狂った女の丸出し日記

ミリしらチアキSS

2023/12/04 23:15
チアキ・カシマ。私はこの男の、何もかもを見透かそうとするような目が苦手だ。あの目に見つめられると、妙な居心地の悪さを感じる。警察官を見ると悪いことをしていないのに、なぜかそわそわしてしまうあの感覚に近く、心を開いてもらおうにもこちらの心が開けない。

怪しげな離島の辛気臭い建物に辛気臭い部屋。何もかもが怪しくて、何もかもが息苦しい。

「おはようございます。チアキさん。」

ここへ来て三日目。私は今日もガラス越しの彼にぎこちない笑顔を浮かべ、相談員のふりをして彼に話しかけた。

「調子はどうですか?」

「変わりない。」

「何か必要な物はありますか?」

「特にない。」

自分の容疑を晴らす為とはいえ、これからこんなやり取りを続けなくてはならないのかと思うと気が重い。相談員てなんだ。こっちが相談に乗ってもらいたいくらいだ。

用意された部屋は綺麗だけど落ち着かないし、枕も違うので全然眠れない。せめて自分の枕だけでも持ってきてもらいたいけど、知らない人に勝手に部屋に入られるのは嫌だ。

「チアキさんはよく眠れてますか?」

「問題ない。君はとても眠そうだな。」

「はい、すごく眠いです。今目を閉じたら三秒で眠れると思います。」

「ここで寝られても困る。」

私だってこんなところで寝たくない。できることなら自分の家で寝たい。
重い瞼をなんとか持ち上げて、チアキ・カシマの漆黒の瞳を見ていると、冷凍庫に残してきたハーゲンダッツのクッキー&クリームを思い出した。
帰るころにはカップに霜が付いているかもしれない。そもそも帰れるかもわからない。電気が止まって溶けでもしたら、シーハイブを一生恨む。

「すみません。アイスクリームは何味がお好きですか?」

「あまり食べないから、よくわからないな。」

「そうですか。じゃあ無難にバニラですかね。後で差し入れします。」

シーハイブの職員連中にも買って、わざと公園に寄り道して溶かしてから渡そう。そうでもしなければ気が済まない。全員ドロドロのアイスを食べればいい。
そんなことを考えていると、チアキ・カシマが前に出た。

「君は一体何を企んでいる。」

鋭い瞳に眠気が一気に覚めた。やはりこの男は只者ではない。

「なんのことですか?」

あっ、そうか。シーハイブ職員の連中にドロドロに溶けたアイスを渡すということは、カシマ・チアキの手に渡るアイスもドロドロに溶けたアイスになってしまう。先にチアキ・カシマに差し入れをして、職員連中のアイスはそのあと放置するのが良さそうだ。

私もガラスに顔を寄せ、

「安心して下さい。チアキさんにはちゃんとしたものを用意します。」

口元を隠してそう伝えた。より共犯臭を漂わせてしまったかもしれないけど、やましいことなど何もないのだから、堂々としていればいい。

私の真意を探るように見つめるチアキ・カシマの視線を振り切って、こうしてはいられないと、早々に切り上げて面会室を後にした。


買い物を終えると、チアキ・カシマからメッセージが届いていた。

『なにか危険なことをしようとしてないか?』

危険といえば危険だけど、ドロドロに溶けたアイスを差し入れたから独房に入れられる、なんてことはさすがにないだろう。

『大丈夫です。アイスクリームを買いました。お腹が冷えるといけないので、とりあえず一つにしておきます。』

お母さんのようなメッセージを返し、溶けないうちにチアキ・カシマにアイスを差し入れた。そして自分の部屋に戻ってアイスを放置し、一時間程仮眠を取って起き上がると、『受け取った。ありがとう。』というメッセージが届いていた。

仮眠とはいえ浅すぎた睡眠にまた腹が立ち、

『放置して溶かしたアイスを、今から職員どもに差し入れに行きます。』

と打ってから、いやいやこんなことを送ったら相談員じゃないことがバレてしまう。危ない危ないと消そうとしたら、誤って送信ボタンを押してしまった。

生きた心地がしない中、今からでも送信を取り消せないかと端末の機能を慌てて調べていると、チアキ・カシマから返信が来てしまった。

『その話、詳しく聞きたい。次の面会が楽しみだ。』

下手に誤魔化そうとしたところで、おそらくチアキ・カシマには通じない。送った文面に弁解の余地もない。

やってしまったと激しく後悔しながら布団に倒れ込み、どうしたらいいか考えたけど何も思い浮かんでこないので、とりあえず予定通り詰所に放置したアイスを差し入れに行くと、受け取った若い看守にとても喜ばれて、良心が少し痛んだ。


