うらみちお兄さん 表田裏道
≪お兄さんと衣装≫
俺の彼女は実は同じ職場で働いている。
俺のヘアメイクや衣装周りを担当しているのだが、今日は何だか様子がおかしい。
「どうかした?」
「いや…さっきディレクターさんに『うらみちお兄さんの衣装は何でいつもホットパンツ並みに丈が短いんですか』って聞いたんですけど」
「何で聞いたの」
「だって!裏道さんの生足が全国に放送されちゃうんですよ!!」
「悪かったね、お目汚しでね」
「違うんです!そういう後ろ向きな話じゃなくて!!」
お気付きだろうか。
いつもは敬語を注意する俺が、今は全く注意しない。
もちろん仕事中だし最低限の礼儀は守ろうね☆という意味もあるのだが
熱愛報道で記者会見なんて死んでも晒したくないので、職場では最低限の人物にしか公表していないのだ。
そんな訳で、彼女は注意されないという安心感の中、バリバリ敬語を使っている。
話を戻そう。
「…それで、ディレクターは何て言ってたの」
「それが…」
『いや~、一部の脚フェチママから絶賛されててさ~、惜しげも無く出して欲しいって要望が結構来ててね~。やっぱりテレビ局としては期待に応えていかないと!!』
「……って」
「教育テレビにお母さんの趣味反映させてどうするんだよ……」
いつもながら下らない理由に肩を落とすより他にリアクションが見つからない。
そんな事の為に俺はあんなへんてこりんな格好をさせられているのかと思うと、抵抗せずに着てしまった後悔と絶望に押し潰されそうになる。
「それで、それを報告して俺の絶望を煽ろうとしてるの?」
「ち、違いますよぉ!私悔しいんです!!」
「悔しい?何が?」
30過ぎの成人男性の生足が全国放送されて気持ち悪いと言われるならまだしも…いや、それはそれで凹むけど、悔しがる道理がどこにあるんだ。
すると彼女は不貞腐れた顔で視線を逸らしてしまった。
俺、何か間違った事言った?
「だって…」
「だって、何」
「裏道さんの生足を見て良いのは、私だけのはずなのに…」
「………」
不覚にもときめいてしまった。
正直に言おう。今の彼女、めちゃくちゃ可愛い。
見て!俺の彼女!!めちゃくちゃ可愛い!!!って自慢して回りたい。
しないけど。
「はぁ……」
「え、何ですか!?」
「お前、ここが職場で良かったな」
「えぇ!?私殺されるんですか!?」
「殺しはしないけど」
にじり寄る俺にあっさりと捕まった彼女の耳元に顔を寄せる。
「足腰立たないようには、してたかもな」
「ひぁ…むり…」
真っ赤な顔で机に突っ伏す彼女を放置して、俺は上機嫌に楽屋を後にした。
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