虎の足裏指圧
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ゆっくり長めに浸かったお風呂から上がり、縁側で一人ぼけーっと涼んでいると、一枚の紙を持った虎が、急ぎ足でやってきた。
「おれのかわいい子豚!足を出せ!」
「そんな突然、金を出せ!みたいに言われても……」
何か妙なコトに目覚めてしまったのだろうか。改めて足を見せろと言われると、お風呂上がりとはいえ気が進まない。
「なんで足?」
「足の裏にあるツボとやらを押すと元気になるらしい。ツボがどこに効くかもこれに書いてある。一人でいるとき、最近よく『なんだか身体がだる重~』と言っているだろう?ならば片っ端からツボを押してやろうと思ってな。」
私の口真似がちょっとアレなのが気になるけど、想像もしていなかった優しい脅迫に、疑ってごめんと心の中で謝った。
それから、せっかくなのでお言葉に甘えようと自分の足を確認する。
爪も切ったばかりだし、間には何も挟まっていない。踵が少しカサついてるけど許容範囲だ。
「ありがとう。じゃあ、お願いしようかな。」
縁側に沿って横を向き、後ろ手をついて伸ばした足を虎に預ける。
「よし、上から順に押していくからな。」
虎は小さな手で私の足をしっかり持つと、まずは足の親指を、豆のような小さな指に力を込めてぐりぐりと押した。瞬間、あまりの痛さに声にならない悲鳴を上げて悶絶し、反射的に素早く足を引っ込めた。
「すっすまん!まさかそんなに痛がるとは…大丈夫か?」
虎は慌てた様子で、すごく申し訳無さそうに耳を垂らしている。
どうやらわざとではないらしい。
「めちゃくちゃ痛かった…でも、痛いってことは、そのツボと繋がってるところが悪いってことだよね?今のどこ?」
「今押したのはアタマのツボだ。お前、アタマが悪かったのか…。」
「確かにそうかもしれないけど、それにしても押す力が強すぎない?もっと優しく押せば痛くないかもしれないし。」
「ふむ、ではもう少し力を抑えてみるか。よし、もう一度足を出せ!」
「今の半分以下の力でいいからね?」
「わかった。半分以下だな。」
「本当にわかってる?」
「案ずるな。今の半分以下だろう?」
初手があまりに痛すぎて、虎の力加減を信用できずに足を出し渋っていた時、ちょうどそこへお風呂上がりの陽太郎が、「ふぅ、さっぱりした~」と言いながら、ご機嫌な様子でやって来た。
私が横向きで縁側を占領してしまっている為、陽太郎は障子戸を開いたまま、畳の上であぐらをかいた。
「今日は何をして遊んでるんですか?」
「遊んでるっていうか、虎が足の裏の指圧をしてくれてるんだけど…あ!そうだ!ねぇ、先に陽太郎にやってあげたら?私よりもだいぶ疲れてるだろうし。」
陽太郎が足を伸ばせるように、下がって場所を開ける。
ここは陽太郎に、犠牲者もとい練習台になってもらいたい。
「ふむ…ではおれのかわいい子豚は後でやるとしよう。陽太郎、足を出せ!」
「はい、これでいい?」
ずいぶんあっさり出したけど、大丈夫だろうか。固唾をのんで見守る中
「いくぞ?」
虎がぐっと陽太郎の足の裏を押した。私と同じツボから始まり、次から次へと移動していく。ちゃんと力を加減しているのか、陽太郎は全く動じずに、涼しい顔でにこやかに虎の指圧を受け止めている。
にわかに信じ難い。そして、心のどこかで、陽太郎が私と同じ反応をして、悶絶することを期待していたことに気づく。
「痛くないの?」
「うーん…そこまで痛くはないですね。どちらかというと気持ちいいです。」
「悪いところは無いということか。喜ばしい事だが…そんな涼しい顔をされていては物足りなくもあるな。」
「ふふっ、痛がらなくて残念だったな。」
笑ってる…結構強く押してるはずなのに…嘘でしょ……?
