新たな一面
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デヱトっつうのは、少し特別なモンだと思っている。
そりゃ特別な想いを抱いた相手との貴重な時間だから、特別なのは当たり前な訳で。
出来るだけ二人だけになれるとか、邪魔が入らねえ静かな場所でゆったり過ごす方が俺は好ましいと思っている。
俺はな。
「中也見て!彼処何だか凄い音がするわ!!」
「手前…先刻からはしゃいでんな」
「だって街歩きなんて仕事以外でしないんだもの。ほら早く!」
「はぁ…」
今日も少しドレスアップをして食事でも行こうかと思っていたのに、俺の恋人は急に「ヨコハマ観光がしたい!」とか云い出し
二人ともラフな格好をして街中を歩いている。
「何だか元気無いわね。如何かしたの?」
「手前が元気過ぎるんだよ」
「そんな事無いわよ」
そう云い乍らその場で一回転する元気な恋人に見えないよう、俺はソッと軽い溜め息を吐いた。
ったく人の気も知らねえで…。
そんな俺の心情を知ってか知らずか、八雲は先刻から気にしている「凄い音がする」店に向かって一目散に歩いて行く。
危なっかしいんだから手を繋がせろ。
「ゲヱム、センター?」
「嗚呼、色んなジャンルのゲヱム機が置いてある店だな」
「中也知ってるの?」
「一部のゲーセンはポートマフィアのフロント企業だ。知らなかったのか?」
「そんな資料見た事無いわ」
俺だけが知っているのが不満なのか八雲は頬を膨らませ、自動扉を潜り抜け始めた。
慌てて止めようとするがこうなった八雲は俺の云う事など聞く筈も無く、其の儘手を掴まれて引きずり込まれる始末。
そんなにゲーセンに興味があるのか?
「どの機械からも音がするからかしら、凄い騒音ね」
「そうだな。手前の声も辛うじて聞こえる位だしな」
「どのゲヱムから試そうかしら」
「は!?ゲヱムやる心算なのかよ」
「折角入ったんだもの。冷やかしは良くないわよ」
「そりゃそうだが…」
止める理由の無くなった俺の手を引き、八雲は出来そうなゲヱムを探して店内を歩き始めた。
順番待ちをしている奴等が一斉に顔を上げて八雲をガン見している。
美人なのは認めるが此奴は俺のだ、あんまり見てると圧し潰すぞ。
「あら、レーシングゲヱムだわ」
「知ってんのか」
「以前広津さんと携帯ゲヱムで対戦したのよ。なかなか面白くて」
此奴、何時の間に広津さんとゲヱムなんてやってたんだ…?
つか広津さん、ゲヱムすんのかよ。
俺の心の声は騒音の中では八雲に届く筈も無く、当の本人は楽しそうに座席に腰掛け始めた。
アクセルであろう物を踏み、子供みてぇにハンドルをグルグルと動かしている。
…クソ、可愛いじゃねえか。
「中也もやりましょうよ、運転出来るでしょ」
「…一回だけだぞ」
はしゃぎ倒す八雲のテンションに負け、隣の席に腰掛けた俺は二人分の百円玉を取り出した。
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