「ねぇ、此れ着て」
「厭」
「じゃあ此方でも良いよ」
「いーや！」
昼下がりの探偵社。
江戸川兄妹が何やら云い争いをしている。
「もう！何なら着てくれるのさ！」
「厭だよ、其れは鏡花ちゃんが着るから可愛いの！」
「お前も絶対似合うから！」

「コスプレなんて絶対に厭！！」


*****


「昔はよく僕の服着て『ちょーすいり！』ってやってたのに…」
「小さい頃の話でしょ。今はやらないの」
「如何しても？」
「如何しても！」
プイ、とそっぽを向かれてしまい、乱歩は渋々諦める事にした。
「仕方無い、寝てる時に着せるか」

「お兄ちゃん、今日から別々に寝ようね」


*****


家に帰ると乱歩は外套と帽子を脱ぎ捨て、そそくさと寝室に籠ってしまった。
如何やら拗ねているようだ。
「もう、また散らかして…」
妹が外套を拾い上げる。
ふと昼間の会話を思い出し肩に掛けてみた。
次いでに帽子も被ってみる。

「我ながらなかなか似合ってる気がする」


*****


妹は調子に乗って眼鏡を掛ける振りをした。
「異能力、超推理！…なーん、て」
妹の顔から血の気が引いていく。
「見ーちゃった」
「お、お兄ちゃん！あの…」
「そっか、家でならやってくれるんだ」
「違…」
「今度衣装をお家に持って来ようね！」
「やだ！」

後日、 衣装は家に持ち込まれた。



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