信じられない思いで陽太郎の顔と陽太郎の足の裏を交互に見ていると
「あっ!そこ…痛いかも。」
ついに少しだけ顔をしかめた。
「ここか?」
痛いと言った場所を、虎が容赦なくぐりぐりと押す。すると、陽太郎の顔はさらに歪んだ。その顔がなんかちょっとやらしくて、どうかもっとやってほしい。
「いっ…たい!」
陽太郎が痛みに耐えきれず、ついに足を引いた。
虎は満足げな顔をしながら図解を見て、陽太郎が痛がった場所を確認する。
「今お前が痛いと言ったツボは…えっと……ボウコウだ!」
ボウコウ…
膀胱…
陽太郎の、膀胱?
「あー…外で仕事してると、どうしても後回しにすることが多いからなぁ。それにしても、虎の力が強すぎるだけな気もするけど。」
「そうか?加減が難しいな。そうだ!おれのかわいい子豚、お前が押してみてくれないか?」
願ってもない提案に、やります!と、今まで生きてきた中で一番いい返事が出た。
「いいんですか?あなたに足を触らせるなんて、なんだか申し訳ないです。」
「お風呂から出たばかりだから大丈夫!気にしないでお願いだから全部私に任せて!」
「そうですか?では、お言葉に甘えて…お願いします。」
自分でも引くほど必死になってしまった。
陽太郎は困ったように笑いながら、おずおずと私の方へ足を差し出した。その骨ばった大きな足を持って自分の膝に乗せ、手でしっかりと支える。本当に大きな足。足までかっこいい。いつもこの足で大地を踏みしめているのかと思うと、私のことも踏みしめて欲しいと思う。
私の企みを察している虎が、「陽太郎のボウコウ(ツボ)はここだぞ」とこっそり教えてくれた。
親指をそこに当て、さぁ歪んだ顔を見せておくれと、ドキドキわくわくしながら陽太郎の膀胱(ツボ)をぐっと押す。しかし陽太郎は微動だにせず、余裕の笑みを浮かべている。
「あれ?全然痛くない…すごく気持ちいいです。」
陽太郎の膀胱(ツボ)を気持ちよくできて嬉しいけど、私が見たいのは苦痛に歪んだあの色っぽい顔だ。それなのに、どれだけ強く押しても余裕でにこにこ笑っている。
執拗に押しすぎてさすがに少し疲れてきた。このままでは私の指がいかれてしまう。私の力では、陽太郎のあの表情を引き出すことはできないのか。
心が折れかけていたその時。
「そう力を入れてばかりでは疲れるだろう。指ではなく棒でやっても良いらしいぞ。ほれ!」
虎がちょうどいい木製の棒をくれた。付録だそうだ。これ幸いと受け取って、全力でぐぐっと膀胱(ツボ)を押す。
「うっ…!」
ついに小さく呻いて顔をしかめた。
ようやくこの手で陽太郎のあの表情を引き出すことができた喜びに打ち震え、脳から生温かい何かがどばどば出ていくのを感じながら、さらに膀胱(ツボ)を強く押し続けた。
「おれのかわいい子豚さん、どうしてそんなに…っ!嬉しそうな顔を……!はぁ…っ!してるんですか?しかも、同じとこばかり…っ!」
なんだかとてもイケナイことをしてるみたいで、気分は最高潮。手の疲れも指の疲れも何も感じない。
夢中になって陽太郎の膀胱(ツボ)を攻めていると
「もっ…もう大丈夫です!大丈夫ですから…!」
私の手の中から、足がすっと引いていった。
「ふぅ…ありがとうございました。虎の指と同じとまではいかなくても、棒だと結構ツボに入り込みますね。痛かったけど、足が軽くなった気がします。そうだ、お礼にあなたのツボも押させてください。」
自分がしてきたことを振り返り、私は結構ですと断った。
でも、陽太郎は聞き入れるつもりはないようだ。穏やかな笑顔に有無を言わさぬ圧を感じる。
