書類係の誘拐
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「澄、遅いな」
作業音だけが響く探偵社で、鏡花が窓の外を見ながらポツリと呟いた。
其の声に作業をしていた他の社員も顔を上げ、各々の近くにある時計に視線を落とす。
「本当だ、約束の時間から三十分以上経ってる…」
「何時もは必ず時間より早く来るのに…」
敵組織ポートマフィアの構成員で在り乍ら探偵社と書類の引き渡し等を主な業務とする芥川澄は、探偵社の中でも可愛がられている。
真面目で時間もキッチリと守る彼女が仕事に遅れる事に、一同はかなり驚いた。
「今日は、誕生日プレゼントに貰った服を見せてくれるって云ってた」
「其れなら絶対早く来るはずですわね」
「心配…」
「そうだね。如何したんだろう」
「道に迷ったり…」
「もう何十回と通った道をか?」
「うーん…じゃあ寄り道をしているのかも」
「仕事中にか?太宰じゃあるまいし…」
盛大な溜め息を吐いた国木田が向かいの席へと目をやると主人が不在な机が静かに鎮座しており、口の端がヒクつく国木田を敦が何とか宥めた。
「処で、あの莫迦を最後に見掛けた者は?」
処変わり、真っ暗な闇の中。
其処で何かがムクリと起き上がった。
「いてて…此処は?」
声からして少女だろう。
慣れない暗闇に視線を彷徨わせ、自分の状況を探ろうと必死になっている。
「龍兄…?銀姉…?」
心細さから兄姉の名前を呼ぶが返事は無い。
一先ず動こうと足を動かすと、ジャラリと金属の擦れ合う音が耳についた。
「鎖…足枷?」
手を動かすと同様の音がする。
逃げられないよう手足に枷をつけられているらしい。
少女———芥川澄は困り果てて溜め息を吐いた。
何故こんな事になったのかが判らず頭を悩ませていると、部屋が急に明るくなった。
眩しさに目を閉じると、目の前で扉の開く音がする。
再度開いた時には見た事も無い男性が二人、扉の前に立っていた。
「兄貴、本当に此奴なんですかい?」
「間違いねぇ、俺の眼に狂いはねえよ」
自信たっぷりにふんぞり返る兄貴と呼ばれた男は、澄を指差して高らかに笑う。
「毛先の白い黒髪に色白の肌、ヒラヒラした服…間違いねえ!」
「兄貴が云うなら…遂に捕まえたぞ、芥川龍之介!!」
「………え?」
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