動き出す
第9話 信じる思いの強さ
ベルセルクさんのフェデーレのヴァナルガンドに4体のディアボロを見つけてもらい、案内だけしてもらうことになり、私は武器化してハイデンと共に森を駆け抜けた。
「《ディアボロは3体が密集して徘徊している。残る1体は少し山の奥だな。》」
「分かりました。」
「(ディアボロ3体同時に相手をするのは初めてですね…!)」
ヴァナルガンドは武器化して大きな狼になったので、移動だけはというベルセルクのお願いでハイデンを乗せてディアボロの元まで運んでもらっていた。背中に乗っているためヴァナルガンドと念話のやりとりをすることができていた。私は武器化してハイデンの手に握られているので、もれなく念話に参加していた。
――――
「《それでは、我は戦闘に参加するなとオーディンから言われているからな、ここまでだ。山の奥の1体の元まではまた連れて行ってやるから、近くに待機していると思ってくれ。…………健闘を祈る。》」
「ここまでありがとうございました、ヴァナルガンドさん。全力を尽くしてきます。」
「(頑張ります!)」
森の中で背中から降りるように言われると、既に視認できる距離にディアボロ3体がいるので、私たちは森の木々に隠れて、ハイデンがヴァナルガンドにお礼を言うと彼は小さく頷いてから森の中に紛れていった。
「さてと…。」
ヴァナルガンドさんが行ったのを確認すると、ハイデンは木々の間から視認できる中でも1番近いディアボロに向かって走り出した。
「ギャウ!?」
いきなり森の木々の中からレイピアを持ったハイデンが現れたことで、ディアボロが驚愕の声を上げた。
「遅い。」
1体目のディアボロは、私とハイデンが初めて出会った時に討伐したクマ型のディアボロと同じ形をしていた。が、前足の鋭い爪が発達しており、アルテミス様の孤児院に現れたディアボロとはまた違う進化をした個体のようだった。
しかし、あの時のディアボロに比べてこのクマ型ディアボロは動きが遅く、初手でハイデンに気付くのが遅くなったのもあり、クマ型ディアボロの顔を覆う白い仮面の眉間にレイピアの剣先が突き刺さった。
ハイデンは私と契約したことで輝石の恩恵として、既に持っていた身体能力をさらに向上させ、異次元の速さのスピードとそのスピードによってもたらされるパワーを手に入れた。つまり。クマ型ディアボロの顔を覆う白い仮面に突き刺さったレイピアは楽々クマ型ディアボロの頭をも貫き、吹き飛ばした。
「(前よりも、威力が上がってる…!)」
朱朱様と一緒に戦ったディアボロの時は、白の仮面を壊すのも精一杯で、頭も一緒に吹き飛ばすことが出来たのは初めてだった。
頭を失くしてフラフラとした胴体は背中から倒れ、砂となった。
「まずは1体!」
ハイデンがそう叫ぶと、直ぐに次のディアボロを視界に捉えた。そして、動きを止めていると、攻撃の的になってしまうため、ハイデンは木々の間を縫うように走り、ディアボロとの距離を少しずつ詰めて行った。残るディアボロはガーゴイル型2体だった。翼を持ち、ゴブリンのように醜い顔つきの恐ろしい怪物のディアボロはその翼を使って空を自在に飛び回っていた。2体もいるとなると、1体に集中することができず、集中攻撃を受けてしまう可能性も出てくる。ヴァナルガンドさんの索敵でディアボロが3体も集結している話を聞いた時点で、1番弱そうなやつがいた場合はほぼ奇襲作戦で、速攻で1体を片付ける作戦で行こうと決めていた。おかげで1体は直ぐに倒すことができたが、ガーゴイル型が2体というのは予想外だった。
私のレイピアは空を飛ぶガーゴイル型のディアボロには地上からでは攻撃の術が無い。
しかし、そんな状況を打破していかなければ、オーディン様からの試練にはクリアできないし、今後の戦闘の課題にもなる。
「(森の中…密集した木…。ハイデン、あなたの身体能力と輝石の恩恵でできることがあるかもしれません!)」
「ガーゴイル型はその翼をまずどうにかするのが常套手段です。それをクリアできるのですか?」
「(はい!)」
「…分かりました。あなたを信じます。」
ハイデンが一瞬の間の後、頷いてくれたので、私は周りの環境を使って空中にいるガーゴイル型ディアボロと戦う作戦をハイデンに話した。
話している間もガーゴイル型ディアボロはハイデンに向かって何やら赤黒いエネルギー弾を発射して、攻撃してきていた。あれを食らったらダメなやつだと直感で悟った。