翌日面会に行くと、チアキ・カシマの表情がいつもよりやわらかいような気がした。

「おはようございます。」

「おはよう。」

「チアキさん、昨日はよく眠れましたか?」

まずはお決まりの話題から入ると

「あまりよく眠れなかったな。例の件が気になりすぎて。」

私を見透かそうとするあの目も、今日はなんだか穏やかな気がする。私がガラスに近づくと、カシマ・チアキも近づいて耳を傾けた。

「むしゃくしゃしてやった。後悔はしていない。」

「君も色々と大変なんだな…。ところで、そんなことを言って大丈夫か?」

ちらりと看守に目をやるとバチっと目が合ったので、笑って会釈して誤魔化した。

「大丈夫みたい。」

「今のどこに大丈夫な要素があったんだ?君のこと、今もずっと見てるけど?」

そう言われた私は怖くて看守の方を見れず、チアキ・カシマが味方のように思えてきて、初めて一度も居心地の悪さを感じることなく会話を進めることができた。
チアキ・カシマもまた、この日を境に私への警戒心が薄れたのか、面会時も積極的に雑談に応えてくれるようになり、メッセージをたくさんくれるようになったのだった。





―完―

【あとがき】
今日、『秘密の花園』という名のグループ通話をした際に、ミリしらをやろうという話になった。私は囚われのパルマはハルトとアオイしかプレイしたことがなく、チアキは序盤の序盤までしかプレイしておらず、相互様の夢小説及びゲームの感想でしか知らない為、だいぶ知識が偏っているし、本当にほとんど彼のことを知らない。これぞミリしら。
自他共に認めるKYである私も、さすがにいきなりベッドシーンは書けなかったので、芋って当たり障りのないところにしました。
相談員の方々に、深くお詫び申し上げます。

コメント

[ ログインして送信 ]

名前
コメント内容
削除用パスワード ※空欄可
  • スベル (非ログイン)2023/12/08 08:51

    はいきた、めっちゃチアキ!!!!
    1時間も溶かしたアイスを差し入れられる相談員も好き過ぎてシリーズ化して欲しくなりました🤣
    少ししかやってないのにちゃんと表現できるの凄いですね。

    ヒプマイより先に蜂蜜口内炎をすすめているんですが、ヒプマイ㍉シラ先にやった方が良いですか?

    名前
    コメント内容
    削除用パスワード ※空欄可
    • メイコ2023/12/08 15:07

      まじすか!よかったーー!!世界観も設定もうろ覚え過ぎて、相談員の皆様に「ちげーよwww」と言われるのを覚悟してたので一安心です。ワシの聖女様のお望みとあらば、もう一つくらいやったるワ!

      蜂蜜口内炎めっちゃ楽しみです!!が、ミリしらも超絶楽しみ過ぎるので、気分と筆の進むままに、好きな方をやって下さい。なずなさんのヒプマイミリしらは受け取りましたので、出揃ったらまとめて日記もしくは新しいページ作ってそこに載せたいなーなんて思ったりしちゃったりなんかして。
      どちらも楽しみに待ってます☆

      名前
      コメント内容
      削除用パスワード ※空欄可
  • たこつぼ(アイス食べたい) (非ログイン)2023/12/05 15:38

    こっちが相談に乗ってもらいたい系相談員のドロドロアイス差し入れ話めちゃくちゃ面白いwwwそしてめちゃくちゃチアキカシマ!さすがすぎる!!😂
    まさかここでチアキSSを読めると思ってなかったので大歓喜しましたwベッドシーンSSも願わずにはいられません。

    このチアキカシマと相談員はとても良い友達になれそうだ……

    名前
    コメント内容
    削除用パスワード ※空欄可
    • メイコ2023/12/05 20:42

      ちゃんとチアキになってますか?!たこつぼさんのチアキで九割固定されてるので、普通にしてるチアキがまじで分からなくて困りました。でもキャラ崩壊してなくてよかったです!

      ベッドシーンは一切思い描けず、それこそキャラ崩壊して夜道に気を付けねばならなくなりますので、引き続きたこつぼさんのところでこそこそとありがたく拝ませて頂きます!

      名前
      コメント内容
      削除用パスワード ※空欄可
    • メイコ2023/12/05 20:44

      好きなアイス食べて!溶けないうちにね!

      名前
      コメント内容
      削除用パスワード ※空欄可
  • なずな(看守) (非ログイン)2023/12/05 08:31

    すげぇぇぇ!!チアキくんだ!!あってるあってる😂😂やっぱチアキくん良いわ……!
    あと、めいさんの相談員、疑心暗鬼強めで超好きww


    っていうか仕事が早い!さすがwww
    ちなみにヒプノシスマイクのミリしらはあと10人です🤣

    名前
    コメント内容
    削除用パスワード ※空欄可
    • メイコ2023/12/05 14:28

      合ってますか?!よかったー!!
      二次を除くと、チアキは頭がいいという情報しか持っていないので、いきなり夢小説は難しかったです。無謀www
      疑心暗鬼プレイはえんだんでも可能なので、そのうち日記にでも書きますね!
      ヒプマイ人数多くてすみませんwwwめっちゃ楽しみにしてます!

      メイコ(公園住み)より。

      名前
      コメント内容
      削除用パスワード ※空欄可