壱頁完結物

朝起きたら枕元に贈答品。
私は昔からお兄ちゃんの行動履歴が視えてしまうのでサンタさんを信じた事は無いけれど、毎年楽しそうに私への贈答品を選ぶお兄ちゃんが大好きだった。
「お兄ちゃん、今年はサンタさん何を届けてくれるかな?」

「まだサンタさん信じてるの?お前は子供だなあ!」


*****


「今年は何が欲しいとかあるの?」
「うーん…必要な物も欲しい物も無いなあ」
「ふぅん」
乱歩が寝台に寝転がる。
「欲しい物無いって云ったらサンタさんは如何するんだろう」
「如何するのかな、適当に買って来るとか」

「そうだ、今年はサンタさんに贈答品を渡すってのは如何かな」


*****


「サンタさんに如何やって贈答品渡すのさ」
「寝る前にツリーの下に置いとくの。お手紙付けたら自分のだって判るでしょ?」
「成る程、考えたね」
起き上がって妹に近付いた乱歩は後ろから抱き締める。
「贈答品は何にするの?」
「内緒」

「サンタさんも何時も内緒だったもの」


*****


其れから街へ出て贈答品探しを始めた。
街中は賑わい、幸せそうな人達で溢れている。
「何買うか決めた?」
「うん、決めたよ。でもお兄ちゃんにも内緒」
「何でさ」
「こっそりサンタさんに云っちゃうかもしれないでしょ?」
妹の笑顔に乱歩が肩を竦めた。

「僕そんな事しないよ!!」


*****


結局何を買ったか判らないまま夜になった。
「手紙書いた?」
「うん。読んでくれるかな」
「読んでなかったら僕から云っといてあげる」
「お兄ちゃんは頼もしいなあ」
そんな穏やかな談笑をしながら寝台に入った妹は程無くして寝息を立て始めた。

「さて、今年も任務開始だ」


*****


「サンタに贈答品なんて、妹も変な事を考えるなあ」
そう良い乍らツリーの下の袋を開けると
「…服?」
中から厚手のセーターが出て来た。
「…僕の寸法だ」
乱歩はセーターに腕を通し、鏡の前に立ってみる。
「僕の似合う色、良く判ってる」

そして一緒に置かれていた手紙を読む事にした。


*****


毎年楽しい思い出を有難う。
相手を想い乍らの贈答品選びってこんなに楽しかったんだね。
今年はサンタさんにとっても楽しい降誕祭になりますように。
「…本当に良い子だなあ」
乱歩は手紙を胸に抱き、暫くジッとして動かなかった。

「素敵な降誕祭を有難う。サンタさんからも贈答品だよ」


*****


「今年の贈答品はセーターでした!」
「良かったねえ」
翌日、妹はツリーの下でサンタさんからの贈答品を開けた。
「でも此れ、私がサンタさんに贈ったセーターと色違いだ」
「そうなの?」
「うん、今お兄ちゃんが着てる奴」
「嗚呼此れ?」

「凄く暖かいよ!」
「良かったね」


*****


「何でお兄ちゃんが其のセーター着てるの?」
「僕がサンタさんだからさ」
「白い髭生えてないよ?」
「一日だけ生えるの」
「本当!?」
「嘘だよ」
穏やかな笑い声が部屋を包む。
「毎年有難う。お兄ちゃん」

「正体がバレちゃったから、来年から如何しようかなあ」


*****


「面と向かって贈答品を渡せば良いんじゃない?」
「そうだね、来年からそうしよう」
色違いのセーターがフワリと重なる。
「そして一寸大人な降誕祭の祝い方をしても良いんじゃないかなあ」
「其れも楽しいかもね」
そう云い乍ら、二人の影がゆっくりと重なった。

「来年が待ち遠しいよ」



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