…あったかい。
目を開けたくない…でも起きないと…。

ゆっくり目を開けると、宇髄さんの…お父さん、の顔を下から見ている、という異様な状態だった。

でも、寝起きでまだ頭が働かない私は(まあ、そういう事もあるか…)と深く考えず、ぼーっと口元を見ていた。
視線が私の頭がある反対側にいってるな、と気付いて目だけ向けると、どうやら何かの本を読んでいるようだった。

「…おはよう、お父さん」

「おぉ、起きたか」

本を閉じて「おはよう」と言いながら、私の頭を撫でてくれる。
心地よくて、すぐに離れていった手を名残惜しいと思う。

「しかしよく寝たな、最近眠れてなかったのか？」

「うん…」

「まあ何日もあの状態ならそうか…」

何だか悔しそうな顔をしたお父さんに、申し訳ない気持ちが湧いてくる。

「心配かけちゃってごめんなさい…それに、夜からずっとこうしてたんだよね…？」

ここに来てから、迷惑をかけてばかりだな…。
泣くだけ泣いて、その後は寝て、本当にただの子供でしかない。

「気にすんなって。それよりも、だ！胡蝶から処方された薬があっても、傷を作るような真似はするんじゃねぇぞ」

私の左腕を掴んで、ちょっとだけ怒ったように、諭すように言われる。
何日も声を我慢するために握った腕には、爪の痕が残っている。

「…うん、気を付ける」

「よし、それでいい。もうすぐ昼餉の時間だ、食べられるか？」

「えぇ…そんなに寝てたんだ…食べる…」

思ったより寝すぎで自分に驚いたけど、食べると答えてすぐ、控えめにお腹が鳴った。
お父さんの笑い声が重なって聞こえて、なんだか恥ずかしい。

「3人も心配してたからな、たくさん食べて安心させてやれよ」

「…うん」

心配かけちゃってるから、謝ろう。

お父さんは私を立たせて、行ってこいと背中を押した。