行きつけの飲み屋、行きつけのレストラン、行きつけの雑居ビル。“行きつけ”というオトナな響きに憧れていた時期が私にもあった。実際そういった行きつけを作れるほどの行動力もなければ飽きっぽいので、一つの店に延々と通うのに向かず、そもそも外を出歩くのが好きではないので、行きつけといえば自宅のお手洗いと散歩で利用する近所の公園くらいしかない。金があって酒が飲めたらホストクラブで搾り取られるのも一興ではあるが、おそらく心は満たされず乾いていく一方だろう。ホス狂は身を滅ぼし、気付いたら地獄にいた、という事態を招くのでお勧めしない。

現在私は自宅から出ずして縁がわから潤沢な幸福を接種している。こうして自分で夢を生成するまでに至った。それだけで大変満足な生活を送ってきたわけだが、愛情込めて書き上げた自分のあたおか夢小説が果たして人様の目にはどう映っているのかがふと気になり出して、どこまでも欲深い私にうってつけの、大変魅力的なサービスを見つけてしまった。

『あなたのお話に感想書きます』1,500円～

お金を払えば罪悪感なく読んでもらえて罪悪感なく感想をもらえる。まさに二次創作者にとってのホストないしホステスさんだ。チェンジもマクラも一切ないが、募集をかけている方の実績や口コミを読んで指名する方式で、世のオジサンたちが無料案内所に入る時のあの期待と不安をお手軽に味わえる。この世で最も大切なのは時間と金と健康だと思っているので、これを利用すれば健全かつ安全に時間を金で買って健康を得られるという理想形を手にできる。

早速利用しようと依頼先を決めたが、肝心の、どれを読んでもらいたいのかが分からない。ほとんどが金を払ってまで真剣に読んでもらう話ではない。それならばと、アップしたら何故か日記を荒らされたあのR18を是非にと思ったが、3万文字以上は追加料金が発生する。初回はなるべく安く済ませたいのが本音だ。なにしろこれに味をしめて依頼をお頼み申しまくる自分が容易に想像できる。魔が差して自ら生み出した虚しさを埋める為に何度も利用してどんどん深みにはまっていき、そして突然嘘のように吹っ切れる、というところまでが依存系行きつけ店のおおまかな流れなので、まずは基本に則って行きつけてみることにする。

こうして感想も金で買える現代を目の当たりにし、金で買えないものなんて若さ以外存在しないのではないかと思える。それが良いとも悪いとも言えないが、金のあるところには必ず闇があるので、何事もほどほどにを肝に銘じておきたい。