しょうがない。散々楽しませてもらった分、腹を括って陽太郎の復讐を甘んじて受け入れよう。
「大丈夫、優しくします。痛がったら、ちゃんと途中でやめますから…さ、足を出して?」
この台詞をこんな形で聞くことになるとは思わなかった。複雑な心境だけど、それでもやっぱり、そうきたらこう返さなければ。
「ハジメテだから……本当に、優しくしてね?」
おそるおそる足を差し出すと、陽太郎は「任せてください」と言って私の足を膝に乗せた。大きな手が私の足を優しく支える。
いつも口元をやらしく拭っている指が、ちょっとカサつきの気になる踵をくっ、くっ、と控えめに押し始めた。
「………。」
宣言どおりに優しくしているせいか、その力が弱すぎて、押されているというよりは、当たっている、という感じだ。
口に付いた米を取ってるときの方が、まだ力強いと思う。
「どうですか?痛くないですか?」
「痛くはないけど…ちょっとくすぐったいかも。もう少し強くても大丈夫。」
「これくらい?」
指に込められる力が少しだけ強くなった。今度はちゃんと指圧されている感じがする。
自分の硬さも分かり、ほぐされていくのも分かる。
少し冷えていた足が、少しずつ温まっていく。
「うん、それ…すごく気持ちいい。」
「なるほど、おれのかわいい子豚にはこの程度の力で良いのだな。陽太郎、棒は要るか?」
「これくらいなら全然疲れないから、このまま指でするよ。………うん、ここはだいぶほぐれてきたかな。」
さっきから狙って言っているのか、それともやはり私のアタマが悪いのか。
陽太郎の発言を実に悩ましく思っていると、指が上にあがっていき、やけに痛気持ちいい場所に当たった。おそらく強く押せばかなり痛いところだけど、陽太郎の絶妙な力加減によってゆっくり凝りがほぐされていく。
「ここは?痛くない?」
「少し痛いけど、その痛さが気持ちいいって感じ…陽太郎、上手だね……ところでここは何のツボ?」
「そこは…あ、これか。セイショクキだ。」
「せっ……」
生殖器。
私はどうやら、陽太郎に生殖器(ツボ)をほぐされて悦んでいたらしい。
「なんだお前ら。揃って顔を赤くして。さては、指圧で血の巡りが良くなったのだな?血の巡りは気の巡り、気の巡りは血の巡り。この図を見ながら毎晩するといい!それに、こうして仲睦まじくすきんしっぷも出来て一石二鳥ではないか。どうだ?二人共、元気になったか?」
「うん、ありがとう。すごく元気になったよ。でも…足ツボは虎にお願いしようかな。力加減練習しておいて?」
なんだか気まずくて、私も陽太郎に同意した。
するのはいいけど、されるのは恥ずかしい。
陽太郎の生殖器(ツボ)を触ってみたいけど、膀胱(ツボ)みたいに執拗にしたら、それこそドン引かれて二度と触らせてもらえなくなりそうだから、ここはおとなしく引き下がるしか無い。
「そうか…まぁ二人がそう言うのなら仕方あるまい。泥船に乗ったつもりで任せてくれ!」
「それを言うなら大船だろ?」
間接的にではあるけど、私たちは確かに秘密の場所を押し合った。陽太郎のあの表情を見れただけで一日の疲れは飛んでいき、寝る前だというのに色々漲っている。虎と人体の構造に乾杯したいくらいだ。
新たな元気の源を見つけた私は、陽太郎の足裏を指圧をするときは必ず教えてもらえるよう、夜を徹して賄賂のレシピを考えようと決意したのだった。
―完―
【あとがき】
膀胱を散々押され、生殖器をやさしくほぐした陽太郎も、きっと眠れない夜を過ごしたのではないでしょうか。虎のナイスアシストにより、こうして楽しくふたりの恋愛が育まれていたらいいなと思うのでした。
