第八章 守る、守られる
名前変換
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「はぁ…?何だよお前…」
突然現れた私に戸惑いながらも、隊士は態度を変えない。
こんなに、怒りと悲しみを感じたのは初めてかもしれない。
自分の初めての感覚に、頭痛を覚えるほどだ。
「蝶屋敷のみなさんは決して、楽だから、守ってもらえるからここにいるわけじゃありません」
「お、お前もその内の1人だろうが!」
「そんな事よりも、先程の発言は度が過ぎていると自分でお思いになりませんか?」
はぁ!?と更に怒りを見せられるが、私は引かない。
後ろから慌てたアオイさんの声が聞こえるが、全て聞いていないふりをした。
「そうやって馬鹿にして楽しんでるのか!」
「馬鹿にしていません、思った事を口にしたまでです」
「っこの…!!」
振り上げられた拳を、私は避けなかった。
右の頬がじんじんと痛む。血の味がする、口の中が切れたんだろうな。
…でも、大丈夫。耐えられる。
殴られて尚、自分を見つめる私にはっとしたのか、隊士は気まずそうに俯いた。
「落ち着かれましたか?」
「………」
「一応断っておきますが、私は手伝っているだけの一般人です。父は鬼殺隊員ですけれど」
ちら、とアオイさんを振り返ると、泣きそうな顔で私の服を掴んでいた。
「アオイさんのせいじゃないですよ、私が避けなかっただけです」
笑いながら言ったけれど、軽い脳震盪を起こしているのか視界が少しぐらつく。
大丈夫、とアオイさんの手を解き、また隊士と向き合った。
「…私はあなたが、羨ましい」
「え…?」
傷跡だらけの手を両手で包むように握り、すっと目を細めた。
私から飛び出した言葉がどういう事なのか分からない、というような顔をしている。
「あなたは戦える、守る力がある。私には、私を拾ってくれた家族しかない。戦いたかったし、守れるなら命だって惜しくないんです」
喋りながら、涙が滲んでくる。痛み、怒り、悲しさに諦めがぐちゃぐちゃに混ざってくらくらする。
「でも、思うだけじゃ戦えなかった。迷惑をかけてばかりで…いっそあの時に死んでしまっていたら、なんて考える日もあります。それでも生きるのは、あなたたちや大事な人たちが命を懸けて戦って、生きて戻ってきてくれると信じているからです…生きていてくれて、ありがとう」
私が話し終わると、その隊士はぼろぼろと涙をこぼし始めた。
…落ち着いてくれて、良かった。
「新しいお薬、持ってきてもらいますね。同室のみなさん、騒がしくして申し訳ありません」
部屋を出ようと振り返るが、アオイさんの姿はない。もしかしたら、しのぶさんを呼んできているのかも。
ぐらぐらと揺れる視界に何とか耐え、廊下に出て扉を締めた。
なほちゃん、すみちゃん、きよちゃんの3人が目に涙を溜めて私に近寄ってくる。
「えっと…あの人に、もう一回お薬を持っていってくれる?もう飲んでくれると思うから。それと…」
廊下の奥に、小走りで近付くアオイさんとしのぶさんが見えた。
けれど、そこで私の視界は真っ暗になり、力が入らず廊下に倒れてしまう。
名前を呼ぶ声を聞きながら、私は意識を失ってしまった。
突然現れた私に戸惑いながらも、隊士は態度を変えない。
こんなに、怒りと悲しみを感じたのは初めてかもしれない。
自分の初めての感覚に、頭痛を覚えるほどだ。
「蝶屋敷のみなさんは決して、楽だから、守ってもらえるからここにいるわけじゃありません」
「お、お前もその内の1人だろうが!」
「そんな事よりも、先程の発言は度が過ぎていると自分でお思いになりませんか?」
はぁ!?と更に怒りを見せられるが、私は引かない。
後ろから慌てたアオイさんの声が聞こえるが、全て聞いていないふりをした。
「そうやって馬鹿にして楽しんでるのか!」
「馬鹿にしていません、思った事を口にしたまでです」
「っこの…!!」
振り上げられた拳を、私は避けなかった。
右の頬がじんじんと痛む。血の味がする、口の中が切れたんだろうな。
…でも、大丈夫。耐えられる。
殴られて尚、自分を見つめる私にはっとしたのか、隊士は気まずそうに俯いた。
「落ち着かれましたか?」
「………」
「一応断っておきますが、私は手伝っているだけの一般人です。父は鬼殺隊員ですけれど」
ちら、とアオイさんを振り返ると、泣きそうな顔で私の服を掴んでいた。
「アオイさんのせいじゃないですよ、私が避けなかっただけです」
笑いながら言ったけれど、軽い脳震盪を起こしているのか視界が少しぐらつく。
大丈夫、とアオイさんの手を解き、また隊士と向き合った。
「…私はあなたが、羨ましい」
「え…?」
傷跡だらけの手を両手で包むように握り、すっと目を細めた。
私から飛び出した言葉がどういう事なのか分からない、というような顔をしている。
「あなたは戦える、守る力がある。私には、私を拾ってくれた家族しかない。戦いたかったし、守れるなら命だって惜しくないんです」
喋りながら、涙が滲んでくる。痛み、怒り、悲しさに諦めがぐちゃぐちゃに混ざってくらくらする。
「でも、思うだけじゃ戦えなかった。迷惑をかけてばかりで…いっそあの時に死んでしまっていたら、なんて考える日もあります。それでも生きるのは、あなたたちや大事な人たちが命を懸けて戦って、生きて戻ってきてくれると信じているからです…生きていてくれて、ありがとう」
私が話し終わると、その隊士はぼろぼろと涙をこぼし始めた。
…落ち着いてくれて、良かった。
「新しいお薬、持ってきてもらいますね。同室のみなさん、騒がしくして申し訳ありません」
部屋を出ようと振り返るが、アオイさんの姿はない。もしかしたら、しのぶさんを呼んできているのかも。
ぐらぐらと揺れる視界に何とか耐え、廊下に出て扉を締めた。
なほちゃん、すみちゃん、きよちゃんの3人が目に涙を溜めて私に近寄ってくる。
「えっと…あの人に、もう一回お薬を持っていってくれる?もう飲んでくれると思うから。それと…」
廊下の奥に、小走りで近付くアオイさんとしのぶさんが見えた。
けれど、そこで私の視界は真っ暗になり、力が入らず廊下に倒れてしまう。
名前を呼ぶ声を聞きながら、私は意識を失ってしまった。