第八章 守る、守られる
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…ご飯が喉を通らない。
一昨日お父さんが来て、お母さんたちの事を考えていたら、いつの間にか朝が来ていた。
食べなきゃと思っていても、箸が止まる。1人の食事も夜も、慣れたはずなのに。2口も食べられたら精一杯。
「…今日、蝶屋敷に行く日だ」
アオイさんの作ったご飯なら食べられるかも。
重い腰を上げて、私は支度を始めた。
「こんにちはー」
控えめに戸を開けて、いつものように誰か来るのを待っていた。間もなく、アオイさんがやってくる。
どことなく暗いその顔に疑問を感じた。
「何かありましたか…?」
「…先日、宇髄さんがいらっしゃいました」
え…と思わず声が漏れたけど、アオイさんが辛そうに手を握りしめるから、それどころではなかった。
「潜入捜査に連れて行くと…そう言って私を抱えましたが、結局は私の代わりに炭治郎さんたち3人が…」
アオイさんが隊服を着ながらも任務に行けない理由を、私は知っている。
お父さん、私に会った後すぐ蝶屋敷に来たんだ…。
「ごめんなさい、父が…アオイさんの傷を抉るような事をしてしまって…」
私は頭を下げて、謝るしか出来ない。
きっとアオイさんは「自分が悪い」と思ってる。
「そんな、謝らないでください。私が…」
「いえ、少なくとも周りを巻き込んではいけない話だったんです、アオイさんは悪くない」
続きの言葉を遮るように、頭を下げたまま言葉を繋ぐ。
いつも考えてしまう。自分に力があれば、どれだけ良かったか。
「顔を上げなさい、アキ」
「…しのぶさん」
しのぶさんに呼ばれ、やっと頭を上げる。
いつもの笑顔、だけど、たぶん怒ってる。
「アオイのせいでも、アキのせいでもありません。待つだけが辛いのは分かりますが、あまり考えすぎるのはやめなさい」
分かりましたね?と、アオイさんと私を交互に見てまた微笑む。
はい、と返事をした私たちを見て、微笑んだままふぅと溜息を吐いていた。
「全く、私の妹たちは手がかかりますね」
さあ、行きましょう。
後ろを向いて歩き始めたその背中を見つめた。
妹か…もしかして、あの時しのぶさんが自分で言った言葉を覚えててくれた?
「…しのぶさん!」
「なんですか?」
「私、ここに来る日だけでもお手伝いがしたいです!応急処置ぐらいなら出来ます、やらせてください!」
うーん、と考える素振りを見せたしのぶさんは、すぐに笑顔を私に向けた。
「そうですねぇ、人手もあれば助かりますし、来た日には手伝って頂きましょうか」
「あ、ありがとうございます!」
「まず、ちゃんとご飯を食べる事、寝る事は忘れずに」
私と目を合わせて、もう一度微笑んで奥に行ってしまった。全部分かってて、許してくれたんだろうな。
…やると言ったからには、しっかりやらないと。
「アオイさん、お願いがあるんですが」
「私に出来る事なら」
その後、家に帰る時間のぎりぎりまでを蝶屋敷で過ごした。
アオイさんの顔色は、さっきよりも明るくなっている。私も、しのぶさんの一言でなんとなく気持ちが軽くなった気がしていた。
一昨日お父さんが来て、お母さんたちの事を考えていたら、いつの間にか朝が来ていた。
食べなきゃと思っていても、箸が止まる。1人の食事も夜も、慣れたはずなのに。2口も食べられたら精一杯。
「…今日、蝶屋敷に行く日だ」
アオイさんの作ったご飯なら食べられるかも。
重い腰を上げて、私は支度を始めた。
「こんにちはー」
控えめに戸を開けて、いつものように誰か来るのを待っていた。間もなく、アオイさんがやってくる。
どことなく暗いその顔に疑問を感じた。
「何かありましたか…?」
「…先日、宇髄さんがいらっしゃいました」
え…と思わず声が漏れたけど、アオイさんが辛そうに手を握りしめるから、それどころではなかった。
「潜入捜査に連れて行くと…そう言って私を抱えましたが、結局は私の代わりに炭治郎さんたち3人が…」
アオイさんが隊服を着ながらも任務に行けない理由を、私は知っている。
お父さん、私に会った後すぐ蝶屋敷に来たんだ…。
「ごめんなさい、父が…アオイさんの傷を抉るような事をしてしまって…」
私は頭を下げて、謝るしか出来ない。
きっとアオイさんは「自分が悪い」と思ってる。
「そんな、謝らないでください。私が…」
「いえ、少なくとも周りを巻き込んではいけない話だったんです、アオイさんは悪くない」
続きの言葉を遮るように、頭を下げたまま言葉を繋ぐ。
いつも考えてしまう。自分に力があれば、どれだけ良かったか。
「顔を上げなさい、アキ」
「…しのぶさん」
しのぶさんに呼ばれ、やっと頭を上げる。
いつもの笑顔、だけど、たぶん怒ってる。
「アオイのせいでも、アキのせいでもありません。待つだけが辛いのは分かりますが、あまり考えすぎるのはやめなさい」
分かりましたね?と、アオイさんと私を交互に見てまた微笑む。
はい、と返事をした私たちを見て、微笑んだままふぅと溜息を吐いていた。
「全く、私の妹たちは手がかかりますね」
さあ、行きましょう。
後ろを向いて歩き始めたその背中を見つめた。
妹か…もしかして、あの時しのぶさんが自分で言った言葉を覚えててくれた?
「…しのぶさん!」
「なんですか?」
「私、ここに来る日だけでもお手伝いがしたいです!応急処置ぐらいなら出来ます、やらせてください!」
うーん、と考える素振りを見せたしのぶさんは、すぐに笑顔を私に向けた。
「そうですねぇ、人手もあれば助かりますし、来た日には手伝って頂きましょうか」
「あ、ありがとうございます!」
「まず、ちゃんとご飯を食べる事、寝る事は忘れずに」
私と目を合わせて、もう一度微笑んで奥に行ってしまった。全部分かってて、許してくれたんだろうな。
…やると言ったからには、しっかりやらないと。
「アオイさん、お願いがあるんですが」
「私に出来る事なら」
その後、家に帰る時間のぎりぎりまでを蝶屋敷で過ごした。
アオイさんの顔色は、さっきよりも明るくなっている。私も、しのぶさんの一言でなんとなく気持ちが軽くなった気がしていた。