壱頁完結物
「お兄ちゃん、カジノ怖い…」
「しゃんとしてれば大丈夫だから。折角可愛いドレス着てるのに縮こまってちゃ台無しだよ」
煌びやかな空間で腕を組んで歩く江戸川兄妹。
「折角なら一寸遊ぼうよ」
「でも失敗したら…」
「もう、お前は怖がりだなぁ。ちゃんと遊べるやつ見つけてあげるから」
「うん…」
*****
そうしてやって来たのはカードゲームの台。
ディーラーがカードを配る音とチップを積む音が軽快に鳴り響いている。
「此処では何をするの?」
「カードの目を21にすると勝ちってやつ」
すると丁度目の前の台でゲームが終わった。
喜びガッツポーズを見せる勝者と頭を抱える敗者を妹は凝視する。
*****
「遊ばれますか、お嬢さん」
不意にディーラーに声を掛けられ、妹は吃驚して兄の腕に強く巻き付いた。
「最初は少額にすれば大丈夫だよ」
「…うん」
再度勧められおずおずと台に着席すると、兄はスッと妹から離れた。
「じゃあ僕は隣の台にいるから終わったらおいでね!」
「えっ!?お兄ちゃん!!」
*****
兄はサッサと隣の台に着席し、他のプレイヤーと雑談を始めている。
「…もう」
面白くなさそうに口を尖らせる妹の手にはチップが数枚。
「すぐ終わらせてバーカウンター行っちゃお」
兄を困らせる作戦に出た妹は台にチップを一枚置き、配られるカードと他の参加者の顔を見ながらゲームを進めていった。
*****
「あの…お、下ります」
気付けば妹の前にはチップが山積みされ、周囲には人だかりが出来ていた。
慌ててチップを回収し台を離れた妹は早足で兄を探す。
ふとバーカウンターに辿り着くと、兄が与謝野と笑い乍ら酒を口にしているのが見えた。
「ただいま」
「あ、お帰り。凄い数のチップだね!」
*****
「本当に凄い数だねぇ。妾も其れなりに稼いだけど此れには負けるよ」
褒めてくれる与謝野に妹は嬉しくなって寄り添い、其れを兄は不服そうに見つめる。
「僕の処に来てくれないの?」
手を広げてみるが妹はプイとそっぽを向いてしまった。
「怖いって云ってたのに、迎えに来てくれなかったもん」
*****
「だって楽しそうに遊戯してたんだもん」
「勝ったらサッサと次が始まっちゃって下りれなかっただけだもん!」
お互いに膨れる兄妹に与謝野が吹き出した。
「全く、アンタ達は本当佳く似てるねぇ」
「似てないよ!」
「似てないもん!」
全く同時に言葉が飛び出し、与謝野は更に笑いを深めた。
*****
「お兄ちゃん、エスコートしてくれるって云ったもん…」
再度与謝野に寄り添い口を尖らせると、乱歩は眉を下げて困ったように笑う。
「今日のお前は一段と可愛いから一寸意地悪しちゃった」
「むぅ…」
「おや、随分な口説き文句だね」
また笑い出す与謝野は妹の背を押し乱歩へと近付けた。
*****
「妾はもう少し勝負して来るよ。後でね、お二人さん」
片手を上げて去って行く与謝野を見送った兄妹は、お互い無意識に距離を詰める。
「もう意地悪しないで」
「判ったよ。今度はちゃんとエスコートする」
顔を見合わせニコリと笑い、二人はまた腕を組み煌びやかな空間に足を踏み入れた。
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「しゃんとしてれば大丈夫だから。折角可愛いドレス着てるのに縮こまってちゃ台無しだよ」
煌びやかな空間で腕を組んで歩く江戸川兄妹。
「折角なら一寸遊ぼうよ」
「でも失敗したら…」
「もう、お前は怖がりだなぁ。ちゃんと遊べるやつ見つけてあげるから」
「うん…」
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そうしてやって来たのはカードゲームの台。
ディーラーがカードを配る音とチップを積む音が軽快に鳴り響いている。
「此処では何をするの?」
「カードの目を21にすると勝ちってやつ」
すると丁度目の前の台でゲームが終わった。
喜びガッツポーズを見せる勝者と頭を抱える敗者を妹は凝視する。
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「遊ばれますか、お嬢さん」
不意にディーラーに声を掛けられ、妹は吃驚して兄の腕に強く巻き付いた。
「最初は少額にすれば大丈夫だよ」
「…うん」
再度勧められおずおずと台に着席すると、兄はスッと妹から離れた。
「じゃあ僕は隣の台にいるから終わったらおいでね!」
「えっ!?お兄ちゃん!!」
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兄はサッサと隣の台に着席し、他のプレイヤーと雑談を始めている。
「…もう」
面白くなさそうに口を尖らせる妹の手にはチップが数枚。
「すぐ終わらせてバーカウンター行っちゃお」
兄を困らせる作戦に出た妹は台にチップを一枚置き、配られるカードと他の参加者の顔を見ながらゲームを進めていった。
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「あの…お、下ります」
気付けば妹の前にはチップが山積みされ、周囲には人だかりが出来ていた。
慌ててチップを回収し台を離れた妹は早足で兄を探す。
ふとバーカウンターに辿り着くと、兄が与謝野と笑い乍ら酒を口にしているのが見えた。
「ただいま」
「あ、お帰り。凄い数のチップだね!」
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「本当に凄い数だねぇ。妾も其れなりに稼いだけど此れには負けるよ」
褒めてくれる与謝野に妹は嬉しくなって寄り添い、其れを兄は不服そうに見つめる。
「僕の処に来てくれないの?」
手を広げてみるが妹はプイとそっぽを向いてしまった。
「怖いって云ってたのに、迎えに来てくれなかったもん」
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「だって楽しそうに遊戯してたんだもん」
「勝ったらサッサと次が始まっちゃって下りれなかっただけだもん!」
お互いに膨れる兄妹に与謝野が吹き出した。
「全く、アンタ達は本当佳く似てるねぇ」
「似てないよ!」
「似てないもん!」
全く同時に言葉が飛び出し、与謝野は更に笑いを深めた。
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「お兄ちゃん、エスコートしてくれるって云ったもん…」
再度与謝野に寄り添い口を尖らせると、乱歩は眉を下げて困ったように笑う。
「今日のお前は一段と可愛いから一寸意地悪しちゃった」
「むぅ…」
「おや、随分な口説き文句だね」
また笑い出す与謝野は妹の背を押し乱歩へと近付けた。
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「妾はもう少し勝負して来るよ。後でね、お二人さん」
片手を上げて去って行く与謝野を見送った兄妹は、お互い無意識に距離を詰める。
「もう意地悪しないで」
「判ったよ。今度はちゃんとエスコートする」
顔を見合わせニコリと笑い、二人はまた腕を組み煌びやかな空間に足を踏み入れた。
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