新たな一面
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「手前、普段運転しねえクセに何でそんな上手ぇんだよ…」
「此れを機に運転してみようかしら」
「止めろ、俺の車を潰す気か」
結局数回程やり、勝負は五分五分で終わった。
惨敗しなかっただけまだマシだが、隣で得意顔をする八雲が無性に腹立たしい。
「でも中也のドリフト凄かったわよ。制限が無いとあんなギリギリの運転するのね」
「手前を乗せてる時に危ない運転なんてするかよ」
「あら優しい」
何故だか嬉しそうに笑う八雲に首を捻っていると、興味が変わったのかまた急に歩き出した。
人が多くなって来たのに気付き、逸れないように手を掴むと一瞬驚いた後にまた嬉しそうに笑い始めた。
「見て中也、銃が置いてあるわ」
「モデルガンか?コードが付いてるみてえだが…」
「隣でやってるわね…画面に向かって銃を向けてるわ」
「画面内の敵を撃つゲヱムって訳か」
他人のプレイを見ながら感心していると、手を引かれ空いている筐体の前に連れて来られた。
八雲は既に銃を手にやり方を覚えている様子。
…やる気満々かよ。
「手前、射撃の経験は?」
「この前暇だったから立原に教えて貰ったわ。あの子二丁拳銃でしょう?」
「………」
彼奴、最近何か挙動不審だと思ったらそう云う事かよ。
八雲が立原に銃を教わっている様子を想像すると段々腹が立って来て、俺も銃と小銭を手にする。
「一匹残らず狩れ」
「本職の目してるわよ」
若干呆れ顔の八雲に軽く舌打ちし、ゲヱムを起動させる。
簡単な操作説明の後直ぐに始まったステージを黙々とクリアしていく。
「…手前も本職の目してんじゃねえか」
「え?何か云った?」
「否、何も」
相手を殺す事しか考えていない無機質な目に一瞬ゾッとする。
武器を持たせるとあんな顔をするんだな…。
一生持たせねえし戦場にも連れて行かねえと此の時俺は再度決心した。
然し、此奴にはゲヱムの才能があるのか?
弾はほぼ外さねえし点数も俺とほぼ互角、寧ろ俺が少し追いかける位だ。
「ふふ、私が勝ったらあの自販機のアイス購ってね」
「は?あんなもんで良いのか?好きなだけ食えよ」
「随分甘やかしてくれるじゃない」
「其の代わり後で行こうと思ってた喫茶店は無しで良いな」
「あ!其れは駄目、あのお店は前から行きたかったんだから絶対に行くの!」
人間味のある目をして膨れ乍ら銃を持つ八雲に少しだけ安心する。
手前はそうやって人間で居てくれ。
ステージ移動でロードしている最中にふと後ろを振り返ると、何故か人だかりが出来ていた。
俺達はそんな華のあるプレイをしている訳じゃねえのに。
不思議に思って隣を見ると、控え目に揺れる八雲の膝上丈のスカートが目に入った。
…奴等、此れが狙いか。
「八雲、一寸此方向け」
「何?ゲヱム始まっちゃうわよ」
「良いから」
俺は着ていた上着を脱いで八雲の腰に巻いた。
此れで後ろだけでも膝下まで隠れた筈だ。
そして直ぐに始まったゲヱムに集中し、またロード待ちに後ろを振り返ると人だかりは一気に減っていた。
「心臓に悪い」
「何時も人を圧し潰しといてゲヱムで音を上げるなんて可笑しな人ね」
「ゲヱムの話じゃねえよ」
「?」
結局全ステージをクリアし、俺らはランキングに載る事になった。
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