深刻ナ君不足
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「流石に二ヶ月って長くない?」
「私もそう思う」
「珍しく意見が合うじゃないか鏡花ちゃん」
澄が出張に出て二ヶ月が経過したが、彼女はまだ探偵社にやって来ない。
今日は来るのではと云う淡い期待を胸に太宰と鏡花は真剣に窓の外を眺めているが、来る気配は一向に感じられず二人は肩を落とす。
「若しかしたら帰って来ては居るけど他の仕事が立て込んでいるんじゃないですか?」
「懸命に励ましている処悪いが、まだ二人は帰って来ておらんぞ」
「…うわあ!」
「姐さん…」
全員が振り返った先には探偵社の扉を開けしゃなりと立つ紅葉が居た。
口元を袖で隠し、何が可笑しいのかクスクスと笑っている。
「太宰は昔から澄の事になると顔色が変わるのお」
「あんな可愛い子の心配をしないなんて如何かしてますよ」
「ふふ、兄に対しては厳しいのにのお」
「其れ以上云わないでください姐さん…」
紅葉に揶揄われ気まずそうな表情の太宰。
すると鏡花が小走りで紅葉に近付いた。
「貴方は澄の写真、持ってるの?」
「嗚呼、先日中也から送られて来てな。何だかんだ云いつつ奴も愛でているようじゃ」
楽し気に彼女も最新式のスマートフォンを取り出し操作する。
首に掛けた携帯電話が揺れる位落ち着きのない鏡花の隣に同じような心境の太宰が並ぶ。
「ほれ」
「…着物」
「澄ちゃんは洋装も和装も何方も似合うねえ」
又も食い入る様に画像を見る二人に、紅葉は画面をスライドさせた。
其処には男性用の着物を纏い澄に寄り添う中也の姿。
「…げ」
「二人とも楽しそうじゃぞ」
「姐さん…何て事するんです」
「広津は気を利かせて見せなかったようじゃが、お主の顔を見ているとつい意地が悪くなってしもうたわ」
来た時と同じように袖で口元を隠す紅葉と口を尖らせる太宰を交互に見ていた鏡花が紅葉の袖をちょいちょいと引っ張る。
「ねえ、その写真欲しい」
「良いぞ。何方の写真が良いかの」
「両方」
早く早くと目を輝かせる鏡花が可愛らしく、一寸待てと声を掛け乍ら画像を送る。
時にして数十秒、画像を受け取った鏡花は嬉しそうに自分の席へと戻って行った。
「太宰、お主は如何する?」
「澄ちゃんだけが写っている方を…」
「おや、中也と一緒に写っているのも表情が変わっていて可愛いぞ?」
「ぐ…」
「でもまあ要らぬと云うなら仕方あるまい」
「両方ください!」
「良いのか、中也が写っておるぞ?」
「後で切ります」
食い気味にそう云い放った太宰は揶揄われ過ぎて大分余裕がない。
少し大人げなかったかと反省しつつ紅葉は太宰にも画像を送り、広津と同様に書類係の代行をして帰路に着いた。
来客が終わり静かになった探偵社で太宰は画像を見つめる。
「澄ちゃん、楽しそうだなあ…」
———何時もそんな顔で笑っているのかい?
———中也の前で?
———そもそも何故中也の部下になったんだい?
———若しや、中也の事が…
「はあ…気が狂いそう」
「………」
あまりの気の沈み様に、国木田も仕事を急かすのを止めた。
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