん肩冷たいよ」

「肩まで浸かるか」



ずるずると体を沈めると、もたれている彼女も一緒に沈んでいく。
ほぼ仰向けになった彼女の近くで何故かタオルが浮いていた。



「ん?何だこのタオル」

「ひゃ!?」



タオルを触った瞬間、彼女が飛び上がって背を丸めてしまった。
あまりに突然の出来事に一瞬何が起こったか分からず放心していると、彼女が顔を真っ赤にして俺から離れていく。



「…今のわざと?」

「いや、タオルが浮いてたから…」

「浮いてたんじゃないよ!…エッチ」

「………、あっ!そういうことか!」

「気付くの遅いよ馬鹿ぁ!!」



彼女はそのまま浴槽から立ち上がり、胸元を押さえたまま光の早さで浴室を後にした。



「確かに、柔らかかったもんなぁ」



今のでスイッチが入ってしまった俺は、怒った彼女をどう口説き落とすか考えながら浴室を後にした。



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