書類係の誘拐
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「クソ、発信機が壊されてやがる」
ポートマフィア幹部にして澄の上司である中原中也は道路に落ちているチョーカーを拾い上げ舌打ちをした。
其のチョーカーは何時も澄の外出時に装着を義務付けている物で、中に発信機が埋め込まれている。
機密事項の詰まった書類を運搬する彼女には信頼の証として必需品とも云える代物だ。
最初は「中也さんとお揃いっぽくて恥ずかしい」と装着を嫌がっていたが、最近は何も云わず着けるようになっていた。
「…こんな道路のド真ん中で捨てる様な奴じゃねえし、攫われたか」
壊れたチョーカーを握り締めた中也は車に乗り込み、ポケットに入れていた端末で電話を掛ける。
「芥川、手前の妹が攫われた。黒蜥蜴を連れて探せ」
動揺が滲む声が端末から聞こえてくるのもお構いなしに通話終了ボタンを押した中也は、もう一度軽く舌打ちしてから車を走らせた。
「私、龍兄じゃないのに…」
澄は力なく項垂れていた。
何回も自分は芥川龍之介ではない事を叫んだが、二人は全く聞いていないようだ。
ふと彼等の腕を見た澄は体を強張らせる。
「注射の跡…」
腕に付いた無数の赤い点に悪寒がした。
きっとヤク中なのだろう、そしてあの高いテンションからして服用直後。
話も聞いてくれない訳だ。
「俺達の仲間をほぼほぼ殺してくれちゃってよお。流石指名手配犯様はやる事のスケールが違うぜ」
「其れが真逆の女装癖があったとは、面白い事もあるもんだぜ」
「違うよ!龍兄は女装なんかしないもん!!」
先刻から否定し続ける澄に漸く重い腰を上げた二人は彼女の目の前までやって来た。
「お前、先刻から何を云ってるんだ?」
「だから私は芥川龍之介じゃないの!龍兄の妹で、女なの!判った!?」
キッと睨み付けると男は一瞬後退ったが、今度は下品な笑みを浮かべ乍ら手を伸ばしてきた。
「な、何するの!?」
「お前が女だってなら証拠を見せて貰わねえとなぁ」
「は…証拠?え、ちょ…待って!!」
男はバタフライナイフを取り出し澄の服に引っ掛ける。
其れは今日鏡花に見せようと思っていた、兄龍之介からの誕生日プレゼントだった。
各処にフリルがあしらわれた白いブラウスが少しずつ裂けて行く。
「や、止めて…此れは龍兄に貰った大切な…」
「暴れんな、折角の白い肌が赤く染まるぜ?」
「さぁて、男か女か…オープン!」
澄は悲しさと恐怖から金切り声を上げた。
.