狂った女の丸出し日記
期間限定いちご陽太郎バナナチョコスペシャルトッピングアーモンドと陽太郎
2023/10/15 22:51えんだん絶叫系
【同盟に捧げるクレープSS】
甘い香りに誘われて、陽太郎とクレープの列に並んだ。クレープのいい香りに胸を弾ませながら顔を寄せ合って、どれにしようかとメニューに目を走らせていく。
ある程度絞られてきたけど、期間限定の栗が入ったやつもさつまいもが入ったやつも捨て難く、でもいつものいちごバナナチョコスペシャルトッピングアーモンドも食べたい。こうしている間にも順番が近づいていて、焦ってさらに決められない。陽太郎に、決まった?と聞くと
「うーん…たくさんあって、どれも美味しそうで迷いますね。基本を押さえたい気持ちもありますが、この期間限定という言葉にも惹かれてしまって…あなたは?もう決まりましたか?」
全くの同意見で、同じ様に期間限定といちごバナナチョコスペシャルトッピングアーモンドで迷っていると答えると
「じゃあ、期間限定といちごバナナチョコスペシャルトッピングアーモンドにして、両方二人で食べませんか?」
なるほど、それなら二つとも食べられていいねと、陽太郎の天才的な提案に乗った。
「さつまいもと栗、どっちの気分ですか?」
いつもはわりとすぐに選べる二択でも、今回ばかりは決められない。陽太郎に決めてほしいと言うと
「う〜ん……じゃあ、栗にしようかなぁ。棒状のクッキー、一本ずつ食べましょうね!」
虎がいれば期間限定二つともいけたのにね。帰りに買って帰りましょう。アイス抜きにできるかな?と話していると、ちょうど私たちの順番が来た。期間限定の栗と、いちごバナナチョコスペシャルトッピングアーモンドを注文して、アイスが抜けることを確認してから受取り口に移動し、わくわくしながらひたすら楽しみだねと言い合って、ようやく出来上がったクレープを受け取った。
スプーンを取って、少し離れたところにあるベンチに腰掛け、いただきますの声を重ねてひとくち頬張ると、クリームの程よい甘さに頬が溶け落ちて、喜びが鼻からふぅーっと抜けていった。おいしいね、おいしいですねと何度か言い合った後、陽太郎の好きないちごをスプーンに乗せ、クリームとアイスもすくって陽太郎の口に運んだ。
「やっぱりいちごがあるとサッパリしますね。はい、こっちもどうぞ。」
陽太郎もスプーンに栗を乗せ、アイスとクリームを取って私の口に運んだ。栗の食感と渋皮栗の大人の味のアイスクリーム、そこに栗の風味の濃厚でまろやかなクリームが、口の中においしい秋を運んできた。やはり期間限定は伊達ではない。
私たちはまた、おいしいね、おいしいですねを繰り返しながら、頭の部分をスプーンである程度減らしいって、もちもちのクレープ生地と一緒に頬張ると、そこはもう天国だった。
「あっ、中にスポンジが入ってます。ほら、ここから食べてみて?」
陽太郎がクレープの向きを変えて私の口元に持ってきたので、クレープ生地ごとぱくっとひとくち頂くと、まさにモンブランを食べてるみたいで、うんモンブランだね!と、何の捻りもない感想しか出てこなかった。
陽太郎にも、クレープ生地といちごとバナナとチョコと生クリームとアイスとアーモンドのハーモニーを味わってもらいたくて、食べやすいように包紙からクレープを引き出していると、陽太郎が自分でもするように、口の横を指で拭われた。それをぺろりとなめた陽太郎の口元はきれいで、クリームも何も付いていない。
にこにこしている陽太郎に、こっちもとうぞとクレープを差し出し、陽太郎がぱくっと口に入れた瞬間に、クレープをずらして押しつけて、無理矢理口の横にクリームを付けると、陽太郎は少し顔を引いた。
何か言いたげにもぐもぐしているうちに、人差し指でチョコの混ざったクリームを取ってなめると、それを見ながらさらに何か言いたげに口をもぐもぐ動かし、ゆっくりクレープを飲みこんだ。
「……わざと付けたでしょう?」
手が滑ったと見え透いた嘘をついてふいっと前を向き、クレープを大きくひとくち頬張ると、膝の上に置いていた手が、あたたかくて大きな手に包まれた。
「また滑ったら困るので、食べ終わるまで押さえておきますね?」
陽太郎の顔を見るのがなんとなく恥ずかしくて、前を向いて黙々とクレープを食べながら、手の向きを変えて手のひらを合わせて指を絡めると、陽太郎は
「クレープ…甘くておいしいですね。」
と言いながら、より深く指を絡めて優しく手を握った。重なった手のひらがくすぐったくて、そうだね、と返すと
「あなたとこうして食べているからかな?おいしすぎて、ほっぺたが落ちそうです。」
なんて言うもんだから、自分でわざと口の横にクリームを付けて見せると、陽太郎は大きめの最後のひとくちを口に入れた後、もぐもぐしながら付けたクリームを親指で拭って私になめさせた。
「そんな子供みたいなかわいいことをする人は、家に着くまで手は繋いだままでいてもらいますよ?」
そう言った陽太郎の口の横に付いてるクリームを見ながら幸せな笑いが止まらず、どうして笑うんですか?という問いにしばらく答えられなかった。
ー完ー
【あとがき兼悲報】
一番近くのマリオンクレープが閉店していた。東京ドーム及び東京ドームシティには三店舗もあるというのに、一番近くのマリオンクレープが閉店していた。向こうも商売なので責めることなどできないが、こうなってしまってはもうマリオンクレープに行く機会が本当に限られてくる。あまりの悲しみにまるごとバナナ、通称まるバナでお茶を濁そうとしたら、まるバナの素晴らしさを再確認し、大変満足して発作が治まった。いちごは無くてもバナナと生乳と小麦と砂糖と卵ならなんでもよかったのか私は。
池袋や水道橋に行った暁には、例えどんな時間帯であろうともなっちゃんと共に、必ずマリオンクレープに寄ってみせる!ジッチャンの名にかけて!