短編
「夜まで大雨警報出るっぽいぞ」
中也の家に泊まった次の日、大雨のせいで家に帰れなくなった。
「此処に置いてる服全部洗濯中だわ」
「もう家のモン全部持って来て此処に住めよ」
隣に座る中也の云う事が理解出来ず首を傾げると
「もっと判りやすい方が佳いか」
と笑われた。
「結婚しようぜ」
*****
「悪い、明日から出張だ」
「幹部は大変ね」
荷物を詰める中也を手伝う。
「拠点の事は任せて」
「おう、頼む」
「でも早く帰って来てよ」
「餓鬼みてえな事云うんじゃねえよ」
「あら、恋人に寂しいって云って何が悪いの?」
「…俺まで寂しくなるから止めろっつってんだ」
*****
目の前が霞んで見える。
誰かが呼ぶ声がする。
いや、誰かなんて判り切っている。
「ちゅ、ぅや…」
「おいしっかりしろ」
「…今、何時」
「もう日が暮れたぞ。具合は如何だ」
「まだ一寸…お腹痛い…」
「毎月毎月大変なこった」
「スープなら出来てるぞ」
「食べる」
「其処で待ってろ」
*****
ふわりと良い匂いがして目を覚ます。
どうやら眠っていたらしい。
「起きたか」
「中也…あれ、ベッド…」
「ソファで爆睡してたから運んだ」
サイドテーブルにマグカップが置かれ中を覗く。
「寝る前だからホットミルクな。お疲れさん」
貴方の肩に凭れながら飲むホットミルクの美味しい事。
*****
「あけましておめでとーございます!」
「おう、今年も元気に過ごしてくれよな」
「ぱぱも!」
「パパも手前が居てくれたら何時でも元気だ」
「ほんとー!?」
「勿論だ。パパの傍に居てくれるよな?」
「うん!」
「今年も旦那と娘が可愛くて幸せだわ」
「男に可愛いって云うな」
*****
「雪が降って来たな」
そう云って番傘を差すと着物姿の嫁が寄って来た。
「お正月に着物で初詣して番傘で相合傘なんて情緒溢れるわね」
「嗚呼、綺麗な着物を着た自慢の嫁を見せびらかすのも悪くねえな」
「中也って偶にそう云う事云うんだから…」
何故か嫁が腕に絡み付いて俯いた。
*****
「ねぇ、如何かしら」
「あ?」
彼女が急に顔を近付けて来るものだから反射的に後退りする。
「何で逃げるのよ」
「手前…何企んでやがる」
「…そ、気付かないなら良いわ」
膨れっ面で其の場を去る彼女と入れ替わりに姐さんが呆れ顔でやって来た。
「めかし込んでおったのに、可哀想にのう」
*****
「今日は愛妻の日なんですって」
「何時も愛されてんだろ?」
「誰によ」
「…俺、手前の旦那だよな」
こう云う時にすっとぼけられると結構傷付くんだが。
「でも最近エリス嬢の手ばっかり取るんだもの」
寂しいわ、何て言われちゃ俺の敗けだ。
「判った。何がご所望なんだ、お姫様?」
*****
※ホワイトデーポストお題
「中也さんが八雲さんにあーんしてあげたチョコ」
「中也ぁ、お腹空いた~」
「何か食えよ、その辺に置いてあんだろ」
「今手が塞がってて取れないの、お願い」
ニコリと笑う彼女に逆らう術もなく。
「猪口で良いか」
「ええ、有難う」
口を開ける彼女に猪口を放り込み、自分の口で塞いだ。
「…吃驚するじゃない」
「良い顔だな、ご馳走さん」
*****
「今日は猫の日だとよ」
「あら、ネコになってみる?」
「朝っぱらから止めろ」
書類に齧り付く中也の横で何故か鈴が鳴り、頬がフワフワの感触に包まれる。
「何だ!」
「ほーら、猫じゃらしよ~」
「リンリンリンリン煩ぇな!」
「はっ、此れが噂の猫パンチね」
「…覚悟しろよ手前!!」
*****
急な大雨に降られ慌てて屋内に逃げ込んだものの、染み込んだ雨は冷たい。
「通り雨だと良いけど」
旦那には電話したが何時来るか判らない。
「寒くなってきたわね…」
「だからそんな薄着で出掛けんなっつったろ」
顔を上げれば水の滴る橙髪が見え、思わず抱き付いた。
「心配かけさせんな」
*****
「あら、カタツムリ」
「こんだけ雨降るとやっぱ出て来るか」
地面を這う蝸牛にしゃがみこんで観察。
「手前そう云うの気味悪がらねぇのか?」
「手に乗せなければ大丈夫よ」
「ふぅん」
「あっ、安心して。中也は手に乗せても嫌じゃないわ」
「青鯖みてえな事云いやがって喧嘩売ってんのか!」
*****
「けんか?」
「ママがパパを苛めんだ」
「まま、めっ」
「あらあら、でも貴女だってパパを触っても嫌じゃないでしょう?」
「?ぱぱだいすき」
「それと一緒よ」
「??」
「娘を混乱させるの止めろ」
「あっ、かたつむりさん!」
「ぱぱのしんせき?」
「手前も何か吹き込まれやがったな…」
*****
「ねえ、いいでしょ…?」
首に巻き付く腕を真似て腰に手を回す。
「煽るんなら朝までコースだぞ」
「ふふ、素敵だわ」
柔らかい唇に理性も溶けていく。
「聖誕祭って良い日ね」
「何でだよ」
「幾ら甘えても許してもらえるもの」
「許さねえ日があるとでも思ってる口振りだな」
何時でも甘やかしてやるぜ?
