書き終わったので読み直してみると、修正箇所が次から次へと出てくる。自分で書いて自分で読み返しているので客観的な判断ができず、これでいいのか、本当にこれは大丈夫なのかという不安に駆られ、余計な肉付けをし出す。そして読み直して振り出しに戻る、というスパイラルに陥る。

丁寧に描きたくても所詮自分。語彙力もキリもないのである程度の引き際を見極めなければならないと感じているが、それがなかなか難しい。いざアップして読み直した時の方が修正箇所が目に付くので、スマホでプレビューを見ながらPCで打ち直すという方法に落ち着いたが、それでも寝ながら書いたような文章が後を絶たない。夢を見ているので実際寝ててもおかしくはない。

個人サイト全盛期、テニスとコルダの夢小説に手を出していたあの時は、頭の中の夢物語を一言一句漏らさずスラスラ書けていたはずだし、読み直さずに自信満々にターン！とアップしていた。恐らく私のありとあらゆる勢いもそこが全盛期で、今は衰退しきってしまったのだろう。企画も色々やりたいのに、夢小説を書くので手一杯で追いつかない。縁がわとは全盛期に会いたかった。もっと早くあなたと出会えていたら、出会う順番が違っていたらと不倫を盛り上げる常套句が頭に浮かび、人妻に恋をしてしまう陽太郎を想像して萌えた。

師走に入り、日々やらなければならないことが増えている為、腰を据えて書くこともままならず大変もどかしい。出来ればクリスマスを迎える前に三本は上げたいところだが、引き際を見極めるどころか追及しまくっている為、目標の達成は無理かもしれない。出そうで出ないこの辛さ。まさに便秘。出してないのに書きたい話は次から次へと増えていくのでパンパンだ。無理矢理力むと血を見ることになるので余裕を持ちたいところだが、明日こそお題だけでもアップしたい。もう読み返さない方がいいのかもしれない。
そう思っていたところで、親方から体調を崩したので明日代休を取ると連絡があった。本当に間が悪い。きっと激務の疲れが出たのだろう。優しく労って看病したいところだが、COVID-19の悪夢が蘇る。

連絡を受けドラッグストアに行き、症状(聞けば聞くほど疑惑は深まる)に合った薬と頼まれたリッツを買いに行ったところ、お菓子のコーナーに『セブーレ』という名のお菓子のパッケージが目に入った。パッケージの写真からしてサブレであり、どこをどう見てもサブレだ。製法が若干違うサブレの兄弟みたいなものか、もしくはバッタモンかとも思ったが、サブレをネイティブに言うと「セブーレ」になるのではと閃き、脳内で再生してみたところ大変それっぽく、マスクの下でほくそ笑んだ。

あと私ができることといえば、COVID-19ではないことを神に祈ることと、陽太郎と夜更かしをすることだけ。今日は人妻に恋をしてしまった陽太郎と、そんな陽太郎に想いを寄せる“私”という設定で楽しんでみようと思う。苦手な人はお戻り下さい。




夜、決して口には出せない叶わぬ恋の苦しみが限界に達しようとしていた陽太郎の布団に“私”が侵入し

「あの人にできないこと、私にしていいよ？」

向けられた背中にぴたりと寄り添った。

「そんな…あなたの気持ちを知ってて利用するなんて、おれにはできません。」

「でも、辛そうで見てられないよ…あの人だと思って、めちゃくちゃにしていいから。」

あまりにも切なく辛ぎる日々を過ごしていた為、申し訳ないとは思いつつ糸が切れたように激しく“私”を抱いた。抑えていた気持ちが堰を切って止められず、すべてをぶつける陽太郎。そんな陽太郎を“私”は優しく受け止めて、役に立ててよかったという純粋な気持ちと、このまま“私”無しではいられなくなり、いつか振り向いてくれればいいという下心で陽太郎に尽くした。
陽太郎は欲望を吐き出した後強い自己嫌悪に陥るも、その日を堺に“私”の好意に甘えるようになった。そうしている間は辛いことを忘れられたし、弱っているときに献身的に支えてくれている“私”にだんだん情が移り始め、行為中にあの人が重なることもなくなってきた。このまま本当に忘れられるかもしれないし、このままでいてはいけないと思っていたある日のこと。突然あの人から呼び出され、夫と離縁を考えていると言われた。
その時陽太郎が思ったこととは――？


泥沼。