おかえりなさい、と言ったアキの顔は、どう見ても泣くのを我慢しているようで。

俺の右手をそっと握って、目を伏せる。

「良かった、みんなが無事で…」

本当に良かった…と小さい声で続けるアキを見て、寂しい思いをさせてしまったと少しばかり後悔した。

「これからお茶にしようと思ってたの、みんなのも淹れるね」

くるっと後ろを向いて、湯呑みか何かを取りに行こうとするアキの腕を引く。
体を強張らせて立ち止まった。

「なに我慢してんだ、もっと派手に感情表現していいんだぜ」

「…別に、我慢なんか」

「髪、切ったんだな。願掛けらしいって胡蝶から聞いた」

「………」

「前より腕も細いな…ちゃんと食ってたか？」

振り向いたアキは、今にも溢れそうなほど涙をためて俺を睨んでいた。
見たことない顔だ、と考えていた刹那、ぼろぼろと涙が溢れ始める。あぁやっぱり…。

「すごく、怖かった、本当に…このまま1人になるのかもって、不安で、でもちゃんとしなきゃって」

俺を睨んでいた目はだんだんと伏せられ、その間も涙は止まらない。枯れてしまうんじゃないかと思うほどだ。

「お母さんたち、だって…私、もう会えないのかなって考えちゃって…」

「アキちゃん…」

「ちゃんと食べてって言われても…1人のご飯なんか、美味しくない…っ」

嗚咽をもらし始めたアキに、横から須磨が抱き着く。
一緒になって泣いている様子は子供のようだと、ふっと笑いが溢れる。

それに対して咎めるようなまきをの声、アキの頭を撫でる雛鶴。
久しぶりに家族全員が揃った光景に、とても安心した。

「アキ、長く1人にさせて悪かった」

俺のほうを向いた目からは、未だに涙が出続けている。それを指で拭って、そのまま頭を撫でた。
そうすると、涙はぴたっと止まった。

「俺が撫でたら泣き止むよなぁ」

思えば最初の頃からそうだった気がする。
可愛い、可愛いなぁ。

「ただいま。ようやくみんなで過ごせるぞ」

「…うん、おかえり」

須磨の事を抱き締め返して、3人にも「おかえり」と言うアキは、さっきよりも明るい表情をしていた。