親方が度重なる出張により肥えた。出張先は主に北海道。美味しいものしかない上に食べる時間も遅い。出張先で食べた美味しいものをご丁寧に撮って送ってくれるのだが、朝食ビュッフェ、ラーメン、ジンギスカン、ジンギスカン、朝食ビュッフェ、ラーメン、ラーメン、居酒屋の海鮮、寿司、朝食ビュッフェ、ラーメンと、毎度食べ稽古に精を出している。どれもこれも美味しそうだ。毎日忙しく働いているのだから、美味しいものでも食べないとやっていられない。そうでなくても北海道は三日で4㎏太れる。私自身も実証済みだ。

自分でもさすがにやばいと思っているらしく、しばらく食事を魚中心にして欲しいと要望を受けた。魚料理は苦手だし、食べている時に骨があるとイライラするので断ったが、仕事帰りにタラちゃんの切り身、一緒に出掛けた休日に上手く丸め込まれ、魚屋でカレイと鮭の切り身と子持ちししゃもとごまさばを目の前で買われた。

魚をメインにするということは、それすなわち和食。味噌汁の他に和の副菜がいくつか必要になってくる。一歩間違えたら朝定になるので注意が必要だ。たしかに魚は身体に良く、陽太郎も主に魚を食べて生きている。しかし陽太郎は自分でおかずを用意しているし、私だって陽太郎となら快く魚を食べる。副菜だって喜んでいくらでも張り切って作る。そう、ここがあの魔法の言葉の使い所だ。

普段であれば副菜など削ったキャベツか買ってきた袋入りサラダ、豆腐に鰹節やらキムチやら何かしら乗せたもの、パックのめかぶもしくはもずく酢くらいしか用意しないが、今回のお魚週間では春菊とツナのサラダや海藻サラダ、きんぴらごぼうにだし巻き卵、厚揚げの煮物に納豆入り油揚げ焼きと、だいぶ頑張れた。味噌汁もきのこや野菜をふんだんに使い、色気を出してカブまで買った。
カブなんてまさに料理上手がお選びになる野菜だ。使い道が味噌汁しか思いつかなかったので油揚げと共に葉っぱごと味噌汁にぶち込んだが、とてつもなく美味しかった。切り方すら分からず、ポスト大根としていちょう切りもどきの謎の形に切って入れたけど、もっと大きい方が美味しい気がしたので翌日はくし切りにしてお吸い物？にした。やはり煮るなら大きい方が美味しいと判明。それにしてもカブ、なんて甘くて美味しいんだ。

こうしてサカモトへの嫁入りを夢見て、遅すぎる花嫁修業に勤しんだ(ほぼ白だし頼り)一週間が明けようとしている今、肉が食べたくて爆発しそうだ。カレイの煮付け、さば味噌、焼き鮭焼きししゃもを添えて、鱈のホイル焼き。もう魚は十分だ。顔も見たくない。しかしこんなことでは陽太郎に嫁げない。でも肉が食べたい。

今夜残されているのはむき出しの鱈の塊。バターソテーにどうぞという形状だ。昨夜冷凍庫を開け、やるか？どうするか？としばし悩んだ結果、辛抱たまらず横にあった鶏ももを解凍してしまった。

一応罪の意識はあるので、カブときのこと共に焼いてヘルシーを装い、食卓に出そうと思う。これならサイドメニューは味噌汁だけでいいし、米は進まない方がいいはず。念の為脳内の陽太郎に相談すると「栄養満点でおいしそうですね！夕飯が楽しみだな。」と言っていた。腕によりをかけて作ろうではないか。味付けはかき醤油のみ。シンプルイズベスト。

本当は唐揚げが食べたい私は、残念ながらサカモトへも嫁げないし肥えた男一人痩せさせることもできない。薄々は気付いていた。よって妻ではなく乳牛になり、陽太郎に絞られる日々を送るのがベストだと言える。