壱頁完結物
今日は久し振りに中也とデヱトだからと思って気合入れてお洒落したのに、何でこうなったのかしら。
「お姉さん一人?」
「待ち合わせよ」
「先刻からずっと居るよね。すっぽかされたんじゃないの?」
「まだ待ち合わせの一時間前なの。放っておいてくれる?」
二人掛かりなんて本当面倒だわ。
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「それじゃあ一時間だけ俺らに付き合ってよ」
「そんで彼氏より良かったら俺らとデヱトしてくれるってのは如何?」
「論外ね、却下」
こんな下品な男達が中也より良いですって?
鏡を見た事が無いのかしら。
「兎に角気が散るの。消えてくれる?」
ナイフを出そうとした手を、誰かに掴まれた。
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「流石に其れは止めろ」
上から降って来た声は聞き慣れた物で思わず見上げると、見慣れた橙色の髪が視界に広がった。
「悪い、遅れた」
「中也!」
手を離され頭をポンポンと叩かれる。
「貴方が遅いから面倒事に巻き込まれちゃったじゃない。如何にかして!」
すると男達が飛び上がった。
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「否…その」
「一人だったから如何したのかなと思っただけで…はは」
明らかに声を震わせ乍ら言い訳する男達に、中也はニコリと笑った。
「そうか、気ィ遣ってくれて有難うな。でももう俺も来たからよ」
そう云い一歩彼らに近付く。
「二度と俺の女に近付くんじゃねえ。失せろ」
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「悪かったって。会議が長引いたんだよ」
業とらしく頬を膨らませると、先刻の威圧感など無かったかの様に平謝りの中也。
と思ったら何故か笑っている。
「然し『待ち合わせの一時間前』たぁ可愛い事云うじゃねえか」
「あれは!…全部中也が悪いのよ!」
次は私が一時間遅れてやるんだから!
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