けん玉おじさんの無駄豆知識
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
約束通り一日中畑で一緒に仕事をして、二人でくすぐったいところを探し合った翌朝。
ぐっすりと眠っているおれのかわいい子豚さんを起こさないように、一人でスープを配りに出た。
すっかり恒例になっている村のみんなからの「今日は一人なの?」に対して、今朝は家の用事で忙しくしててと返しながらスープを配り、最後にけん玉おじさんの家に向かった。
帰ったらきっと、おれのかわいい子豚さんは眉をひそめて「なんで起こしてくれなかったの?」って聞いてくるだろう。せっかく気持ち良さそうに寝ているところを起こすのは忍びないし、ちょっと盛り上がりすぎてかなり体力を消耗したはずだから、ゆっくり寝ていてもらいたい。
終わった後すぐに落ちるように寝ついて、口づけをしても起きないくらい深く眠っていたということは、満足してもらえたんだと思う。
こんなことを本人に言うと呆れられるかもしれないけど、おれのかわいい子豚さんのそんな状態を見届けるまでが一式というか、それによって独占欲が満たされるというか、ある種の達成感を感じる。
だからだろうか、おれのかわいい子豚さんの「なんで起こしてくれなかったの?」を聞くと妙に嬉しくなってしまう。本人からしたらかなり迷惑だろうけど……。
けん玉おじさんの家に着いて玄関から声を掛けると、大きな返事が返ってきた。
相変わらず元気そうなけん玉おじさんは、一人で来たおれを見てニヤニヤしながら「若いっていいねぇ。すっきりした顔しやがってコノヤロー!」と言った。
それを聞いて、もしかして他の人から見てもバレバレなのかもしれないと思い、だとしたら恥ずかしすぎるけど、けん玉おじさんや他のおじさん達みたいに、いっそ堂々としていた方がいいのかもしれないなんて考えも浮かんだ。
「はいこれ、今日のスープ。」
「いつもありがとな!陽太郎、久し振りにけん玉で遊んでかねぇか?直々に技仕込んでやるよ!」
「技って……けん玉の?」
「はぁ?それ以外に何が……あ!そっちの技が知りてぇってか!ようやくお前も一人前の男になったわけだし……よし!とっておきのを伝授してやる!」
「じゃあお言葉に甘えて、久し振りに教えてもらおうかな。でも技はけん玉だけにして?そっちの方は自分でなんとかしたいから。」
「ダハハ!言うじゃねぇか!でもな、畑と同じで先人の知恵を借りるのも手だぞ。おれのかわいい子豚ちゃんの為にも覚えておいて損はねぇはずだ。」
「……なに?」
「“灯台”ができるようになったら教えてやるよ!」
またいつもの下ネタだろうと思ったけど、おれのかわいい子豚さんの為と言われて結局気になってしまったおれは、けん玉おじさんにコツを教わりながら三十分程で“灯台”を決めた。
なんだかんだで子供の頃に戻ったみたいに楽しんだ後、けん玉おじさんはご褒美にと採れたばかりの絹さやをくれた。
そして
「いいか?こういう言葉がある。『三十させ頃、四十し盛り、五十ゴザ掻き、六十ろくに濡れずとも』なんのことだか分かるか?」
「まぁ、なんとなく。」
普通に聞いたら分からなかったかもしれないけど、けん玉おじさんの口から語られたことで、何のことだか大体察しはついた。
「陽太郎。男は引き際が肝心だ。引く時こそ腰を入れろ。押す時はただ押せばいいってもんじゃねぇ。使えるモノは何でも使え。」
「使えるモノ……?」
「お前は体格に恵まれてるからやれば出来るはずだ。ちょいと耳を貸せ。」
けん玉おじさんから教わったとっておきの技は確かに理にかなっていて、悔しいけど今すぐ試したくなる技だった。
「時には恥も意地も捨てて、惚れた女の気持ちに応えてやるのが男ってもんだ。サカモトの男たるもの、女房に物足りないなんて言わせねぇようにしないとな!まぁ、玉の穴にけん先挿すしかできねぇ俺に言われても説得力ねぇか!ダハハ!」
言ってることはしょうもないけど、どんなときでもこうして明るく笑っていられるけん玉おじさんを、おれは心から尊敬している。
「十分すごいよ。」
「……そんな顔するな!どれ!立派になったけん玉見せてみろ!」
「わっ!ちょっと!!」
おれの下半身に伸びてきた手をかわして玄関まで逃げると、けん玉おじさんはずっと変わらないくしゃくしゃの笑顔で手を挙げた。
「いつもありがとうな!また頼む!」
「うん!今度また新しい技……けん玉の技教えて!」
「おう!夜のけん玉の技も、いつでも教えてやるからな!ダハハ!!」
