狂った女の丸出し日記
ミリしらチアキSSその②
2023/12/27 18:15支給された枕もどうしても合わず、焦りと睡眠不足からくるストレスを抱える日々を過ごしていた。
かといってチアキ・カシマの記憶に関しては焦っても仕方がないので、地道に情報収集しつつも、とりあえずチアキ・カシマのパシリに専念しようと、今日もあの怪しい雑貨屋に足を運んだ。
チアキ・カシマが快適な寝具を所望しているようだったので、店主に何かあるかと尋ねると、ちょうど枕と毛布が入荷されたと言って私に見せてきた。いつもタイミングが良すぎて怪しすぎるけど、法外な値段でもないし、経費で落ちるから多少高くても問題ない。
それにしてもこの枕、私が愛用していたものとよく似ている。珍しく二つ在庫があり、これは運命だと思った。孤島なのでこの機を逃したら取り寄せになり、希望してから入荷までにだいぶ時間がかかる。これは買うしかない。もし合わなくて首をやったら、須田看守のデスクにモスキート音の音源を仕込んで鬱憤を晴らせばいい。
枕を二つと毛布を言い値で買って、ご機嫌の店主から領収書を貰い、店から出てチアキ・カシマにメッセージを送った。
『ご所望の寝具を買いました。私も同じ枕を買ったので、これでお互いよく眠れるといいね。雑貨屋のオジサン今日は鼻毛出てなかったよ。あからさまに見過ぎたかな。』
『身だしなみに気をつけるようになったのなら、良かったんじゃないか?』
それはそうだけど、ここでの数少ない娯楽を一つ失ったことを残念に思いながら、端末を鞄にしまってさっそく寝具を差し入れに行った。大荷物を運んで結構疲れたので、その足で自室に戻ってひと息つきついて、新しい枕にカバーを掛け変えた。
さっそくちょっと寝てみようかというところで、端末から通知音が鳴った。チアキ・カシマからのメッセージに違いない。
『枕と毛布ありがとう。今日の夜から早速使わせてもらう。』
いやいや、これだから男子は。
『毛布は一回洗った方がいいんじゃない?』
送信してすぐに既読が付き、すぐに返信が書き込まれた。
『もう洗濯に出した。乾燥機にかけてくれるよう頼んだから、夜には使えると思う。』
チアキ・カシマは抜かりなかった。記憶は喪失していても、本人が持つ判断力や瞬発力といったものは身に染みているのかもしれない。
『寝るのが楽しみだね。明日乾燥聞かせてね。』
誤字ったまま送信してしまい、そのことについて触れられることなく既読無視という形でメッセージのやり取りが終わった。
何をしてるのかと監視カメラでチアキ・カシマの部屋を覗くと、ベッドに腰掛けたまま何か考え事をしているようだった。おそらくだけど、頭の中の欲しい物リストを更新しているに違いない。追加されるものがマットレスではないことを願うばかりだ。
その日の夜。新しい枕に頭を沈めると、やはり以前愛用していた物と同じ使い心地だった。これでようやく睡眠不足から解放されると安心し、久し振りにすーっと眠り落ちた。はずだった。
目の前にはプレッツェルを持ったチアキ・カシマ。なんとそのプレッツェルを、私に食べさせようとしている。私も私で不思議と違和感なくそれを咥えて、チアキ・カシマの指に向かって食べていき、最終的に両端から食べ始める、いわゆるポッキーゲームが始まった。
カシマ・チアキの漆黒の瞳が近付いてきて、目が伏せられて長いまつ毛が揺れ、厚めの唇があと少しで触れてしまう―!
