【縁がわ小話】※全5種

【台風】

玄関では畑の養生と雨戸を閉め終わった陽太郎が、手ぬぐいで濡れた頭と服を拭いている。
替えの服を渡してから台所に入って、三人分の温かいお茶を淹れた。

着替えを終えた陽太郎と一緒に茶の間に入り、お風呂が沸くまでの間に座ってひと息ついていると、横殴りの雨が激しく雨戸を叩き始めた。その雨音の大きさに驚いて、あまりの悪天候に困ったねと呟くと

「今日はもう外には出られそうもないし、こんなに雨音が大きかったら、少しくらい大きな声を出しても大丈夫そうですね。」

陽太郎の意味深な言葉と笑顔を受けて、私の心も突発的な春の嵐に見舞われた。



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