「おれのかわいい子豚!足を出せ!」
「そんな突然、金を出せ!みたいに言われても……」
何か妙なコトに目覚めてしまったのだろうか。改めて足を見せろと言われると、お風呂上がりとはいえ気が進まない。
「なんで足?」
「足の裏にあるツボとやらを押すと元気になるらしい。ツボがどこに効くかもこれに書いてある。一人でいるとき、最近よく『なんだか身体がだる重~』と言っているだろう?ならば片っ端からツボを押してやろうと思ってな。」
私の口真似がちょっとアレなのが気になるけど、想像もしていなかった優しい脅迫に、疑ってごめんと心の中で謝った。
それから、せっかくなのでお言葉に甘えようと自分の足を確認する。
爪も切ったばかりだし、間には何も挟まっていない。踵が少しカサついてるけど許容範囲だ。
「ありがとう。じゃあ、お願いしようかな。」
縁側に沿って横を向き、後ろ手をついて伸ばした足を虎に預ける。
「よし、上から順に押していくからな。」
虎は小さな手で私の足をしっかり持つと、まずは足の親指を、豆のような小さな指に力を込めてぐりぐりと押した。瞬間、あまりの痛さに声にならない悲鳴を上げて悶絶し、反射的に素早く足を引っ込めた。
「すっすまん!まさかそんなに痛がるとは…大丈夫か?」
虎は慌てた様子で、すごく申し訳無さそうに耳を垂らしている。
どうやらわざとではないらしい。
「めちゃくちゃ痛かった…でも、痛いってことは、そのツボと繋がってるところが悪いってことだよね?今のどこ?」
「今押したのはアタマのツボだ。お前、アタマが悪かったのか…。」
「確かにそうかもしれないけど、それにしても押す力が強すぎない?もっと優しく押せば痛くないかもしれないし。」
「ふむ、ではもう少し力を抑えてみるか。よし、もう一度足を出せ!」
「今の半分以下の力でいいからね?」
「わかった。半分以下だな。」
「本当にわかってる?」
「案ずるな。今の半分以下だろう?」
初手があまりに痛すぎて、虎の力加減を信用できずに足を出し渋っていた時、ちょうどそこへお風呂上がりの陽太郎が、「ふぅ、さっぱりした~」と言いながら、ご機嫌な様子でやって来た。
私が横向きで縁側を占領してしまっている為、陽太郎は障子戸を開いたまま、畳の上であぐらをかいた。
「今日は何をして遊んでるんですか?」
「遊んでるっていうか、虎が足の裏の指圧をしてくれてるんだけど…あ!そうだ!ねぇ、先に陽太郎にやってあげたら?私よりもだいぶ疲れてるだろうし。」
陽太郎が足を伸ばせるように、下がって場所を開ける。
ここは陽太郎に、犠牲者もとい練習台になってもらいたい。
「ふむ…ではおれのかわいい子豚は後でやるとしよう。陽太郎、足を出せ!」
「はい、これでいい?」
ずいぶんあっさり出したけど、大丈夫だろうか。固唾をのんで見守る中
「いくぞ?」
虎がぐっと陽太郎の足の裏を押した。私と同じツボから始まり、次から次へと移動していく。ちゃんと力を加減しているのか、陽太郎は全く動じずに、涼しい顔でにこやかに虎の指圧を受け止めている。
にわかに信じ難い。そして、心のどこかで、陽太郎が私と同じ反応をして、悶絶することを期待していたことに気づく。
「痛くないの?」
「うーん…そこまで痛くはないですね。どちらかというと気持ちいいです。」
「悪いところは無いということか。喜ばしい事だが…そんな涼しい顔をされていては物足りなくもあるな。」
「ふふっ、痛がらなくて残念だったな。」
笑ってる…結構強く押してるはずなのに…嘘でしょ……?
