壱頁完結物
「ねぇ、まだ終わらないの?」
「御免ね乱歩さん…」
事の発端は週末の終業5分前。
事務所の電話が鳴った事から始まる。
「はい武装探偵社」
「異能特務課の坂口です」
「はい、失礼します」
「まだ何も言ってません!」
「どうせ仕事持って来たんでしょう!」
「明日から休みなんですよ!」
*****
「其れは存じてますが、緊急なんです」
「…用件だけ聞きましょう」
「某密輸組織の画像データが手に入りまして、名前と年齢だけで結構です。情報を可視化して欲しいのですが」
「ちなみに聞きますが…数はどの位なんですか」
嫌な予感がして一応聞いてみる。
「ざっと見積もって300人です」
*****
「データは今メイルにてお送りしましたので、週明けに頂ければ」
「週明けにって…休みの日に仕事しろって云うんですか」
「先刻も云いましたが緊急なんです。追加料金はお支払いしますから」
「いや、そう云う問題じゃないんです…」
週末は乱歩さんとデェトの約束してるのに!!
*****
「そんな話断れば佳かったのに」
「先生に受けろって云われたの…」
我等が育ての親にして武装探偵社社長である福沢さんの命には従うしかない。
「今日が雨で助かったね。明日は晴れるから其れまでに終わらせてよ?」
「うん…善処する…」
家のちゃぶ台にパソコンを置く日が来るなんて…。
*****
「で、まだ?」
「…お兄ちゃんみたいに一瞬で解決出来る能力じゃないからね」
「むぅ」
現在約40人。先は長い。
「僕暇なんだけど」
「終わったら遊ぼ」
「今が良い」
「今は無理だよ」「じゃあ何時終わるのさ」
「今頑張ってる」
「むぅ」
後ろから抱き締める腕がどんどん強くなる。
*****
85人を過ぎた頃、兄は私の膝に頭を乗せお腹に抱き付いていた。
「休憩位しなよ」
「休憩したら最後此処に戻って来れないのは私でも推理出来るよ」
もうすぐお昼。昼食前に休憩する訳にはいかない。
「僕よりも仕事の方が佳いんだ…」
「そんな事云ってなーい」
「ふんっ」
嗚呼、拗ねちゃった…。
*****
昼食を食べ終え、漸く半分弱まで進んだ頃、兄は満腹なのかふて寝なのか隣でぐっすりと眠っている。
「今の内に片付けよう…」
情報を入力する事に集中していると
「ひゃっ!?」
腰に何かが巻き付いた。
「ん…」
如何やら寝惚けているようだけど、腕の力は相当強い。
「ねぇ、終わった…?」
*****
「まだ掛かるから寝てて良いよ」
「ん…ヤだ。お前と寝たい」
「お願い、夜は一緒に寝るから」
「やだやだ」
腰に頭を擦り付け駄々を捏ねる二十六歳児に頭を抱える。
「明日のデェトと今日のお昼寝、どっちが良い?」
「…どっちも」
「それが出来ないから云ってるのに…」
*****
三分の二が終わる頃には日が傾いていた。
何とか今日中には終わりそうだが、夜まで掛かるだろう。
「あーん」
「ん」
兄は相当暇なのだろう。
駄菓子を私に餌付けして遊び始めたが、袋の底を見て呟く。
「あ、無くなっちゃった」
「明日購いに行こうね」
「今行こうよ」
「今は無理です!」
*****
「後…五人」
遂に終わりが見えた。
其の間に晩ご飯を作って食べて洗濯を取り込んでと家の事も何とか終わらせた。
五人が終われば漸く解放される。
月曜日は坂口さんに何て云って突き出してやろうかと考えていると、首筋を生暖かい感触が滑って来た。
「ちょ、お兄ちゃん…!」
*****
後ろから抱き竦められ、首筋に舌や唇が這う。
「ンっ…ゃめ、」
「もう夜だよ」
「後一寸で終わるか…あァ!」
「一寸ってどの位?」
「五人ン…」
「じゃあ週明け会社でやれば良いじゃん」
「ホント、すぐおわ…はァン!」
耳を舐められ力が抜ける。
「僕今日は随分我慢したんだよ」
*****
「解ってるよ…有難う」
「ん、だから今から僕に構って」
振り向かされ接吻されると直ぐに口を割り開かれ、舌が口内を犯す。
「んッ…おに、ちゃ…」
「違うでしょ」
「はァ、…らんぽ、さん…」
「判ってればよろしい」
ニヤリと笑う彼は背中をスルリと撫でる。
私の一番弱い場所。
*****
其の儘床に押し倒され、ひたすら口内を貪られる。
「も…っ、らめ…」
「ん?何か云った?」
胸を叩いても離してくれる様子も無く、其れ処か手が服の中に滑り込んで来る。
「やっ、ま…らんぽさっ…!」
「一日待たせた罪は重いよ、覚悟してよね」
気付けば朝を迎えていた。
*****
「本当に助かりました」
週明け、坂口さんは腹が立つ程爽やかな笑顔で書類を受け取った。
「貴女に頼んで良かったです」
「次から週末に仕事を頼む時は先に兄に連絡して下さい…」
「何故です?」
「私の身が持たないからです」
首を傾げる坂口さんの後ろで兄は楽しそうに鼻唄を歌っていた。
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「御免ね乱歩さん…」
事の発端は週末の終業5分前。
事務所の電話が鳴った事から始まる。
「はい武装探偵社」
「異能特務課の坂口です」
「はい、失礼します」
「まだ何も言ってません!」
「どうせ仕事持って来たんでしょう!」
「明日から休みなんですよ!」
*****
「其れは存じてますが、緊急なんです」
「…用件だけ聞きましょう」
「某密輸組織の画像データが手に入りまして、名前と年齢だけで結構です。情報を可視化して欲しいのですが」
「ちなみに聞きますが…数はどの位なんですか」
嫌な予感がして一応聞いてみる。
「ざっと見積もって300人です」
*****
「データは今メイルにてお送りしましたので、週明けに頂ければ」
「週明けにって…休みの日に仕事しろって云うんですか」
「先刻も云いましたが緊急なんです。追加料金はお支払いしますから」
「いや、そう云う問題じゃないんです…」
週末は乱歩さんとデェトの約束してるのに!!