独特の笑い方についつられて笑いながら、けん玉おじさんの家を後にして、その家までの道中、けん玉おじさんが言っていたあの言葉の意味をしっかり考えることにした。
“三十させ頃”
させ頃……そのまま“させる頃”でいいのかな。させる……させる。三十代になったら、誘えばいつでも受け入れてくれるようになるってことか?それは今もそうだけど、おれのかわいい子豚さんは優しいから、もしかしたら断りたくても断れないだけかも……後で聞いてみよう。
“四十し頃”
し頃ってことは、自分からもしたくなるってことだよな?今でもたまにそれとなく誘ってくれることはあるけど、もっと頻繁にそうなるってことかな。おれのかわいい子豚さんが自分からしたくなって……おれのかわいい子豚さんからのお誘いが増える?それも頻繁に……四十代か……まだまだ先だな。
“五十ゴザ掻き”
ゴザを掻くってことは、畳を掻く……畳を掻くってことは……それだけよくなってくれてるってことでいいのかな。でもそれっておれ次第なところもある気がするけど、どうなんだろう。昨日のおれのかわいい子豚さん、敷布とか枕とか、おれの腕なんかも結婚強く握ってたけど……それとはまた違うのかな?うーん……いいのかどうか、次はしっかり聞いてみよう。でも前に「そんなこと聞かないで」って言われたことがあるから、聞くタイミングを間違えないようにしよう。
“六十ろくに濡れずとも”
したいってことかな。愛する人にそう思ってもらえるなんて、男としては冥利に尽きるよな。その頃にはおれも今みたいに動けるかどうかわからないし、動けたとしてもおれのかわいい子豚さんの身体の負担を考えると、やり方を考えた方がいいな。無理のない、それでいてちゃんと愛し合える方法か……今のうちから考えておこう。これに関してはけん玉おじさんの言う通り、素直に助言を得た方がいいかもしれないな。
そんなことを考えているうちに、いつの間にか家に着いていた。
「ただいまー!」
「おかえり!もう!なんで起こしてくれなかったの?!」
聞きたかった台詞を聞けたのが嬉しくて思わず笑うと
「え、なんで笑うの?なんかおかしいとこある?それとも顔に何か付いてる?」
おれのかわいい子豚さんは慌てた様子で自分の身体を見回して、ペタペタと顔を触っておかしなところがないか確認し始めた。
「ごめんなさい。どこもおかしくないです。笑ったのは、やっぱりあなたは可愛いなって思って。」
「それはどうもありがとう。」
「あ、本気にしてませんね?……ね、おれのかわいい子豚さん。」
「?」
「十年後も二十年後も、三十年後も四十年後も期待しててくださいね!」
「? うん!よくわかんないけど期待してる!あ、それ絹さや?てことは……けん玉おじさんに何か言われたんでしょ!」
「今は内緒です。」
「何それ!気になる~!」
「お腹空いたでしょう?朝ご飯、すぐに用意しますね。」
「もうできてるよ。」
「用意してくれたんですか?……ありがとう。」
「その前に、何か忘れてない?」
「……おれのかわいい子豚さん、おはよう。」
「……おはよう、陽太郎。」
どれだけ年を重ねても、こうして想いが静かに溢れて、じわじわと満たされていくような口づけを交わしたい。
こんな朝をあと何十年先も迎えられると思うと、身に余るほど幸せで。
「今日は家の事も全部おれに任せて、ゆっくり休んでください。」
「なんで?全然元気だよ!」
「そうですか?無理なときは、ちゃんと無理って言ってくださいね?その……夜の方も。」
「無理なときなんて無いから、陽太郎も無理じゃないときはいつでも襲ってね!」
こんなふうに無邪気に男心をくすぐってきて、すぐにその気にさせられてしまうからまいってしまう。前みたいになんとか誤魔化して受け流せる日はもう、来ないかもしれない。
「そんなことを言って大丈夫ですか?おれの方こそ無理なときなんて無いですよ?」
「そうなの?」
「はい。十年後も二十年後も、三十年後も四十年後も、この先ずっとです。」
「もしかして……期待しててって、そういうこと?」
「はい。そういうことです。」
はっきりと答えると、おれのかわいい子豚さんは何かを言いかけて、嬉しそうな照れたような、とても可愛らしい顔をした。今すぐにでも襲ってしまいたいけど、さすがに明日の夜まで我慢しよう。けじめのある生活を心掛け、節度を忘れてはいけないと自分を戒めた途端、襟から少しはみ出してしまっている痕に気付いた。
