一、鬼殺隊雪柱
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ぴりつく空気が、更に濃くなった。
そのほとんどが実弥さんのほうから発せられている。
「お前、分かって言ってんのかァ…?」
射抜くような視線を投げかけられるけれど、こればかりはどうしようもない。柱になる気はないんだ。
「どうしてなのか、聞いてもいいかい?」
お館様は柔らかい口調で私に聞いてきた。
まるで、全て分かっているかのように。
「私は…人間としてもまだまだ未熟です。人に寄り添う事、自分と向き合う事、そんな事を出来る自信がありません。みんなを…家族を奪われたあの日から、私は何も成長出来てない」
ふぅ、と息を吐いて、気持ちを落ち着ける。
「地位が上がれば上がるほど、守りたいもの、守るべきもの、大切なものも増えてしまう。それを守りきれなかった時、私はきっと…」
そこまで言って、私は下を向いた。握った手の力を強くして、続きを飲み込んだ。
「こんにちは!あまね様、いらっしゃいますか!」
え…?
門の方から聞こえるこの声は、まさか。
ばっとお館様の顔を見ると、くすくすと笑って嬉しそうに私を見下ろしていた。
「たまにね、あぁやって来てくれるんだ。水菓子や甘味なんかを土産に。あまね、こちらに連れてきてくれるかい」
「かしこまりました」
お館様の後ろについていたあまね様は、立ち上がると奥へ行ってしまった。
そして、幾分も待たないうちに、あの人を連れてきた。
「あれ…もしかして柱合会議だった?」
私の師範の、鶴喰みふゆ。
なんというか、すごく強くて優しい人なんだけど、どこか抜けている所があって心配になる。
「久しぶりだね、みふゆ」
「まぁお館様、ご壮健のようで何よりです」
お館様のやや後ろに正座して頭を下げた師範は、すぐ頭を上げて私を見た。
軽く手を振ってくるけど、流石にこの場で手を振り返す勇気はなく、曖昧に首を傾げるしか出来ない。
その場の雰囲気を感じたのか、師範は考えるように目を細めて「なるほどねぇ…」と呟いた。
「アキ、断っちゃったのねぇ」
「…はい」
失望させてしまっただろうか。強く育ててもらったのに、上に行かない事を叱られるだろうか。
「やっぱり私の弟子ね、私も最初は断ったの」
ねぇ、お館様。と、懐かしそうに彼女は笑う。
片腕が思うようにいかなくてもあんなに強い師範が、柱になるのを断っていたなんて。
「怖かったのよね、何もかもが。それでも柱になったのは、強くなりたかったからよ」
お館様と同じような、暖かい目を私に向ける師範の表情を見て、だんだんと落ち着いてきた。
守るものがあるなら、強くなるしかない。逃げずに戦うしかない。
「…お館様、まだ未熟な私ですが、それでもよろしいんですか?」
「他でもない、アキに頼みたいんだ」
信用されている。
信頼までされている。
それなら、もう迷う事はない。
「…先程は失礼致しました。そのお話、謹んでお受け致します」
深く頭を下げて、私は柱になる事を受け入れた。
そのほとんどが実弥さんのほうから発せられている。
「お前、分かって言ってんのかァ…?」
射抜くような視線を投げかけられるけれど、こればかりはどうしようもない。柱になる気はないんだ。
「どうしてなのか、聞いてもいいかい?」
お館様は柔らかい口調で私に聞いてきた。
まるで、全て分かっているかのように。
「私は…人間としてもまだまだ未熟です。人に寄り添う事、自分と向き合う事、そんな事を出来る自信がありません。みんなを…家族を奪われたあの日から、私は何も成長出来てない」
ふぅ、と息を吐いて、気持ちを落ち着ける。
「地位が上がれば上がるほど、守りたいもの、守るべきもの、大切なものも増えてしまう。それを守りきれなかった時、私はきっと…」
そこまで言って、私は下を向いた。握った手の力を強くして、続きを飲み込んだ。
「こんにちは!あまね様、いらっしゃいますか!」
え…?
門の方から聞こえるこの声は、まさか。
ばっとお館様の顔を見ると、くすくすと笑って嬉しそうに私を見下ろしていた。
「たまにね、あぁやって来てくれるんだ。水菓子や甘味なんかを土産に。あまね、こちらに連れてきてくれるかい」
「かしこまりました」
お館様の後ろについていたあまね様は、立ち上がると奥へ行ってしまった。
そして、幾分も待たないうちに、あの人を連れてきた。
「あれ…もしかして柱合会議だった?」
私の師範の、鶴喰みふゆ。
なんというか、すごく強くて優しい人なんだけど、どこか抜けている所があって心配になる。
「久しぶりだね、みふゆ」
「まぁお館様、ご壮健のようで何よりです」
お館様のやや後ろに正座して頭を下げた師範は、すぐ頭を上げて私を見た。
軽く手を振ってくるけど、流石にこの場で手を振り返す勇気はなく、曖昧に首を傾げるしか出来ない。
その場の雰囲気を感じたのか、師範は考えるように目を細めて「なるほどねぇ…」と呟いた。
「アキ、断っちゃったのねぇ」
「…はい」
失望させてしまっただろうか。強く育ててもらったのに、上に行かない事を叱られるだろうか。
「やっぱり私の弟子ね、私も最初は断ったの」
ねぇ、お館様。と、懐かしそうに彼女は笑う。
片腕が思うようにいかなくてもあんなに強い師範が、柱になるのを断っていたなんて。
「怖かったのよね、何もかもが。それでも柱になったのは、強くなりたかったからよ」
お館様と同じような、暖かい目を私に向ける師範の表情を見て、だんだんと落ち着いてきた。
守るものがあるなら、強くなるしかない。逃げずに戦うしかない。
「…お館様、まだ未熟な私ですが、それでもよろしいんですか?」
「他でもない、アキに頼みたいんだ」
信用されている。
信頼までされている。
それなら、もう迷う事はない。
「…先程は失礼致しました。そのお話、謹んでお受け致します」
深く頭を下げて、私は柱になる事を受け入れた。