ハイデンが森の木々を上手く使って攻撃を避けて一定の距離をとっているため、ディアボロたちは次第にイライラしだして、力を溜めてからエネルギー弾を放った。先程までと同じようなものだと思っていたが…。
「(木々を避けて追ってくるタイプになりましたよ!?)」
「っち…厄介ですね。でも、ゼルチアーノの作戦は試す価値はありそうですね。やってみます!」
自動追尾のエネルギー弾を気にしながら、ハイデンは私の作戦通り、密集した森の木々を利用して、木に向かって走っていき、根本の方から木を蹴って少し上へジャンプし、直ぐ近くの木を蹴って…というふうにどんどん上へとジャンプしていった。これはハイデンの元の身体能力に私の輝石の恩恵によって上乗せされた身体能力の向上とスピードによってできる芸当だ。
「さぁ、あなたたちと同じ高さになりましたね。」
「グルルッ…!」
2体のガーゴイル型ディアボロもまさか人間が空中戦に張り合ってくるなど思ってなかったのか、悔しそうに歯軋りをした。その一瞬も逃すことなく、ハイデンは動きを止めることなく、更に上に伸びる木々の間を素早いジャンプで移動し、1体のガーゴイル型ディアボロの翼の左側に向かってレイピアを突き刺して、そのまま、馬乗りになるような形で地面に落とした。ディアボロはハイデンが木々を使って移動して予測不能な軌道で繰り出してくる攻撃に対処することができずにそのまま背中から森の地面に落ちた。
もう1体のガーゴイル型ディアボロがエネルギー弾を放とうと両手を翳して構えたのを視界の端で捉えると、翼に突き刺さったレイピアを直ぐに抜き、そのまま垂直に上に高くジャンプした。
翼に攻撃したディアボロに馬乗りになっていたことで、もう片方のディアボロのエネルギー弾の照準はディアボロに馬乗りになっているハイデンだったわけで…、ハイデンがジャンプして避けたということは…?
「ギャギャギャッ!!!!!」
片方のディアボロが放った赤黒いエネルギー弾はハイデンが避けた先、つまりは地面に落ちていたディアボロに当たった。
エネルギー弾を直撃で食らってしまったディアボロは、電撃を受けたみたいにビリビリと体が痙攣し、焦げたような匂いと少量の煙を上げていた。
「(うわ…、絶対あのエネルギー弾には当たっちゃダメじゃないですか!)」
「でも、味方の攻撃では倒すことはできてないですね…。やっぱり私たちがフェデーレを使って頭を落とさないと。」
少し体が焦げてしまったディアボロは体力がだいぶ削れてしまったようで、ふらふらと立ち上がった。が、翼には先程ハイデンがレイピアを突き刺して開けた穴が空いているその痛みもあってか、飛ぶことができないようだった。
「まだガーゴイル型には白い仮面が付いたままです。体力が1番削れている奴から先に片付けましょう。」
「(はい!)」
上空にいるディアボロも目の前の地上にいるディアボロも両手を翳してエネルギー弾の発射準備に入ったので、ハイデンはサッと身を翻して森の木々の影に隠れた。その瞬間に2体のディアボロから赤黒いエネルギー弾が次々と放たれ、木に隠れていなければ蜂の巣状態になるほどの連射が止まらなかった。
「2体同時に連続で撃つことで近づけさせないつもりですね…。しかも力を溜めて放てば追尾型のエネルギー弾も発射できる…。2体いるというのが厄介ですね。」
「(……。)」
「攻撃が止むまで隠れていても持久戦に持ち込まれては不利になりやすいですし…、なんとかして翼に穴を開けた方を倒さなければ…。」
隠れている木から少しだけ顔を出して様子を伺ってこの状況の打開策を考えているハイデンに対し、私は考え込んでいた。
「(あの、ハイデン。ディアボロたちが放ってくるエネルギー弾って、そもそもどんな力で構成されているんですか?)」
「え…?えっ、と…、恐らくですが、人間たちや文明から吸い取った生命エネルギーを暗転させたもの…、でしょうか?」
「(それなら…、人間である私たちフェデーレが持っている力は生命エネルギーの塊…ということになりませんか?フェデーレの武器だけがディアボロを倒すことのできる唯一の武器というのにも頷けます。なら、この力はディアボロのエネルギー弾にも対処できるはずです!私であのエネルギー弾を弾く…とか、切ってみましょうよ!)」
