深刻ナ君不足
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「澄ちゃんが来なくなって三ヶ月…」
「流石に長いですね」
頭からキノコでも生えそうな程じめじめとした雰囲気を纏った太宰が今日も今日とて机に突っ伏している。
敦ももう励ましの言葉を使い果たし、隣の上司に立ち直って貰う方法を彼是考えるが全く思いつかず、口から出た言葉は単なる同意に過ぎなかった。
「真逆出張の後書類係の任を解かれて…中也の奴隷に…」
「そんな事は」
流石に考え過ぎだと落ち着かせようとするが、太宰の頭の中には中也と澄の艶めかしい映像がチラつき、もはや発狂寸前だった。
「太宰さん、其の様に頭を抱えて如何されたのです」
「煩いよ芥川君!……芥川君?」
ハタ、と隣を見ると何時の間にか自分を見上げる芥川が居た。
手にはA4サイズの茶封筒と幾つかの紙袋を抱えている。
「君、若しかして澄ちゃんの代行…?」
「いえ、只の荷物持ちです」
「荷物持ち?」
芥川の視線が自分から逸れたので追い掛けると、扉の前に見覚えのある姿が立っていた。
「たっだいまー!!」
「澄ちゃん…?」
何時も通り元気一杯に挨拶する澄が其処に居た。
太宰は一瞬目を疑い、一度芥川に視線を戻す。
「昨日帰宅しまして」
「え、じゃあ本当に…澄ちゃん…?」
「そうだよ。如何したの太宰さん」
怪訝そうに首を傾げる澄は次の瞬間目の前が真っ暗になった。
「びゃぉあ!暗い!!痛い!!」
「澄ちゃん!心配したのだからね!!」
何事かと暴れる澄を太宰がギュウギュウと抱き締めた。
しかし状況が理解出来ない澄はあまりの暗さに泣き出しそうな声を上げたので、慌てて腕を離す。
「何するの太宰さん…」
「御免御免、久し振りに会ったからつい」
目に溜まった雫を腕の包帯で拭うと澄の頭をポンポンと叩く。
次第に落ち着いて来たのかまた笑顔に戻った澄に太宰も笑い掛ける。
「長い間出張お疲れ様」
「有難う!とっても楽しかった!」
「……其れは、中也と一緒で?」
先日の写真と同じ様に笑う其の顔に心臓が疼く。
しかし澄は予想外の質問をされたからかキョトンとした顔で太宰を見つめた。
「え?うーん、確かに中也さん色んな事教えてくれて楽しかったけど」
「けど?」
「新しい事が沢山だったから、皆にどんなお土産話しようかなって!」
マフィアの出張は機密事項が多い。
そんな中で、彼女は自分たちの為に一生懸命土産話を見つけようとしていたのだ。
出張先でも自分の事を気に掛けてくれていた事に太宰の不安が吐息に混じって外へと吐き出された。
其れから普段通り書類係の仕事をこなし、鏡花と喋りながら探偵社への土産を一緒に頬張る。
兄は敦と火花を散らしているが全く視界に入っていない様子。
普段通りの生活に満足し一段落した処で、澄は再度太宰に近付いた。
「ねえねえ、ケヱキ屋さんは探してくれた?」
「!」
「私、出張頑張ったらケヱキが食べられると思って楽しみにしてたんだよ」
其の表情は画像で見たどんな表情よりも楽しそうで、思わず自惚れそうになる。
超えてはいけないラインを超えそうな気持ちを地中深くに押し込め、太宰は出来る限り余裕のある風を装って口を開いた。
「あまりにも遅いから候補が両手じゃ足りなくなっちゃったよ」
「すごい!じゃあ全部行こ!」
「ふふ、何回デヱトしても足りないね」
期待していた返答に頬の緩みが止まらない。
きっと候補を上げれば上げる程食い付いてくれるだろうと云う事は薄々感付いていたようだ。
「君が出張に行っていた分、堪能させて貰うよ」
本当に、深刻に、君が不足していたんだからね。
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