*****
「そんな話断れば佳かったのに」
「先生に受けろって云われたの…」
我等が育ての親にして武装探偵社社長である福沢さんの命には従うしかない。
「今日が雨で助かったね。明日は晴れるから其れまでに終わらせてよ?」
「うん…善処する…」
家のちゃぶ台にパソコンを置く日が来るなんて…。
*****
「で、まだ?」
「…お兄ちゃんみたいに一瞬で解決出来る能力じゃないからね」
「むぅ」
現在約40人。先は長い。
「僕暇なんだけど」
「終わったら遊ぼ」
「今が良い」
「今は無理だよ」「じゃあ何時終わるのさ」
「今頑張ってる」
「むぅ」
後ろから抱き締める腕がどんどん強くなる。
*****
85人を過ぎた頃、兄は私の膝に頭を乗せお腹に抱き付いていた。
「休憩位しなよ」
「休憩したら最後此処に戻って来れないのは私でも推理出来るよ」
もうすぐお昼。昼食前に休憩する訳にはいかない。
「僕よりも仕事の方が佳いんだ…」
「そんな事云ってなーい」
「ふんっ」
嗚呼、拗ねちゃった…。
*****
昼食を食べ終え、漸く半分弱まで進んだ頃、兄は満腹なのかふて寝なのか隣でぐっすりと眠っている。
「今の内に片付けよう…」
情報を入力する事に集中していると
「ひゃっ!?」
腰に何かが巻き付いた。
「ん…」
如何やら寝惚けているようだけど、腕の力は相当強い。
「ねぇ、終わった…?」
*****
「まだ掛かるから寝てて良いよ」
「ん…ヤだ。お前と寝たい」
「お願い、夜は一緒に寝るから」
「やだやだ」
腰に頭を擦り付け駄々を捏ねる二十六歳児に頭を抱える。
「明日のデェトと今日のお昼寝、どっちが良い?」
「…どっちも」
「それが出来ないから云ってるのに…」
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三分の二が終わる頃には日が傾いていた。
何とか今日中には終わりそうだが、夜まで掛かるだろう。
「あーん」
「ん」
兄は相当暇なのだろう。
駄菓子を私に餌付けして遊び始めたが、袋の底を見て呟く。
「あ、無くなっちゃった」
「明日購いに行こうね」
「今行こうよ」
「今は無理です!」
*****
「後…五人」
遂に終わりが見えた。
其の間に晩ご飯を作って食べて洗濯を取り込んでと家の事も何とか終わらせた。
五人が終われば漸く解放される。
月曜日は坂口さんに何て云って突き出してやろうかと考えていると、首筋を生暖かい感触が滑って来た。
「ちょ、お兄ちゃん…!」
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後ろから抱き竦められ、首筋に舌や唇が這う。
「ンっ…ゃめ、」
「もう夜だよ」
「後一寸で終わるか…あァ!」
「一寸ってどの位?」
「五人ン…」
「じゃあ週明け会社でやれば良いじゃん」
「ホント、すぐおわ…はァン!」
耳を舐められ力が抜ける。
「僕今日は随分我慢したんだよ」
*****
「解ってるよ…有難う」
「ん、だから今から僕に構って」
振り向かされ接吻されると直ぐに口を割り開かれ、舌が口内を犯す。
「んッ…おに、ちゃ…」
「違うでしょ」
「はァ、…らんぽ、さん…」
「判ってればよろしい」
ニヤリと笑う彼は背中をスルリと撫でる。
私の一番弱い場所。
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其の儘床に押し倒され、ひたすら口内を貪られる。
「も…っ、らめ…」
「ん?何か云った?」
胸を叩いても離してくれる様子も無く、其れ処か手が服の中に滑り込んで来る。
「やっ、ま…らんぽさっ…!」
「一日待たせた罪は重いよ、覚悟してよね」
気付けば朝を迎えていた。
*****
「本当に助かりました」
週明け、坂口さんは腹が立つ程爽やかな笑顔で書類を受け取った。
「貴女に頼んで良かったです」
「次から週末に仕事を頼む時は先に兄に連絡して下さい…」
「何故です?」
「私の身が持たないからです」
首を傾げる坂口さんの後ろで兄は楽しそうに鼻唄を歌っていた。
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