奥手
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
おやつを食べ終わり、初夏の縁側でひと息ついていた時のこと。
暑くなってきたせいか、虎は誰の膝に座ることなく、おれとおれのかわいい子豚さんの間に座っていた。
緑豊かな遠くの山景色を眺めながら話に花を咲かせていると、突然おれのかわいい子豚さんが短い悲鳴を上げた。
そして小さい声を震わせて、虫が、虫が、と顔をこわばらせながらおれを見た。
視線を走らせると、少し大きな羽虫が胸にとまっていた。
涙目で訴えてくるおれのかわいい子豚さんを助けたくて、早くとってあげようと手を伸ばしたけど、途中でためらいが生じた。
胸に、触れてしまうかもしれない。
それはさすがにまずくないか?でも、すごく怯えていて今にも泣き出しそうだし、気にしている場合じゃなさそうだ。
触れないように気をつけるけど、触れてしまったら謝ろう。
そんな考えを巡らせた後、意を決して再び手を伸ばした時だった。
「なんだ、ただの虫ではないか。」
おれの手が届くより先に、虎がその虫をひょいと取って、ぱくっと食べた。
おれのかわいい子豚さんは半べそをかきながら、ありがとうと言って、虎を抱えてぎゅっと抱きしめた。
おれは行き場のなくなった手を膝へと戻し、得意げな虎を見ながら自分を不甲斐なく思った。
結果としておれのかわいい子豚さんが助かったのなら、それでいい。胸を触って嫌な気持ちにさせることもなかったんだから、これでいい。
そう自分に言い聞かせて、畑へと向かった。
その日の夜。
布団で寝返りを打ちながら、今日の出来事を思い出す。
一瞬でもためらってしまった自分の手を見つめていると、なんともいえない悔しさが、後からじわじわこみ上げてくる。
それが何に対する悔しさなのか、自分でもよくわからない。
あれこれ考えてみたり、考えないようにしてみたりして、布団を握りしめながら眠れない夜を過ごした。
ー完ー
【あとがき】
まだゲームを始めて日が浅い時に書いたお話だったと思います。虎が虫を食ってますからね。虫も食えると思ってましたからね。
昔は虫も食えたけど、人のご飯の味を知ってからは食わなくなり、食おうと思えば食えるけど、敢えては食わない。そう思うことにして、このお話も愛します。
暑くなってきたせいか、虎は誰の膝に座ることなく、おれとおれのかわいい子豚さんの間に座っていた。
緑豊かな遠くの山景色を眺めながら話に花を咲かせていると、突然おれのかわいい子豚さんが短い悲鳴を上げた。
そして小さい声を震わせて、虫が、虫が、と顔をこわばらせながらおれを見た。
視線を走らせると、少し大きな羽虫が胸にとまっていた。
涙目で訴えてくるおれのかわいい子豚さんを助けたくて、早くとってあげようと手を伸ばしたけど、途中でためらいが生じた。
胸に、触れてしまうかもしれない。
それはさすがにまずくないか?でも、すごく怯えていて今にも泣き出しそうだし、気にしている場合じゃなさそうだ。
触れないように気をつけるけど、触れてしまったら謝ろう。
そんな考えを巡らせた後、意を決して再び手を伸ばした時だった。
「なんだ、ただの虫ではないか。」
おれの手が届くより先に、虎がその虫をひょいと取って、ぱくっと食べた。
おれのかわいい子豚さんは半べそをかきながら、ありがとうと言って、虎を抱えてぎゅっと抱きしめた。
おれは行き場のなくなった手を膝へと戻し、得意げな虎を見ながら自分を不甲斐なく思った。
結果としておれのかわいい子豚さんが助かったのなら、それでいい。胸を触って嫌な気持ちにさせることもなかったんだから、これでいい。
そう自分に言い聞かせて、畑へと向かった。
その日の夜。
布団で寝返りを打ちながら、今日の出来事を思い出す。
一瞬でもためらってしまった自分の手を見つめていると、なんともいえない悔しさが、後からじわじわこみ上げてくる。
それが何に対する悔しさなのか、自分でもよくわからない。
あれこれ考えてみたり、考えないようにしてみたりして、布団を握りしめながら眠れない夜を過ごした。
ー完ー
【あとがき】
まだゲームを始めて日が浅い時に書いたお話だったと思います。虎が虫を食ってますからね。虫も食えると思ってましたからね。
昔は虫も食えたけど、人のご飯の味を知ってからは食わなくなり、食おうと思えば食えるけど、敢えては食わない。そう思うことにして、このお話も愛します。
1/1ページ