私からの質問に最初ハイデンは困惑した表情で答えていたが、私の質問の意図に気付くと、ハッとして顎に手を当てて考え込んだ。数秒考えた後、最後の私を使って試すことには一瞬心配そうな顔をしたが、短いため息を吐くと、頷いてくれた。
「分かりました。このエネルギー弾の猛攻をどうにかして手傷の負ったディアボロに近付くにはその方法を試すしかなさそうですね…。ゼルチアーノ、"絶対に勝つ"という強い意思を持って、最強硬度を保ってください。カウント3で正面から突撃します。」
「(分かりました!)」
「3……2……1……!」
ハイデンの3カウントの間に言われた通りにこのディアボロに負けない、絶対に倒す!と強く思ってから、何物も貫き通すという最強硬度の意識を持った瞬間、ハイデンは木々の影から飛び出して走り出した。
再び現れたハイデンに、ディアボロ2体は直ぐに気がついた。両手を翳して溜める様子もなく、エネルギー弾を乱発してきた。その様子にハイデンは臆することなく、逆に走るスピードを速めて、翼を負傷しているディアボロに向かって距離を詰めた。
そして――
「ハッ!!!」
「グギャッ!!??」
乱発してくるディアボロのエネルギー弾をハイデンはレイピアを使って次々と真っ二つに切っては払い落としていった。まさか先ほどまで避けていて自分たちに近付けもしなかった奴らがエネルギー弾を切り落としていく姿にディアボロは動揺を隠せずにいた。翼を負傷して地上から攻撃をしているディアボロは動揺が攻撃の手を緩めてしまい、その一瞬の隙にハイデンは輝石の恩恵で右足を強く踏み込むと、素早くディアボロの前まで移動して至近距離からガーゴイル型ディアボロの顔を覆う、白の仮面に向かって鋭い突きを繰り出した。
〈ガギィィン!!!〉
一瞬バチリと火花が飛んでいたが、ハイデンのスピードとパワーが増している突き技はなんとかガーゴイル型のディアボロの白い仮面を破壊した。だが、仮面が砕け落ちただけで、ディアボロの頭は無事だった。
クマ型ディアボロの時は頭と仮面を同時に吹っ飛ばすことも出来たし、ハイデンの蹴りだけでも白い仮面は破壊できてた。
「(もしかして…)」
「ディアボロの姿によって白い仮面の耐久力が違う…んでしょうか?」
「(ディアボロの姿によって白い仮面の耐久力が違う?)」
私とハイデンは同じ結論に辿り着いたらしく、同時に口に出していた。
「(ハイデンもそう思いましたか?)」
「ええ。この推測なら先程のクマ型ディアボロの仮面がいとも容易く壊せたのも頷けます。」
ハイデンも知らなかったディアボロの白い仮面の耐久力がディアボロの強さに比例していること。小さな発見かもしれないが、私たちにとっては戦いに何か役立てることができる気がしていた。
白い仮面が無くなればディアボロの力はガクッと下がる。飛べもしないし弱点の頭を守るものも無くなったディアボロはあっという間に倒された。
「さて…、ここに残るのは1体だけになりましたね。」
「(戦い方は分かりましたし、1体だけなら…、サクッと終わらせましょう!)」
「ギャ…ギャウッ!!!!!!」
ハイデンの不敵な笑みにディアボロは一瞬怯んだが、直ぐに吠えてこちらに突っ込んできたので、ハイデンはレイピアを使って、まずは翼を使えなくするためにわざと体を少しずらして片方の翼を狙って穴を開けるように攻撃をした。
ディアボロはくるっと旋回して再び飛ぼうとしたが、ハイデンの攻撃により、翼をうまく使うことができず、そのまま地面にズザザァーッと滑り込んでしまった。
その隙をハイデンが逃すはずもなく、一瞬で距離を詰めると、地面に倒れ込んでいるディアボロの白い仮面に向かってレイピアを振り下ろした。
が、その瞬間、ディアボロは最後の抵抗だとばかりに、レイピアの先が顔の目の前まで迫ってくる間にエネルギー弾を挟み、なんとかレイピアの先が仮面に届くのを阻止していた。
私のレイピアの先とエネルギー弾がばちばちと火花を散らしているが、私はその瞬間から"貫き通す!"という意思を強く持った。すると、ググッとレイピアが次第にエネルギー弾にズブズブと突き刺さっていった。
「ギャギャァッ!?」
この苦肉の策でもダメかとディアボロは驚いていたが、あれだけの生命エネルギーを暗転させた、"負のエネルギー"のエネルギー弾を使ったということは、それだけ生命エネルギーを奪い取って蓄積していたということ。人々を襲い、文明を壊したディアボロだと自ら暴露した。
そんなやつはさっさとこの世界からおさらばするべきだ。
「(壊れろ!!!!)」
