壱頁完結物
「五月蝿いわねこのチビ!」
「あ゛ぁ!?手前も変わんねえだろうが!!」
「また始まった…」
ポートマフィアの世話係と幹部殿は仲が悪い。
顔を合わせば喧々囂々と言い合い始め、時には殴り合いへと発展していく。
だが、本人達だけが知らない真実がある。
二人は両片想いなのだ。
*****
「また喧嘩したのかいあの二人」
「其の様じゃの」
首領室で膝を付き合わせる森と尾崎。
「全く、二人とも大人なのに気持ちが伝えられないなんて変だわ」
「エリスちゃんもそう思うかい?」
「…あの二人は距離が近過ぎるのじゃ」
「少し手荒だけど佳い方法を思い付いたよ」
「乗った」
*****
「何で手前が付いて来るんだよ。戦闘員じゃねえだろ」
「首領の命令なんだから仕方無いでしょ」
俺達は今マンションの一室に居る。
此のマンションのオーナーが今回の目標らしいが、素性を探る為に暫く潜伏する必要があるらしい。
「首領、二人が部屋に到着しました」
「監視を続けてくれ」
*****
一先ず二人でオーナーの顔を見に行く事に。
堕落しきった体型の男だった。
「いやぁ美男美女夫婦とは羨ましいねえ」
「…は?」
「夫、婦…?」
「あれ、違う?可笑しいなぁ紹介文にはそう書いて…」
ヤバい、流石に怪しまれる訳にはいかねえ。
「いやその、婚姻届はまだ出してないんですよ!」
*****
「中也!?アンタ何を…」
「佳いから合わせろ、目ェ付けられたら素性を探る処じゃなくなるぞ」
続く言葉を飲み込ませて演技を強いる。
「そ、そうなんですよ!」
急に彼奴が腕に絡み付いて来た。
「考えてはいるんですけどね。もーあの人早とちりしちゃったのかなぁ!」
何とか事無きを得た。
*****
「最悪…」
「そりゃ此方の台詞だ…」
首領め帰ったら抗議だ。
誰が夫婦だ誰が。
「じゃあお仕事頑張って中也」
「手前は如何すんだよ」
「此の部屋の掃除でもしとくわ。中也綺麗好きでしょ」
「お、おう…じゃあ任せた…」
「あれ、何か二人共大人しくなった?」
「男を見せて下さい中原さん!」
*****
粗方目標の情報が手に入ったので部屋に戻ると、佳い匂いが漂って来た。
「お帰り中也」
「おう只今…」
台所で料理をする彼奴が目に入る。
エプロン姿なんて見飽きている筈なのに慣れない環境だからか新鮮味があって。
「何か本当に新婚みてえだな」
「ばっ、莫迦!只の世話係よ!!」
*****
食卓に並んだ料理の数々に目を丸くする。
「此れ全部作ったのか?」
「当たり前でしょ、何時も作ってるじゃない」
「まあそうだけどよ」
何時もは他の奴も食っている料理が、今は俺だけの為に用意されている。
「あ、ありがとな…」
すると珍しく素の笑顔を見せた。
「冷めない内に召し上がれ」
*****
「中也と一緒にご飯食べるなんて久し振りだよね」
「そういやそうだな」
世話係は基本全ての業務が終わってから飯にありつける。
本来なら俺の皿を片付けてからでないと飯を食ってはいけない。
「首領に怒られちゃうかな」
「俺も一緒に怒られてやるよ」
「だから今くらい一緒に飯食おうぜ」
*****
『明日には決行出来そうですが』
「んー、もう少し様子を見ようか」