信じられない思いで陽太郎の顔と陽太郎の足の裏を交互に見ていると
「あっ!そこ…痛いかも。」
ついに少しだけ顔をしかめた。
「ここか?」
痛いと言った場所を、虎が容赦なくぐりぐりと押す。すると、陽太郎の顔はさらに歪んだ。その顔がなんかちょっとやらしくて、どうかもっとやってほしい。
「いっ…たい!」
陽太郎が痛みに耐えきれず、ついに足を引いた。
虎は満足げな顔をしながら図解を見て、陽太郎が痛がった場所を確認する。
「今お前が痛いと言ったツボは…えっと……ボウコウだ!」
ボウコウ…
膀胱…
陽太郎の、膀胱?
「あー…外で仕事してると、どうしても後回しにすることが多いからなぁ。それにしても、虎の力が強すぎるだけな気もするけど。」
「そうか?加減が難しいな。そうだ!おれのかわいい子豚、お前が押してみてくれないか?」
願ってもない提案に、やります!と、今まで生きてきた中で一番いい返事が出た。
「いいんですか?あなたに足を触らせるなんて、なんだか申し訳ないです。」
「お風呂から出たばかりだから大丈夫!気にしないでお願いだから全部私に任せて!」
「そうですか?では、お言葉に甘えて…お願いします。」
自分でも引くほど必死になってしまった。
陽太郎は困ったように笑いながら、おずおずと私の方へ足を差し出した。その骨ばった大きな足を持って自分の膝に乗せ、手でしっかりと支える。本当に大きな足。足までかっこいい。いつもこの足で大地を踏みしめているのかと思うと、私のことも踏みしめて欲しいと思う。
私の企みを察している虎が、「陽太郎のボウコウ(ツボ)はここだぞ」とこっそり教えてくれた。
親指をそこに当て、さぁ歪んだ顔を見せておくれと、ドキドキわくわくしながら陽太郎の膀胱(ツボ)をぐっと押す。しかし陽太郎は微動だにせず、余裕の笑みを浮かべている。
「あれ?全然痛くない…すごく気持ちいいです。」
陽太郎の膀胱(ツボ)を気持ちよくできて嬉しいけど、私が見たいのは苦痛に歪んだあの色っぽい顔だ。それなのに、どれだけ強く押しても余裕でにこにこ笑っている。
執拗に押しすぎてさすがに少し疲れてきた。このままでは私の指がいかれてしまう。私の力では、陽太郎のあの表情を引き出すことはできないのか。
心が折れかけていたその時。
「そう力を入れてばかりでは疲れるだろう。指ではなく棒でやっても良いらしいぞ。ほれ!」
虎がちょうどいい木製の棒をくれた。付録だそうだ。これ幸いと受け取って、全力でぐぐっと膀胱(ツボ)を押す。
「うっ…!」
ついに小さく呻いて顔をしかめた。
ようやくこの手で陽太郎のあの表情を引き出すことができた喜びに打ち震え、脳から生温かい何かがどばどば出ていくのを感じながら、さらに膀胱(ツボ)を強く押し続けた。
「おれのかわいい子豚さん、どうしてそんなに…っ!嬉しそうな顔を……!はぁ…っ!してるんですか?しかも、同じとこばかり…っ!」
なんだかとてもイケナイことをしてるみたいで、気分は最高潮。手の疲れも指の疲れも何も感じない。
夢中になって陽太郎の膀胱(ツボ)を攻めていると
「もっ…もう大丈夫です!大丈夫ですから…!」
私の手の中から、足がすっと引いていった。
「ふぅ…ありがとうございました。虎の指と同じとまではいかなくても、棒だと結構ツボに入り込みますね。痛かったけど、足が軽くなった気がします。そうだ、お礼にあなたのツボも押させてください。」
自分がしてきたことを振り返り、私は結構ですと断った。
でも、陽太郎は聞き入れるつもりはないようだ。穏やかな笑顔に有無を言わさぬ圧を感じる。
