何を隠そう私は加藤ミリヤが好きだ。歌詞に共感するというよりは、向けられたら引いてしまうであろう重苦しい女の情念を、あたかも清廉に表現されているところが実に見事であり、ミリヤの限界的に真っ直ぐな気持ちは私の乏しい感性にすら訴えてくる。有名どころでは『SAYONARAベイベー』と『Aitai』がまさにそれであり、ミリヤの心の叫びが私の汚れた魂を震わす。

あくまで噂の域を出ないが、加藤ミリヤ本人が男のろくでもない部分に惹かれる性質であり、そのみっともなさや辛さ、自分の弱さを美しく嘆き、お相手に対するクソデカ感情を楽曲という形で昇華している。少なからずそういった経験のある多くの女性にぶっ刺さるのも納得だ。そんな加藤ミリヤにも、『Love is…』というハッピーウエディングソングがあるのだが、それすらじっとりと重く恐ろしく感じる。同じ女としては応援したくなるし愛したくなるのだが、もし自分が男だったら加藤ミリヤはやはり重すぎる。加藤ミリヤを受け止められる、もしくはうまく付き合える男がいたとしたら、それは森林もしくは海のような男だろう。若旦那よりも若大将が適任だ。しかしながら現在はどうか知らないが、女盛りのミリヤが求めていたのはろくでなしであり、自ら泥船に乗って大漁旗を振る傾向にあるので、恋愛とは本当に難しい限りだ。
HYの仲宗根泉然り、ベクトルは違うが浜崎あゆみ然り。古くは平安時代から、行き場のないどろどろした恋愛感情を唄った歌は人の心を掴んで離さない。渦中にいるときはもちろん、外から見ても恋に身を焦がす愚かで美しい女性たちの支えとなっている。その執拗さからくる芸術は情念ソング以外でも発揮されており、私のイチオシは『LALALA』と『この夢が覚めるまで』。『LALALA』は一見男女のことを歌っているように見えるが、実は加藤ミリヤの愛犬ララのことを歌っている。一部を抜粋すると

ずっと愛しているからつか別れる日が来ても　LALALA
泣かないって約束しよう　Baby
大好きだよ　LALALALALALA
何も言わなくていいよ
もっと甘えてもいいよ　LALALALA
ずっと一緒にいられないけど
私は君を想い続けるでしょう

君がいなくなったらって
考えたら涙が止まらないよ
首をかしげて不思議そうに見て
黙って私の涙拭いている
すやすや眠る君が可愛くて
ちょっかいかけて邪魔してごめんね
君のわがままも潤んだ瞳に見つめられると許せちゃうよ


愛犬家としては号泣必死であり、歌おうとするとまともに歌いきることが難しい。若旦那が愛犬LALAの気持ちパートを担っており、編曲がMINMIという後の修羅場地獄絵図という点もまた趣深い。
『この夢が覚めるまで』は、アニメ『ましろのおと』の主題歌。吉田兄弟の三味線の音が胸を震わす一曲となっている。こちらの楽曲は三味線への想いを歌っているのだが、恋心を歌っているようにも取れる。魂込めて打ち込んでいる対象が、三味線なのか恋なのか、または他の何かなのか、なにであれそういったものがあれば共感を持てるのではないだろうか。なにより語り口は女性的なのに、『ましろのおと』にとてもマッチしているところに私はとても惹かれている。
歌詞を一部抜粋すると


凍える夜あなただけがそばにいた
無口な朝も乾いた夜更けも
もしあの日あなたに出会っていなければ
私には何もなかったから


このような盲目的な感情が大好物なので、ずっとプレイリストに入っている。ましろが三味線に対してそう思っているのか、あるいはましろに対する三味線の気持ちなのか、どちらにせよ胸アツだ。ミリヤにもきっと思い当たる節があることだろう。決して交わることのなさそうな三者の想いが、例え違う形であったとしても見事に重なっている感動的な楽曲だ。加藤ミリヤに楽曲提供を依頼した人のセンスは並みではないと思う。

寝取った寝取られたが当たり前のパリピの恋愛模様。パリピはパリピの苦しさがあり、パーティーでウェイウェイ騒いでいる裏では悲しみが渦巻いているのだと思うと、やはり深く関わらず遠巻きに見ているのが無難だなと思う次第である。