*****
中也の家に泊まった次の日、大雨のせいで家に帰れなくなった。
「此処に置いてる服全部洗濯中だわ」
「もう家のモン全部持って来て此処に住めよ」
隣に座る中也の云う事が理解出来ず首を傾げると
「もっと判りやすい方が佳いか」
と笑われた。
「結婚しようぜ」
*****
「悪い、明日から出張だ」
「幹部は大変ね」
荷物を詰める中也を手伝う。
「拠点の事は任せて」
「おう、頼む」
「でも早く帰って来てよ」
「餓鬼みてえな事云うんじゃねえよ」
「あら、恋人に寂しいって云って何が悪いの?」
「…俺まで寂しくなるから止めろっつってんだ」
*****
目の前が霞んで見える。
誰かが呼ぶ声がする。
いや、誰かなんて判り切っている。
「ちゅ、ぅや…」
「おいしっかりしろ」
「…今、何時」
「もう日が暮れたぞ。具合は如何だ」
「まだ一寸…お腹痛い…」
「毎月毎月大変なこった」
「スープなら出来てるぞ」
「食べる」
「其処で待ってろ」
*****
ふわりと良い匂いがして目を覚ます。
どうやら眠っていたらしい。
「起きたか」
「中也…あれ、ベッド…」
「ソファで爆睡してたから運んだ」
サイドテーブルにマグカップが置かれ中を覗く。
「寝る前だからホットミルクな。お疲れさん」
貴方の肩に凭れながら飲むホットミルクの美味しい事。
*****
「あけましておめでとーございます!」
「おう、今年も元気に過ごしてくれよな」
「ぱぱも!」
「パパも手前が居てくれたら何時でも元気だ」
「ほんとー!?」
「勿論だ。パパの傍に居てくれるよな?」
「うん!」
「今年も旦那と娘が可愛くて幸せだわ」
「男に可愛いって云うな」
*****
「雪が降って来たな」
そう云って番傘を差すと着物姿の嫁が寄って来た。
「お正月に着物で初詣して番傘で相合傘なんて情緒溢れるわね」
「嗚呼、綺麗な着物を着た自慢の嫁を見せびらかすのも悪くねえな」
「中也って偶にそう云う事云うんだから…」
何故か嫁が腕に絡み付いて俯いた。
*****
「ねぇ、如何かしら」
「あ?」
彼女が急に顔を近付けて来るものだから反射的に後退りする。
「何で逃げるのよ」
「手前…何企んでやがる」
「…そ、気付かないなら良いわ」
膨れっ面で其の場を去る彼女と入れ替わりに姐さんが呆れ顔でやって来た。
「めかし込んでおったのに、可哀想にのう」
*****
「今日は愛妻の日なんですって」
「何時も愛されてんだろ?」
「誰によ」
「…俺、手前の旦那だよな」
こう云う時にすっとぼけられると結構傷付くんだが。
「でも最近エリス嬢の手ばっかり取るんだもの」
寂しいわ、何て言われちゃ俺の敗けだ。
「判った。何がご所望なんだ、お姫様?」
*****
※ホワイトデーポストお題
「中也さんが八雲さんにあーんしてあげたチョコ」
「中也ぁ、お腹空いた~」
「何か食えよ、その辺に置いてあんだろ」
「今手が塞がってて取れないの、お願い」
ニコリと笑う彼女に逆らう術もなく。
「猪口で良いか」
「ええ、有難う」
口を開ける彼女に猪口を放り込み、自分の口で塞いだ。
「…吃驚するじゃない」
「良い顔だな、ご馳走さん」
*****
「今日は猫の日だとよ」
「あら、ネコになってみる?」
「朝っぱらから止めろ」
書類に齧り付く中也の横で何故か鈴が鳴り、頬がフワフワの感触に包まれる。
「何だ!」
「ほーら、猫じゃらしよ~」
「リンリンリンリン煩ぇな!」
「はっ、此れが噂の猫パンチね」
「…覚悟しろよ手前!!」
*****
急な大雨に降られ慌てて屋内に逃げ込んだものの、染み込んだ雨は冷たい。
「通り雨だと良いけど」
旦那には電話したが何時来るか判らない。
「寒くなってきたわね…」
「だからそんな薄着で出掛けんなっつったろ」
顔を上げれば水の滴る橙髪が見え、思わず抱き付いた。
「心配かけさせんな」
*****
「あら、カタツムリ」
「こんだけ雨降るとやっぱ出て来るか」
地面を這う蝸牛にしゃがみこんで観察。
「手前そう云うの気味悪がらねぇのか?」
「手に乗せなければ大丈夫よ」
「ふぅん」
「あっ、安心して。中也は手に乗せても嫌じゃないわ」
「青鯖みてえな事云いやがって喧嘩売ってんのか!」
*****
「けんか?」
「ママがパパを苛めんだ」
「まま、めっ」
「あらあら、でも貴女だってパパを触っても嫌じゃないでしょう?」
「?ぱぱだいすき」
「それと一緒よ」
「??」
「娘を混乱させるの止めろ」
「あっ、かたつむりさん!」
「ぱぱのしんせき?」
「手前も何か吹き込まれやがったな…」
*****
「ねえ、いいでしょ…?」
首に巻き付く腕を真似て腰に手を回す。
「煽るんなら朝までコースだぞ」
「ふふ、素敵だわ」
柔らかい唇に理性も溶けていく。
「聖誕祭って良い日ね」
「何でだよ」
「幾ら甘えても許してもらえるもの」
「許さねえ日があるとでも思ってる口振りだな」
何時でも甘やかしてやるぜ?
*****