モニターに映る中也と会話をする森。
二人に進展があるまで作戦は決行しない。
そもそも此の作戦はダミーなのだが、当然本人達には教えない。
『あれ、首領と電話?』
『おう…って手前なんて格好してんだ!』
何やら騒がしい。
*****
『お風呂上がりだから寝間着に決まってるでしょ莫迦なの?』
『そう云う問題じゃねえ!』
悪態を吐きながら彼女がモニターに入る。
如何やら短パンを履いている様だ。
『今晩は首領』
「やあ、元気そうだね」
『お陰様で』
中也が足に外套を掛けたのを見てクスリと笑った。
「意識してるねぇ」
*****
首領との電話が終わり俺も風呂に入る。
今日は色々ありすぎてドッと疲れた。
何時も喧嘩腰だったから普通に話をするのも久々、まして俺に向けた笑顔なんて何時振りだとか考えてんのに。
「…寝てやがる」
ソファで熟睡する彼奴を見て溜め息が漏れる。
「俺の事は男として見てねえってか…?」
*****
其の儘にしておく訳にもいかず、隣の部屋の寝台に寝かせる事にした。
「流石に同じ寝台じゃ寝れねえな…」
そうしたい処だが起きた時が怖いので大人しくソファで寝ようと踵を返そうとするが、服が引っ張られる感覚で足を止める。
「ちゅ、や…」
「…寝惚けてんのか?」
「おいて…な、で…」
*****
「置いて行かねえよ」
長年の付き合いだ。
途切れ途切れでも何云ってるか位解る。
「手前こそ、俺の事置いてくんじゃねえぞ」
服を摘まむ手に自分の手を重ねる。
細っこくて今にも折れそうな手の甲に、俺は無意識の内に唇を寄せていた。
気が付けば睡魔に負け、手を握った儘眠っていた。
*****
「……ゃ!中也!」
「…ぅ」
「起きなさいってば!」
「うおっ!?」
天地がひっくり返り背中に衝撃を受けて目が覚めた。
痛ぇ…何処だ此処。
「何で隣で寝てんのよ!」
「…あ」
顔以外を布団で隠す彼奴を見ながら昨夜の事を思い出す。
「手前が置いてくなっつったんだろうが」
*****
「…何の話?」
「やっぱ寝言だったか」
「私そんな事云ってない」
「云わなかったら俺はソファで寝てた」
「嘘」
「嘘じゃねえ」
云った云わないの押し問答が続く。
昨日は普通に話せたのに、何で何時もこうなっちまうんだ。
「なぁ手前、何時からそんなに俺の事嫌いになっちまったんだ?」
*****
彼奴は「昔からよ」と鼻で笑うと思っていたのに、何故か視線を彷徨わせる。
「お、おい…」
予想外の行動に言葉を詰まらせていると、彼奴の目から大粒の涙が零れ始めた。
「“嫌いになろうとはした”わよ…」
「…如何云う事だ」
寝台に上り隣に座っても、彼奴は騒がなかった。
*****
「中也が幹部になってから、女性を連れる事が多くなったでしょ」
「仕事相手か部下だぞ」
「判ってるわよ。だから最初は何時も通り接してた。でも…、誰だったかに云われたの。貴女の存在がハニートラップに響くから中也から離れろって…」
誰だそんな事云いやがった奴は…。
*****
「其の人、中也には伝えておくって云ってた。でも中也は変わらず接して来るし、離れなきゃいけないのに如何したら佳いか解らなくて…」
初めて聞いた話に頭が付いていかない。
彼奴は嵌められたのか?
