冗談
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ある春の夜のこと。寝る準備を済ませた私たちは、いつものように縁側でおしゃべりをしていた。虎は先に寝ると言って、ずいぶん早く自分の部屋へ行ってしまった。
現在の話題は今読んでいる探偵小説のこと。
陽太郎が読み終わったのを貸してもらい、登場人物六人のうち三人殺されたところまで読み進めていた。
以前に別の探偵小説を三人で回し読みしていた時、先に読み終わった虎に犯人を言われてブチ切れたことがあったので、探偵小説を回すときは虎が最後と決まっている。
そのくせそれまでの流れを辿りながら、犯人はあの人?それともあの人?と陽太郎に聞いては、「さぁ?どうでしょう?」と言われる問答を繰り返していた。陽太郎も本当は犯人を言いたいのか、どこかそわそわしているようだった。
まだまだ盛り上がりをみせそうな中、少し体が冷えてきて、羽織を持ってくればよかったなと思っていると
「おい!陽太郎!!」
急に後ろから大声がして、驚きのあまり二人揃って声を上げ、身体がビクッと跳ねた。心臓が止まるかと思った。
「さっきから見てればお前はもじもじもじもじと…!」
「とっ虎!?はぁ…驚かせるなよ。寝たんじゃなかったのか?」
「そんなことはどうでもいい!ここは『寒くないか?(キリッ)』と言って、自分の服を着せるとこだろう?!」
「また変な情報を仕入れてきて…これを脱いだら裸なんだけど?でもそうだよな…気がつかなくてごめんなさい。おれのかわいい子豚さん、寒いですか?」
正直ちょっと寒いけど、面白くなってきたので全然平気と答えた。
「フン!寒くなる前にその無駄に高い体温で温めてやればいいものを、これだから奥手なやつは……」
「言いたい放題だな。そんなことされたって、おれのかわいい子豚さんが困るだろ。」
「はぁ〜、お前は女心というものが分かっとらんな。こうなったら我が手本を見せてやる!」
虎は陽太郎の逆隣に座り、どろん!と煙を立て何かに変化 し……
!!!!!!
「やぁお嬢さん。今夜は冷えるね。」
なんと、私の好きな役者さんが目の前に現れた。
虎に雑誌を見せまくってたからきっと覚えてたんだろうけど
えっ、でも、まって、急にそんな、心の準備……
「お嬢さん、大丈夫かい?」
全然大丈夫じゃない。
口を両手で抑えてなんとか声を我慢しているけど、そのせいで喉からくぐもったような変な音が出た。
喋り方も声も絶対違うんだけど、生で見たらこんなにかっこいいの?倒れそうなんだけど…やば……
「おれのかわいい子豚さん大丈夫ですか?」
陽太郎が、明らかに様子がおかしい私を心配してくれている。でも目の前の役者さん(虎)に釘付けになっている私は正気を保つのも精一杯で、首を横とか縦に振ることしかできない。
「そっちに行ってもいいかい?」
役者さん(虎)は私との距離を詰め、こともあろうか肩を抱いた。そのあまりの近さに混乱を極め、現実味がない中瞬きをするのも忘れ、ただただ見惚れるばかり。
「こんなに冷えて…。どれ、私が温めてあげよう。」
抱きしめられて、声にならない悲鳴が出た。
我が生涯に一片の悔い無しと胸に頭を預けると、左半身にもぬくもりを感じ、視界の端に外にはねた癖毛が揺れている。
陽太郎が詰めてきたのだと分かって、私はもう死んでいるかもしれないと思った。
「おれのかわいい子豚さん目を覚まして下さい!それは虎ですよ!ほら、よく見て?おれのかわいい子豚さんの好きな役者さんの顎は、こんなに割れてないでしょう?」
言われて見ると、たしかにお尻のように割れていた。
なんだ偽物かと、陽太郎のおかげで正気を取り戻しかけていると
「やきもちか?自分は肩の一つも抱けんくせに。」
「うるさいな!嫌がってるだろ!離しなさい!」
「お嬢さん、私に抱かれるのは嫌か?」
顎は割れていても、そこから上は憧れの超色男。その目に見つめられると正常な判断などできずに、両手で顔を隠して照れながら、嫌じゃないですぅ……としか言えなかった。
「ほれ見ろ!だからお前は女心が分かっとらんのだ!」
そう言って役者さん(虎)は私の体を陽太郎に押し付けると、今度は陽太郎の胸に抱きとめられた。
「コラ!そんなに強く押したら痛いだろ?おれのかわいい子豚さん大丈夫ですか?」
肩に添えられた大きな手と胸の逞しさに、大丈夫じゃないですぅ……としか言えなかった。
「骨抜きではないか。よかったな陽太郎。まったく、世話のやけるやつめ。……なんだ?何か不満でもあるのか?」
「不満しかない。」
「なんだと?!我がせっかく手本を見せてやったというのに!そもそもお前が…」
まだ何か口論をしていたようだったけど、冷えていた体は頭まですっかり熱くなって、その後どうやって自分の部屋に行って布団に入ったのか覚えていない。
翌朝目覚めて、あれは全部夢だったのではと思いながら縁側に行くと、座布団の距離が心なしか、いつもより縮んでいるような気がした。
