少し後の柱合会議に参加させてもらって、短刀をお館様にお返しした。
おそらくもう使う事がないと判断したから。

「また顔を見せてくれたら嬉しいな」

随分可愛がられてるな、と自惚れてしまう。
周りは優しい大人ばかりだと安心して生活していた。


別の日、1人でおつかいを頼まれてやる気に満ち溢れていた私は、買った物を籠に入れて帰る所だった。

「お嬢ちゃん、おつかいかい？」

知らない男の人に話しかけられて、思わず足を止める。
誰だろう、何か用なのかな。

「はい！おつかいです！」

「そうか、偉いなぁ」

「いえ！私のお仕事ですから！」

それじゃあ、と立ち去ろうとすると、手首を掴まれて引き止められた。
ぐっと引っ張られて転びそうになるけど、最近少しだけ鍛えてもらっているからか何とか持ち堪える事ができた。

「お兄さんと少し遊んでいかないかい？悪いようにはしないよ、お小遣いもあげる」

どう？と言うその人は、人好きしそうな笑顔を私に向けている。

「お小遣いはもう使えきれないぐらい貰ってるので…それにおつかいですし、遊べません」

「そう言わずに、僕顔もまあまあだし後悔はしないと思うからさ」

「…？その基準でいくなら、私のお父さんより顔が良くて優しくて強い人じゃないと後悔しちゃいます！ごめんなさい！」

男の人は私の手首を握る力を強くした。さっきまでの笑顔は嘘のように、ものすごい怒っている。

「いいから来いって言ってるんだよ！」

再びぐっと手を引かれる。
…が、私の体は傾くことなく、誰かに支えられていた。

「…よォ、俺の妹に何か用かァ？」

空気がみしみしと軋む音がする。
それぐらいの殺気を纏った不死川さんが、相手の男の人の腕を折れそうなほど強く握っていた。

「いっ…！何だよ1人じゃねぇのかよ！」

「…死にたくなかったら今すぐ失せろォ」

ぱっと手を離すと、男の人は舌打ちをしてどこかへ行ってしまった。
ほっと一息つくと、不死川さんは私の頭をこつんと優しく叩いた。

「なァにやってんだァ、俺じゃなくて宇髄だったらあいつ殺されてたぞォ」

「え、なんかまずい状況でした…？」

はァ？と不死川さんが「信じられん」という顔で私を見る。何がだめだったのか分からない…。

「でも、妹ってなんかいいですね、本当にお兄ちゃんがいたら良かったなぁ」


その後、家まで送られてお父さんに大目玉を食らいました。
そういう奴は次から急所を狙え、という教えをしっかり守っていこうと思います。