おれのかわいい子豚さんの首に綺麗な手拭いを掛けて隠しながら、もし昼夜問わず彼女に求められたとして節度を保てるのか、早速自信が無くなった。
ー完ー
ぐっすりと眠っているおれのかわいい子豚さんを起こさないように、一人でスープを配りに出た。
すっかり恒例になっている村のみんなからの「今日は一人なの?」に対して、今朝は家の用事で忙しくしててと返しながらスープを配り、最後にけん玉おじさんの家に向かった。
帰ったらきっと、おれのかわいい子豚さんは眉をひそめて「なんで起こしてくれなかったの?」って聞いてくるだろう。せっかく気持ち良さそうに寝ているところを起こすのは忍びないし、ちょっと盛り上がりすぎてかなり体力を消耗したはずだから、ゆっくり寝ていてもらいたい。
終わった後すぐに落ちるように寝ついて、口づけをしても起きないくらい深く眠っていたということは、満足してもらえたんだと思う。
こんなことを本人に言うと呆れられるかもしれないけど、おれのかわいい子豚さんのそんな状態を見届けるまでが一式というか、それによって独占欲が満たされるというか、ある種の達成感を感じる。
だからだろうか、おれのかわいい子豚さんの「なんで起こしてくれなかったの?」を聞くと妙に嬉しくなってしまう。本人からしたらかなり迷惑だろうけど……。
けん玉おじさんの家に着いて玄関から声を掛けると、大きな返事が返ってきた。
相変わらず元気そうなけん玉おじさんは、一人で来たおれを見てニヤニヤしながら「若いっていいねぇ。すっきりした顔しやがってコノヤロー!」と言った。
それを聞いて、もしかして他の人から見てもバレバレなのかもしれないと思い、だとしたら恥ずかしすぎるけど、けん玉おじさんや他のおじさん達みたいに、いっそ堂々としていた方がいいのかもしれないなんて考えも浮かんだ。
「はいこれ、今日のスープ。」
「いつもありがとな!陽太郎、久し振りにけん玉で遊んでかねぇか?直々に技仕込んでやるよ!」
「技って……けん玉の?」
「はぁ?それ以外に何が……あ!そっちの技が知りてぇってか!ようやくお前も一人前の男になったわけだし……よし!とっておきのを伝授してやる!」
「じゃあお言葉に甘えて、久し振りに教えてもらおうかな。でも技はけん玉だけにして?そっちの方は自分でなんとかしたいから。」
「ダハハ!言うじゃねぇか!でもな、畑と同じで先人の知恵を借りるのも手だぞ。おれのかわいい子豚ちゃんの為にも覚えておいて損はねぇはずだ。」
「……なに?」
「“灯台”ができるようになったら教えてやるよ!」
またいつもの下ネタだろうと思ったけど、おれのかわいい子豚さんの為と言われて結局気になってしまったおれは、けん玉おじさんにコツを教わりながら三十分程で“灯台”を決めた。
なんだかんだで子供の頃に戻ったみたいに楽しんだ後、けん玉おじさんはご褒美にと採れたばかりの絹さやをくれた。
そして
「いいか?こういう言葉がある。『三十させ頃、四十し盛り、五十ゴザ掻き、六十ろくに濡れずとも』なんのことだか分かるか?」
「まぁ、なんとなく。」
普通に聞いたら分からなかったかもしれないけど、けん玉おじさんの口から語られたことで、何のことだか大体察しはついた。
「陽太郎。男は引き際が肝心だ。引く時こそ腰を入れろ。押す時はただ押せばいいってもんじゃねぇ。使えるモノは何でも使え。」
「使えるモノ……?」
「お前は体格に恵まれてるからやれば出来るはずだ。ちょいと耳を貸せ。」
けん玉おじさんから教わったとっておきの技は確かに理にかなっていて、悔しいけど今すぐ試したくなる技だった。
「時には恥も意地も捨てて、惚れた女の気持ちに応えてやるのが男ってもんだ。サカモトの男たるもの、女房に物足りないなんて言わせねぇようにしないとな!まぁ、玉の穴にけん先挿すしかできねぇ俺に言われても説得力ねぇか!ダハハ!」
言ってることはしょうもないけど、どんなときでもこうして明るく笑っていられるけん玉おじさんを、おれは心から尊敬している。
「十分すごいよ。」
「……そんな顔するな!どれ!立派になったけん玉見せてみろ!」
「わっ!ちょっと!!」
おれの下半身に伸びてきた手をかわして玄関まで逃げると、けん玉おじさんはずっと変わらないくしゃくしゃの笑顔で手を挙げた。
「いつもありがとうな!また頼む!」
「うん!今度また新しい技……けん玉の技教えて!」
「おう!夜のけん玉の技も、いつでも教えてやるからな!ダハハ!!」
独特の笑い方についつられて笑いながら、けん玉おじさんの家を後にして、その家までの道中、けん玉おじさんが言っていたあの言葉の意味をしっかり考えることにした。