というところで目を覚ました。
なんて夢だ。男日照りが続き、ここに来たことによってさらに婚期を逃しつつある焦りから、こんな欲夢を見てしまったのだろうか。しかも相手はあのチアキ・カシマ。いくら容疑者とはいえ、記憶喪失で苦しんでいる男をつかまえて、バブル期の合コンの二次会のような真似事をさせてしまうとは。同じく私も容疑者という気を抜けない立場でありながら、夢の中で合コンを楽しむなんて、本当に、どうかしているとしか思えない。
気まずい気持ちを引きずって面会に行くと、今日はチアキ・カシマが眠そうにしていた。あの枕が合わなかったのだろうか。
「おはよう。枕と毛布どうだった?」
「あぁ、おはよう。使い心地は良かった。でも、妙な夢を見た。」
「え?私もなんだけど…」
あの枕は呪われているのかもしれない。やはりあの雑貨屋は真っ黒で、目的はまだ分からないが、表に出せない特級呪物を取り扱っていて、それを意図的に私に買わせ、私を介してチアキ・カシマの手に渡るようにしているのかもしれないと、そんな考えが頭をよぎる。
「君も?どんな夢?」
「合コンしてた。」
「は…?」
「合コンで、チアキさんとポッキーゲームしてた。」
それを聞いたチアキ・カシマはしばらく無表情で私の顔を見つめた後、両肘をつき、拳に額を乗せてうなだれた。
「他には誰がいたんだ?」
「チアキさんだけだった。」
「それは、合コンと呼べるのか?」
「確かに…やってることが合コンだったから、合コンだと思い込んでたけど、お見合いだったのかな。」
「お見合いの場で、そんなゲームをするとは考えられない。」
「お見合いじゃなかったらするの?」
「しないと思うけど、どうだろうな…思い出せないな。」
ただでさえ記憶喪失で苦しんでいる人間に対し、よけいな混乱を与えてしまったようで申し訳なく思った。もう私の見た夢の話はこの辺で終わりにした方がよさそうだ。
「ところで、チアキさんはどんな夢を?」
終始神妙な面持ちでいるチアキ・カシマは、少し言いづらそうに長く息を吐いた後、すっと顔を上げた。
「君にお菓子を食べさせていた。」
「え?」
「合コンという印象は受けなかったけど、君が見た夢と似てないか?」
ドクンと心臓が鳴った。
「もしかして、何か記憶に関係してるってこと?」
「あぁ、その可能性は否定できない。」
まさかこんなアホみたいな夢が記憶に関係しているかもしれないだなんて、それこそ夢にも思わなかった。
「私達、どこかで会ったことがあるのかな…合コンに来てたとか?」
「君はそんなに合コンに参加してたのか?」
「まぁ、そこそこ。」
「俺も、参加してたのか…?」
「女に困ってそうにないのにね。」
「そうか?君こそ男に困らなそうに見えるけど。」
実際困ってるから行っているというのに、この男は何を言っているんだろうか。あぁそうか、ここらで気分を良くしておいて、また何かを所望するつもりだろう。マットレスだけは勘弁してくれと思っていると
「でも、変な男に引っ掛かりそうで心配だな。合コンに参加するにしても、事前に相手の素性を確認しておいた方がいい。」
私の身を案じてくれて、重ね重ね申し訳ない気持ちになった。
「じゃあ、ここから無事出られたらチアキさんセッティングしてよ。」
「俺の素性が合コンに行けるような身分だったらいいけど。」
「高そうなスーツ着てた気がするから、期待してる!」
「そういうところはしっかり見てるんだな。」
話が盛り上がってきたところで、面会終了の時間が来てしまった。延長したかったけど、チアキ・カシマがとても眠そうなので、今日はこの辺で勘弁しておいた。
今回私たちが見た夢が、本当に記憶に関する何かのヒントである可能性は捨てきれない。チアキ・カシマも欲求不満であったとしても、同じ日に同じ様な内容の夢を見るなんて、偶然にしてはできすぎている。
こうして思いもよらない些細なきっかけから、少しずつだけど取り戻していくしかないのだろう。
少し希望が見えてきたような気がして、ここへ来て初めて前向きな気持ちで外へ出ると、端末が鳴った。
『ここから出られた後の合コン相手の候補に、看守は入っていないのか?』
『はい?私に何のメリットが?』
今までで一番早く、勢いよく返信すると
『少なくとも、素性ははっきりしてる。』
やれやれ、これだからチアキ・カシマは。
『素性がはっきりしてればいいってわけでもないのよ。看守と合コン?文字にするとなんかエロくていいけどキツくない?心から遠慮します。』
一度ここで送信し、続きを打った。
『それに』
『あのメンツとポッキーゲームなんてしたら笑っちゃうよ。』
そう送ると、すぐに全てに既読が付いた。
『夢では笑わなかったのか?』
この返信を見て、確かに、夢の中の私は笑っていなかったことに気付いた。ちゅーしちゃいそうで焦った、と打ったところで全て消して、今度は私が既読スルーをし、踵を返して監視カメラの元へ向かった。
部屋の様子を伺うと、チアキ・カシマは机に座って本を読んでいた。端末をチラチラ気にしているので、おそらく返信を待っているのだろう。
『ところで、そちらは夢の中でポッキーゲームしましたか?』
送信してチアキ・カシマに注目すると、端末を手に取ってメッセージを確認し、何やら打ち始めたので私も端末を確認した。
『いや、普通に食べさせただけだった。』
『でも』
でも…?
『途中で君が鼻から食べたいと言い出して』
鼻から…?
『危ないからさすがに止めた。』
チアキ・カシマの夢の中での私があまりにしょうもない。とりあえず
『それはどうもありがとう。』
と返信して
『でも』
チアキ・カシマと同じように一旦区切り
『次にもし同じ夢を見たら、ちゃんと鼻から食べさせてあげて下さい。夢だから痛くないと思うので。』
そう送ると、チアキ・カシマは机に肘を置き、手のひらで口元を覆った。
もしかして、笑った?