「本当は喧嘩なんてしたくない。嫌いになりたくないし嫌われたくない…」
「だって私は」
*****
「もう佳い」
彼奴の言葉を遮って腕の中へと引っ張り込んだ。
「もう佳い、辛い事吐き出させて悪かった」
抱き締める腕に力を込めると堰を切った様に泣き始めた。
ずっとずっとこんな細っこい体に一人で溜め込んで、俺を置き去りにしたのは手前じゃねえか。
「莫迦は手前だろうが…」
*****
背中を擦ってやる事暫く、漸く嗚咽が止まった。
「落ち着いたか」
「ん…」
ゆっくり頷く彼奴の腕が俺の背中に伸び、手の温もりを背中に感じて心臓が跳ねる。
「あのね中也、私…」
「一寸待て、何で俺がさっき話遮ったか解ってねえだろ」
「…こう云うのは男から云うもんだろうが」
*****
「もう勝手に離れんじゃねえぞ」
「うん」
「何処逃げても引き摺り戻すからな」
「うん」
「チビなのは…目を瞑れ」
「実は然程気にしてない」
「其処は然程じゃなくて全然って云えよ」
そう云うと可笑しそうに笑う彼奴が無性に愛しくて
口角の上がった唇に出来るだけ優しく俺のを重ねた。
*****
「愛してる」
「中也…ふふ、嬉しい」
甘えた様に擦り寄って来る彼奴に俺の理性が限界を迎えた。
「なぁ…佳いか?」
「……うん」
再度接吻しながら寝台に倒れ込む。
「…っ、ぁ…」
彼奴の雲った声が脳内を刺激する。
服を脱がそうと手を伸ばすと
俺の電話が鳴った。
*****
無機質な音が俺を一気に現実へと引き戻す。
くそ、佳い処だったのに。
「…はい」
『中原君、今回の作戦だけど芥川君が処理してくれてね。悪いけど撤収してくれるかい?』
「は?」
何てタイミングだ、真逆何処かから見たりしねえだろうな。
扉付近の監視カメラと目が合った瞬間血の気が引いた。
*****
「最悪…」
「そりゃ此方の台詞だ…」
デジャヴを感じる会話をしながら首領の部屋へと進む。
扉を抜けるとやけに楽しそうな首領と姐さんの姿があった。
「おめでとう二人とも」
「漸くじゃの」
「「此の状況で祝われても嬉しくないです」」
「折角場を用意してあげたのに少しは喜んでよ」
*****
「式は神社か?チャペルか?」
「気が早いです姐さん」
「子供は何人作る予定だい?私で佳ければお世話手伝うよ」
「気が早いです首領」
「リンタロウには無理よ危険だもの」
「だぁー!勝手に話を進めないで下さい!」
「中也必死過ぎ」
今は隣で笑う彼女を愛でるのに忙しいんだ。
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「あ゛ぁ!?手前も変わんねえだろうが!!」
「また始まった…」
ポートマフィアの世話係と幹部殿は仲が悪い。
顔を合わせば喧々囂々と言い合い始め、時には殴り合いへと発展していく。
だが、本人達だけが知らない真実がある。
二人は両片想いなのだ。
*****
「また喧嘩したのかいあの二人」
「其の様じゃの」
首領室で膝を付き合わせる森と尾崎。
「全く、二人とも大人なのに気持ちが伝えられないなんて変だわ」
「エリスちゃんもそう思うかい?」
「…あの二人は距離が近過ぎるのじゃ」
「少し手荒だけど佳い方法を思い付いたよ」
「乗った」
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「何で手前が付いて来るんだよ。戦闘員じゃねえだろ」
「首領の命令なんだから仕方無いでしょ」
俺達は今マンションの一室に居る。
此のマンションのオーナーが今回の目標らしいが、素性を探る為に暫く潜伏する必要があるらしい。
「首領、二人が部屋に到着しました」
「監視を続けてくれ」
*****
一先ず二人でオーナーの顔を見に行く事に。
堕落しきった体型の男だった。
「いやぁ美男美女夫婦とは羨ましいねえ」
「…は?」
「夫、婦…?」
「あれ、違う?可笑しいなぁ紹介文にはそう書いて…」
ヤバい、流石に怪しまれる訳にはいかねえ。
「いやその、婚姻届はまだ出してないんですよ!」
*****
「中也!?アンタ何を…」
「佳いから合わせろ、目ェ付けられたら素性を探る処じゃなくなるぞ」
続く言葉を飲み込ませて演技を強いる。
「そ、そうなんですよ!」
急に彼奴が腕に絡み付いて来た。
「考えてはいるんですけどね。もーあの人早とちりしちゃったのかなぁ!」
何とか事無きを得た。
*****
「最悪…」
「そりゃ此方の台詞だ…」
首領め帰ったら抗議だ。
誰が夫婦だ誰が。
「じゃあお仕事頑張って中也」
「手前は如何すんだよ」
「此の部屋の掃除でもしとくわ。中也綺麗好きでしょ」