“三十させ頃”
させ頃……そのまま“させる頃”でいいのかな。させる……させる。三十代になったら、誘えばいつでも受け入れてくれるようになるってことか?それは今もそうだけど、おれのかわいい子豚さんは優しいから、もしかしたら断りたくても断れないだけかも……後で聞いてみよう。
“四十し頃”
し頃ってことは、自分からもしたくなるってことだよな?今でもたまにそれとなく誘ってくれることはあるけど、もっと頻繁にそうなるってことかな。おれのかわいい子豚さんが自分からしたくなって……おれのかわいい子豚さんからのお誘いが増える?それも頻繁に……四十代か……まだまだ先だな。
“五十ゴザ掻き”
ゴザを掻くってことは、畳を掻く……畳を掻くってことは……それだけよくなってくれてるってことでいいのかな。でもそれっておれ次第なところもある気がするけど、どうなんだろう。昨日のおれのかわいい子豚さん、敷布とか枕とか、おれの腕なんかも結婚強く握ってたけど……それとはまた違うのかな?うーん……いいのかどうか、次はしっかり聞いてみよう。でも前に「そんなこと聞かないで」って言われたことがあるから、聞くタイミングを間違えないようにしよう。
“六十ろくに濡れずとも”
したいってことかな。愛する人にそう思ってもらえるなんて、男としては冥利に尽きるよな。その頃にはおれも今みたいに動けるかどうかわからないし、動けたとしてもおれのかわいい子豚さんの身体の負担を考えると、やり方を考えた方がいいな。無理のない、それでいてちゃんと愛し合える方法か……今のうちから考えておこう。これに関してはけん玉おじさんの言う通り、素直に助言を得た方がいいかもしれないな。
そんなことを考えているうちに、いつの間にか家に着いていた。
「ただいまー!」
「おかえり!もう!なんで起こしてくれなかったの?!」
聞きたかった台詞を聞けたのが嬉しくて思わず笑うと
「え、なんで笑うの?なんかおかしいとこある?それとも顔に何か付いてる?」
おれのかわいい子豚さんは慌てた様子で自分の身体を見回して、ペタペタと顔を触っておかしなところがないか確認し始めた。
「ごめんなさい。どこもおかしくないです。笑ったのは、やっぱりあなたは可愛いなって思って。」
「それはどうもありがとう。」
「あ、本気にしてませんね?……ね、おれのかわいい子豚さん。」
「?」
「十年後も二十年後も、三十年後も四十年後も期待しててくださいね!」
「? うん!よくわかんないけど期待してる!あ、それ絹さや?てことは……けん玉おじさんに何か言われたんでしょ!」
「今は内緒です。」
「何それ!気になる~!」
「お腹空いたでしょう?朝ご飯、すぐに用意しますね。」
「もうできてるよ。」
「用意してくれたんですか?……ありがとう。」
「その前に、何か忘れてない?」
「……おれのかわいい子豚さん、おはよう。」
「……おはよう、陽太郎。」
どれだけ年を重ねても、こうして想いが静かに溢れて、じわじわと満たされていくような口づけを交わしたい。
こんな朝をあと何十年先も迎えられると思うと、身に余るほど幸せで。
「今日は家の事も全部おれに任せて、ゆっくり休んでください。」
「なんで?全然元気だよ!」
「そうですか?無理なときは、ちゃんと無理って言ってくださいね?その……夜の方も。」
「無理なときなんて無いから、陽太郎も無理じゃないときはいつでも襲ってね!」
こんなふうに無邪気に男心をくすぐってきて、すぐにその気にさせられてしまうからまいってしまう。前みたいになんとか誤魔化して受け流せる日はもう、来ないかもしれない。
「そんなことを言って大丈夫ですか?おれの方こそ無理なときなんて無いですよ?」
「そうなの?」
「はい。十年後も二十年後も、三十年後も四十年後も、この先ずっとです。」
「もしかして……期待しててって、そういうこと?」
「はい。そういうことです。」
はっきりと答えると、おれのかわいい子豚さんは何かを言いかけて、嬉しそうな照れたような、とても可愛らしい顔をした。今すぐにでも襲ってしまいたいけど、さすがに明日の夜まで我慢しよう。けじめのある生活を心掛け、節度を忘れてはいけないと自分を戒めた途端、襟から少しはみ出してしまっている痕に気付いた。
おれのかわいい子豚さんの首に綺麗な手拭いを掛けて隠しながら、もし昼夜問わず彼女に求められたとして節度を保てるのか、早速自信が無くなった。
ー完ー
2/2ページ