それからチアキ・カシマは端末を置き、本の続きを読み始めた。返信はそれきり来なかったけど、その時私はある疑惑が浮かんだ。
雑貨屋の店主と同じく、面会中私もずっと鼻毛か何かが出ていたのではないか。それを今、暗に私に教えたのではないか、と。
慌てて鏡を見て確認したけど出ていない。いや、今出ていないからといってこれまで出ていなかったという保証にはならない。メイク中に出ていなくても、見えていない部分がいきなり伸びたり、何かの拍子に飛び出すことが無いとは言い切れない。
明日の面会でカシマ・チアキを問い詰めて、真相を必ず明らかにしようと心を燃やし、財布を持ってマスクを買いに雑貨屋へと向かったのだった。
―完―
【あとがき】
お世辞を真に受けてもう一度ミリしらしてみました。全然お話になっていない上、今度こそキャラが崩壊していることと思います。相談員の皆様、どうか大目に見て下さい。初めましての方は、トップページ『繋』にて本職の方々がちゃんとした素敵なお話を書いてますので、そちらから入ることを強くお勧めします。
コメント
- なずな(右鼻) (非ログイン)2023/12/29 07:45
ウインナーを押し戻したことは覚えてるwwwアイシテルのサインだったことも覚えてるけど何でたこつぼさんの鼻にウインナー入ってたんだっけwwwwww
[ 返信する ] - スベル (非ログイン)2023/12/29 21:23
この離島の2人が好き過ぎる😭
2人で見たポッキーゲームに記憶を取り戻すヒントがなんて誰が思う!???
素晴らしい!👍👍
あと「落ち込んでと入れようとしたのに、勝手におちんこと予測変換されたんだろうな。それだけいつも入力してんのかな」と落ち込んでるたこつぼさんを笑ってしまいましたスミマセン[ 返信する ] - たこつぼ (非ログイン)2023/12/27 21:39
今日すごくおちんこでてたのでめっちゃ元気出ました😭私も夢で鼻からポッキー食いてえ😭(?)本当にありがとうございました😭wwwwこの2人好きすぎるwwwwまたお願いします(強欲)
[ 返信する ]- みと (非ログイン)2023/12/27 22:17
なんかすごい誤字してる気がするんですけど…わざとですか?
[ 返信する ] - メイコ2023/12/27 22:35
またしてもエセ囚われのパルマですみま千円!
「今日すごくおちんこで」って、いつもじゃんと思ったんですけど、よく見たら落ち込まれていたのですね…元気になってよかったですけど、あんまり無理せず、おちんこする時はおちんこしましようね!
そういえばたこつぼさん鼻からウインナー食ってましたよね???これは鼻ポッキーもやってんな…
エセすぎて申し訳ないですけど、ご要望とあればシメられない程度にまた書いてみます![ 返信する ] - メイコ2023/12/27 22:42
読み間違いかと思ってたし、お嬢も読み待ち違えるなんて隅に置けないな〜と喜んでいたら、普通にしっかり「おちんこでてて」って書いてあって驚きました。ほんと、お元気そうで何よりです。
[ 返信する ] - たこつぼ (非ログイン)2023/12/27 23:10
まさかみとさんに気付かれてしまうとは思わず、笑ってしまい&大変申し訳ないのですが、わざとです
[ 返信する ] - たこつぼ (非ログイン)2023/12/27 23:18
2人を混乱させてしまいw次はちゃんと「おちこんでて」、って書こうと思いました。(普通に書いてもめいさんは読み違えてくれるという信頼)
私はチアキカシマが何をしていても絶対に喜んでると思うので安心してまた気が向いたら書いて見せていただきたいです、宜しくお願いします、うす、あと鼻からウィンナーはなずなさん(陽太郎)が私に食べさせたんです!自主的にではない
んです!!😭😭😭w[ 返信する ] - メイコ2023/12/28 16:05
DLsiteのメルマガの読み過ぎで、私の見間違いかと思ったら普通にDLsiteのメルマガと同じで笑いました。間違ってなくてよかったです!
あれ?たこつぼさんが陽太郎のウインナーを鼻からいった夢小説をなずなさんが書いたんでしたっけ???たこつぼさんが鼻でウインナー食ってたことしか思い出せねぇ…!私も収容所にブチ込んでくれないかな。事件の鍵とか握ってないけど!
そしたら鼻にウインナー突っ込んで、おちんこ出したチアキと一緒に面会に来て下さいね!よろしく頼む![ 返信する ]
- みと (非ログイン)2023/12/27 22:17
- なずな(須田) (非ログイン)2023/12/27 20:13
面白すぎてしんどいwww最高wwwめい相談員の、サバサバを通り越したザバザバ感、最高なんだよwww
[ 返信する ]