「お、おう…じゃあ任せた…」
「あれ、何か二人共大人しくなった?」
「男を見せて下さい中原さん!」
*****
粗方目標の情報が手に入ったので部屋に戻ると、佳い匂いが漂って来た。
「お帰り中也」
「おう只今…」
台所で料理をする彼奴が目に入る。
エプロン姿なんて見飽きている筈なのに慣れない環境だからか新鮮味があって。
「何か本当に新婚みてえだな」
「ばっ、莫迦!只の世話係よ!!」
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食卓に並んだ料理の数々に目を丸くする。
「此れ全部作ったのか?」
「当たり前でしょ、何時も作ってるじゃない」
「まあそうだけどよ」
何時もは他の奴も食っている料理が、今は俺だけの為に用意されている。
「あ、ありがとな…」
すると珍しく素の笑顔を見せた。
「冷めない内に召し上がれ」
*****
「中也と一緒にご飯食べるなんて久し振りだよね」
「そういやそうだな」
世話係は基本全ての業務が終わってから飯にありつける。
本来なら俺の皿を片付けてからでないと飯を食ってはいけない。
「首領に怒られちゃうかな」
「俺も一緒に怒られてやるよ」
「だから今くらい一緒に飯食おうぜ」
*****
『明日には決行出来そうですが』
「んー、もう少し様子を見ようか」
モニターに映る中也と会話をする森。
二人に進展があるまで作戦は決行しない。
そもそも此の作戦はダミーなのだが、当然本人達には教えない。
『あれ、首領と電話?』
『おう…って手前なんて格好してんだ!』
何やら騒がしい。
*****
『お風呂上がりだから寝間着に決まってるでしょ莫迦なの?』
『そう云う問題じゃねえ!』
悪態を吐きながら彼女がモニターに入る。
如何やら短パンを履いている様だ。
『今晩は首領』
「やあ、元気そうだね」
『お陰様で』
中也が足に外套を掛けたのを見てクスリと笑った。
「意識してるねぇ」
*****
首領との電話が終わり俺も風呂に入る。
今日は色々ありすぎてドッと疲れた。
何時も喧嘩腰だったから普通に話をするのも久々、まして俺に向けた笑顔なんて何時振りだとか考えてんのに。
「…寝てやがる」
ソファで熟睡する彼奴を見て溜め息が漏れる。
「俺の事は男として見てねえってか…?」
*****
其の儘にしておく訳にもいかず、隣の部屋の寝台に寝かせる事にした。
「流石に同じ寝台じゃ寝れねえな…」
そうしたい処だが起きた時が怖いので大人しくソファで寝ようと踵を返そうとするが、服が引っ張られる感覚で足を止める。
「ちゅ、や…」
「…寝惚けてんのか?」
「おいて…な、で…」
*****
「置いて行かねえよ」
長年の付き合いだ。
途切れ途切れでも何云ってるか位解る。
「手前こそ、俺の事置いてくんじゃねえぞ」
服を摘まむ手に自分の手を重ねる。
細っこくて今にも折れそうな手の甲に、俺は無意識の内に唇を寄せていた。
気が付けば睡魔に負け、手を握った儘眠っていた。
*****
「……ゃ!中也!」
「…ぅ」
「起きなさいってば!」
「うおっ!?」
天地がひっくり返り背中に衝撃を受けて目が覚めた。
痛ぇ…何処だ此処。
「何で隣で寝てんのよ!」
「…あ」
顔以外を布団で隠す彼奴を見ながら昨夜の事を思い出す。
「手前が置いてくなっつったんだろうが」
*****
「…何の話?」
「やっぱ寝言だったか」
「私そんな事云ってない」
「云わなかったら俺はソファで寝てた」
「嘘」
「嘘じゃねえ」
云った云わないの押し問答が続く。
昨日は普通に話せたのに、何で何時もこうなっちまうんだ。
「なぁ手前、何時からそんなに俺の事嫌いになっちまったんだ?」
*****
彼奴は「昔からよ」と鼻で笑うと思っていたのに、何故か視線を彷徨わせる。
「お、おい…」
予想外の行動に言葉を詰まらせていると、彼奴の目から大粒の涙が零れ始めた。
「“嫌いになろうとはした”わよ…」
「…如何云う事だ」
寝台に上り隣に座っても、彼奴は騒がなかった。
*****
「中也が幹部になってから、女性を連れる事が多くなったでしょ」
「仕事相手か部下だぞ」
「判ってるわよ。だから最初は何時も通り接してた。でも…、誰だったかに云われたの。貴女の存在がハニートラップに響くから中也から離れろって…」
誰だそんな事云いやがった奴は…。
*****
「其の人、中也には伝えておくって云ってた。でも中也は変わらず接して来るし、離れなきゃいけないのに如何したら佳いか解らなくて…」
初めて聞いた話に頭が付いていかない。
彼奴は嵌められたのか?