ー完ー
【あとがき】
あまり修正箇所がありませんでした。虎の変化は夢が広がりますね。
現在の話題は今読んでいる探偵小説のこと。
陽太郎が読み終わったのを貸してもらい、登場人物六人のうち三人殺されたところまで読み進めていた。
以前に別の探偵小説を三人で回し読みしていた時、先に読み終わった虎に犯人を言われてブチ切れたことがあったので、探偵小説を回すときは虎が最後と決まっている。
そのくせそれまでの流れを辿りながら、犯人はあの人?それともあの人?と陽太郎に聞いては、「さぁ?どうでしょう?」と言われる問答を繰り返していた。陽太郎も本当は犯人を言いたいのか、どこかそわそわしているようだった。
まだまだ盛り上がりをみせそうな中、少し体が冷えてきて、羽織を持ってくればよかったなと思っていると
「おい!陽太郎!!」
急に後ろから大声がして、驚きのあまり二人揃って声を上げ、身体がビクッと跳ねた。心臓が止まるかと思った。
「さっきから見てればお前はもじもじもじもじと…!」
「とっ虎!?はぁ…驚かせるなよ。寝たんじゃなかったのか?」
「そんなことはどうでもいい!ここは『寒くないか?(キリッ)』と言って、自分の服を着せるとこだろう?!」
「また変な情報を仕入れてきて…これを脱いだら裸なんだけど?でもそうだよな…気がつかなくてごめんなさい。おれのかわいい子豚さん、寒いですか?」
正直ちょっと寒いけど、面白くなってきたので全然平気と答えた。
「フン!寒くなる前にその無駄に高い体温で温めてやればいいものを、これだから奥手なやつは……」
「言いたい放題だな。そんなことされたって、おれのかわいい子豚さんが困るだろ。」
「はぁ〜、お前は女心というものが分かっとらんな。こうなったら我が手本を見せてやる!」
虎は陽太郎の逆隣に座り、どろん!と煙を立て何かに
!!!!!!
「やぁお嬢さん。今夜は冷えるね。」
なんと、私の好きな役者さんが目の前に現れた。
虎に雑誌を見せまくってたからきっと覚えてたんだろうけど
えっ、でも、まって、急にそんな、心の準備……
「お嬢さん、大丈夫かい?」
全然大丈夫じゃない。
口を両手で抑えてなんとか声を我慢しているけど、そのせいで喉からくぐもったような変な音が出た。
喋り方も声も絶対違うんだけど、生で見たらこんなにかっこいいの?倒れそうなんだけど…やば……
「おれのかわいい子豚さん大丈夫ですか?」
陽太郎が、明らかに様子がおかしい私を心配してくれている。でも目の前の役者さん(虎)に釘付けになっている私は正気を保つのも精一杯で、首を横とか縦に振ることしかできない。
「そっちに行ってもいいかい?」
役者さん(虎)は私との距離を詰め、こともあろうか肩を抱いた。そのあまりの近さに混乱を極め、現実味がない中瞬きをするのも忘れ、ただただ見惚れるばかり。
「こんなに冷えて…。どれ、私が温めてあげよう。」
抱きしめられて、声にならない悲鳴が出た。
我が生涯に一片の悔い無しと胸に頭を預けると、左半身にもぬくもりを感じ、視界の端に外にはねた癖毛が揺れている。
陽太郎が詰めてきたのだと分かって、私はもう死んでいるかもしれないと思った。
「おれのかわいい子豚さん目を覚まして下さい!それは虎ですよ!ほら、よく見て?おれのかわいい子豚さんの好きな役者さんの顎は、こんなに割れてないでしょう?」
言われて見ると、たしかにお尻のように割れていた。
なんだ偽物かと、陽太郎のおかげで正気を取り戻しかけていると
「やきもちか?自分は肩の一つも抱けんくせに。」
「うるさいな!嫌がってるだろ!離しなさい!」
「お嬢さん、私に抱かれるのは嫌か?」
顎は割れていても、そこから上は憧れの超色男。その目に見つめられると正常な判断などできずに、両手で顔を隠して照れながら、嫌じゃないですぅ……としか言えなかった。
「ほれ見ろ!だからお前は女心が分かっとらんのだ!」
そう言って役者さん(虎)は私の体を陽太郎に押し付けると、今度は陽太郎の胸に抱きとめられた。
「コラ!そんなに強く押したら痛いだろ?おれのかわいい子豚さん大丈夫ですか?」
肩に添えられた大きな手と胸の逞しさに、大丈夫じゃないですぅ……としか言えなかった。
「骨抜きではないか。よかったな陽太郎。まったく、世話のやけるやつめ。……なんだ?何か不満でもあるのか?」
「不満しかない。」
「なんだと?!我がせっかく手本を見せてやったというのに!そもそもお前が…」
まだ何か口論をしていたようだったけど、冷えていた体は頭まですっかり熱くなって、その後どうやって自分の部屋に行って布団に入ったのか覚えていない。
翌朝目覚めて、あれは全部夢だったのではと思いながら縁側に行くと、座布団の距離が心なしか、いつもより縮んでいるような気がした。
ー完ー
【あとがき】
あまり修正箇所がありませんでした。虎の変化は夢が広がりますね。
2/12ページ