しょうがない。散々楽しませてもらった分、腹を括って陽太郎の復讐を甘んじて受け入れよう。
「大丈夫、優しくします。痛がったら、ちゃんと途中でやめますから…さ、足を出して?」
この台詞をこんな形で聞くことになるとは思わなかった。複雑な心境だけど、それでもやっぱり、そうきたらこう返さなければ。
「ハジメテだから……本当に、優しくしてね?」
おそるおそる足を差し出すと、陽太郎は「任せてください」と言って私の足を膝に乗せた。大きな手が私の足を優しく支える。
いつも口元をやらしく拭っている指が、ちょっとカサつきの気になる踵をくっ、くっ、と控えめに押し始めた。
「………。」
宣言どおりに優しくしているせいか、その力が弱すぎて、押されているというよりは、当たっている、という感じだ。
口に付いた米を取ってるときの方が、まだ力強いと思う。
「どうですか?痛くないですか?」
「痛くはないけど…ちょっとくすぐったいかも。もう少し強くても大丈夫。」
「これくらい?」
指に込められる力が少しだけ強くなった。今度はちゃんと指圧されている感じがする。
自分の硬さも分かり、ほぐされていくのも分かる。
少し冷えていた足が、少しずつ温まっていく。
「うん、それ…すごく気持ちいい。」
「なるほど、おれのかわいい子豚にはこの程度の力で良いのだな。陽太郎、棒は要るか?」
「これくらいなら全然疲れないから、このまま指でするよ。………うん、ここはだいぶほぐれてきたかな。」
さっきから狙って言っているのか、それともやはり私のアタマが悪いのか。
陽太郎の発言を実に悩ましく思っていると、指が上にあがっていき、やけに痛気持ちいい場所に当たった。おそらく強く押せばかなり痛いところだけど、陽太郎の絶妙な力加減によってゆっくり凝りがほぐされていく。
「ここは?痛くない?」
「少し痛いけど、その痛さが気持ちいいって感じ…陽太郎、上手だね……ところでここは何のツボ?」
「そこは…あ、これか。セイショクキだ。」
「せっ……」
生殖器。
私はどうやら、陽太郎に生殖器(ツボ)をほぐされて悦んでいたらしい。
「なんだお前ら。揃って顔を赤くして。さては、指圧で血の巡りが良くなったのだな?血の巡りは気の巡り、気の巡りは血の巡り。この図を見ながら毎晩するといい!それに、こうして仲睦まじくすきんしっぷも出来て一石二鳥ではないか。どうだ?二人共、元気になったか?」
「うん、ありがとう。すごく元気になったよ。でも…足ツボは虎にお願いしようかな。力加減練習しておいて?」
なんだか気まずくて、私も陽太郎に同意した。
するのはいいけど、されるのは恥ずかしい。
陽太郎の生殖器(ツボ)を触ってみたいけど、膀胱(ツボ)みたいに執拗にしたら、それこそドン引かれて二度と触らせてもらえなくなりそうだから、ここはおとなしく引き下がるしか無い。
「そうか…まぁ二人がそう言うのなら仕方あるまい。泥船に乗ったつもりで任せてくれ!」
「それを言うなら大船だろ?」
間接的にではあるけど、私たちは確かに秘密の場所を押し合った。陽太郎のあの表情を見れただけで一日の疲れは飛んでいき、寝る前だというのに色々漲っている。虎と人体の構造に乾杯したいくらいだ。
新たな元気の源を見つけた私は、陽太郎の足裏を指圧をするときは必ず教えてもらえるよう、夜を徹して賄賂のレシピを考えようと決意したのだった。
―完―
【あとがき】
膀胱を散々押され、生殖器をやさしくほぐした陽太郎も、きっと眠れない夜を過ごしたのではないでしょうか。虎のナイスアシストにより、こうして楽しくふたりの恋愛が育まれていたらいいなと思うのでした。
1/1ページ