「本当は喧嘩なんてしたくない。嫌いになりたくないし嫌われたくない…」
「だって私は」
*****
「もう佳い」
彼奴の言葉を遮って腕の中へと引っ張り込んだ。
「もう佳い、辛い事吐き出させて悪かった」
抱き締める腕に力を込めると堰を切った様に泣き始めた。
ずっとずっとこんな細っこい体に一人で溜め込んで、俺を置き去りにしたのは手前じゃねえか。
「莫迦は手前だろうが…」
*****
背中を擦ってやる事暫く、漸く嗚咽が止まった。
「落ち着いたか」
「ん…」
ゆっくり頷く彼奴の腕が俺の背中に伸び、手の温もりを背中に感じて心臓が跳ねる。
「あのね中也、私…」
「一寸待て、何で俺がさっき話遮ったか解ってねえだろ」
「…こう云うのは男から云うもんだろうが」
*****
「もう勝手に離れんじゃねえぞ」
「うん」
「何処逃げても引き摺り戻すからな」
「うん」
「チビなのは…目を瞑れ」
「実は然程気にしてない」
「其処は然程じゃなくて全然って云えよ」
そう云うと可笑しそうに笑う彼奴が無性に愛しくて
口角の上がった唇に出来るだけ優しく俺のを重ねた。
*****
「愛してる」
「中也…ふふ、嬉しい」
甘えた様に擦り寄って来る彼奴に俺の理性が限界を迎えた。
「なぁ…佳いか?」
「……うん」
再度接吻しながら寝台に倒れ込む。
「…っ、ぁ…」
彼奴の雲った声が脳内を刺激する。
服を脱がそうと手を伸ばすと
俺の電話が鳴った。
*****
無機質な音が俺を一気に現実へと引き戻す。
くそ、佳い処だったのに。
「…はい」
『中原君、今回の作戦だけど芥川君が処理してくれてね。悪いけど撤収してくれるかい?』
「は?」
何てタイミングだ、真逆何処かから見たりしねえだろうな。
扉付近の監視カメラと目が合った瞬間血の気が引いた。
*****
「最悪…」
「そりゃ此方の台詞だ…」
デジャヴを感じる会話をしながら首領の部屋へと進む。
扉を抜けるとやけに楽しそうな首領と姐さんの姿があった。
「おめでとう二人とも」
「漸くじゃの」
「「此の状況で祝われても嬉しくないです」」
「折角場を用意してあげたのに少しは喜んでよ」
*****
「式は神社か?チャペルか?」
「気が早いです姐さん」
「子供は何人作る予定だい?私で佳ければお世話手伝うよ」
「気が早いです首領」
「リンタロウには無理よ危険だもの」
「だぁー!勝手に話を進めないで下さい!」
「中也必死過ぎ」
今は隣で笑う彼女を愛でるのに忙しいんだ。
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