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うらみちお兄さん 表田裏道


≪プロローグ≫



「面白くなってモテたい…」

「兎原潰れたな。お開きにするか」

「はい」



「ママンとトゥギャザー」の収録が終わり、職場の忖度と理不尽に抗うように大学時代からの後輩である兎原と熊谷と三人で呑みに行って、何時も通り兎原が潰れたからと店を出る。
上を向くより下を向いた方が光が見える飲み屋街を歩きながら、兎原に肩を貸す熊谷が話し掛けて来た。



「そういや最近どうすか」

「ああ…待て、兎原潰れてるよな?」

「大丈夫だと思いますよ。聞いてたとしても夢だって言っときます」



空気の読める熊谷に出来るだけ素直に感謝し、俺は一回深呼吸をしてから切り出した。



「まあ、順調にいってるよ」

「マジすか。あの裏道さんが」

「どの裏道さんだ」

「すいません」

「何で俺を選んだのかイマイチ理解しきれないけど、存在意義が出来た気がして普通に嬉しい」

「へえ、やっぱ良いもんなんですね」

「どうだろうな。うたのお姉さん見てると人それぞれって感じするけど」

「まあ確かに」



そんな話をしていると気付けば分かれ道に着き、熊谷と別れて帰路に着く。
道中タバコを吸いながらスマホを確認し、来ていたメッセージに逐一返信していると家に到着した。
自分の部屋のドアを見つめ、煙草の煙を身体から抜くように吐き出す。



「ただいま」



一人暮らし用の部屋で俺は声を発する。
30を過ぎたおっさんが一人でそんな事をしていたら孤独と罪悪感で家から出られなくなるが、今は違う。
部屋の奥の方からパタパタと足音がして前を向くと、女性が一人、俺に向かって小走りで近付いて来た。



「おかえりなさい、裏道さん」

「悪い、今日食べて来た」

「そんな気はしてたので大丈夫ですよ」

「…敬語」

「あっ!」



慌てて口を塞ぐ彼女に思わず笑みを零せば、人懐っこい笑みで俺の腕を取りグイグイ部屋の中へと引っ張って行く。
二人してソファに腰を落ち着け、大きく息を吐いた。



「疲れた」

「お疲れ様」

「ありがと」

「お風呂沸いてるよ」

「もうちょっと後で」



肩を掴んで自分の方に向かせると、まだ口紅の乗った唇に自分のそれを重ねた。
離した途端に顔を真っ赤にする彼女に釣られて俺も照れるが、あんまり格好悪いところは見せたくないと気を取り直す。



「不意打ちは…反則です」

「無防備なお前が悪い」

「言いがかりですよ」

「ほらまた敬語」

「ぐぬぬ…」



目の前で百面相をする彼女に吹き出せばますます機嫌を損ねるが、最終的には一緒になって笑い始めた。
そんな彼女に、俺は心底惚れているらしい。

これは体操のお兄さん、表田裏道とその恋人との日常の物語である。



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