壱頁完結物


「にぃに、くろいおよーふく」
「そうだよ、げきをするんだ!」
お遊戯会の衣装に身を包み得意気な乱歩。
「あたしもきたい」
「おまえはまだきれないよ。ようちえんいってないから」
「えーなんで?きたい!」
「まだだめだってば」

駄目だと云われ妹ははち切れんばかりに頬を膨らませた。


*****


「如何したんだ」
「ふくざわさん、いもうとがげきのふくきたいっていうんだ!」
「なんでだめなのー!?」
ギャイギャイ騒ぐ幼子達に、福沢は白い浴衣を取り出して妹に掛けてやった。
「これなぁに?」
「お姫様だ」
其の言葉で妹の目がキラキラと輝く。

「にぃにみて!おひめさま!!」


*****


「ふっふっふ、おひめさまはぼくがさらっちゃうぞ!」
突然乱歩が妹に飛び付き、ギューっと抱き締める。
「かわいいおひめさま、もうにげられないぞ!」
「きゃー!」
キャイキャイはしゃぐ二人に満足し、福沢は台所へと姿を消した。

「にぃに、おーじさまじゃないの?」
「ちがうよ」



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