私が最後にそう念じると、ハイデンがレイピアにグッと力を入れて、そのままレイピアの先はエネルギー弾を貫き、ディアボロの白い仮面の中心に突き刺さった。そして、その勢いのままハイデンが力を込めて地面にまでレイピアを突き刺したことで、ディアボロの白い仮面と頭はレイピアが貫通した。
「ガ…ガガッ…ガァアアア…………」
最後に両手をジタバタと空を掻きむしるように動かしてからディアボロは動きを止め、そしてハイデンが立ち上がると同時に砂となり、空に舞っていった。
「(やりましたね、ハイデン!)」
「はい、これで残るは山の奥の1体だけですね!」
――――
こうして山の中腹あたりで私とハイデンは1体のクマ型ディアボロ、2体のガーゴイル型ディアボロを倒すことができたのだった。
ベルセルクさんのフェデーレのヴァナルガンドに4体のディアボロを見つけてもらい、案内だけしてもらうことになり、私は武器化してハイデンと共に森を駆け抜けた。
「《ディアボロは3体が密集して徘徊している。残る1体は少し山の奥だな。》」
「分かりました。」
「(ディアボロ3体同時に相手をするのは初めてですね…!)」
ヴァナルガンドは武器化して大きな狼になったので、移動だけはというベルセルクのお願いでハイデンを乗せてディアボロの元まで運んでもらっていた。背中に乗っているためヴァナルガンドと念話のやりとりをすることができていた。私は武器化してハイデンの手に握られているので、もれなく念話に参加していた。
――――
「《それでは、我は戦闘に参加するなとオーディンから言われているからな、ここまでだ。山の奥の1体の元まではまた連れて行ってやるから、近くに待機していると思ってくれ。…………健闘を祈る。》」
「ここまでありがとうございました、ヴァナルガンドさん。全力を尽くしてきます。」
「(頑張ります!)」
森の中で背中から降りるように言われると、既に視認できる距離にディアボロ3体がいるので、私たちは森の木々に隠れて、ハイデンがヴァナルガンドにお礼を言うと彼は小さく頷いてから森の中に紛れていった。
「さてと…。」
ヴァナルガンドさんが行ったのを確認すると、ハイデンは木々の間から視認できる中でも1番近いディアボロに向かって走り出した。
「ギャウ!?」
いきなり森の木々の中からレイピアを持ったハイデンが現れたことで、ディアボロが驚愕の声を上げた。
「遅い。」
1体目のディアボロは、私とハイデンが初めて出会った時に討伐したクマ型のディアボロと同じ形をしていた。が、前足の鋭い爪が発達しており、アルテミス様の孤児院に現れたディアボロとはまた違う進化をした個体のようだった。
しかし、あの時のディアボロに比べてこのクマ型ディアボロは動きが遅く、初手でハイデンに気付くのが遅くなったのもあり、クマ型ディアボロの顔を覆う白い仮面の眉間にレイピアの剣先が突き刺さった。
ハイデンは私と契約したことで輝石の恩恵として、既に持っていた身体能力をさらに向上させ、異次元の速さのスピードとそのスピードによってもたらされるパワーを手に入れた。つまり。クマ型ディアボロの顔を覆う白い仮面に突き刺さったレイピアは楽々クマ型ディアボロの頭をも貫き、吹き飛ばした。
「(前よりも、威力が上がってる…!)」
朱朱様と一緒に戦ったディアボロの時は、白の仮面を壊すのも精一杯で、頭も一緒に吹き飛ばすことが出来たのは初めてだった。
頭を失くしてフラフラとした胴体は背中から倒れ、砂となった。
「まずは1体!」
ハイデンがそう叫ぶと、直ぐに次のディアボロを視界に捉えた。そして、動きを止めていると、攻撃の的になってしまうため、ハイデンは木々の間を縫うように走り、ディアボロとの距離を少しずつ詰めて行った。残るディアボロはガーゴイル型2体だった。翼を持ち、ゴブリンのように醜い顔つきの恐ろしい怪物のディアボロはその翼を使って空を自在に飛び回っていた。2体もいるとなると、1体に集中することができず、集中攻撃を受けてしまう可能性も出てくる。ヴァナルガンドさんの索敵でディアボロが3体も集結している話を聞いた時点で、1番弱そうなやつがいた場合はほぼ奇襲作戦で、速攻で1体を片付ける作戦で行こうと決めていた。おかげで1体は直ぐに倒すことができたが、ガーゴイル型が2体というのは予想外だった。
私のレイピアは空を飛ぶガーゴイル型のディアボロには地上からでは攻撃の術が無い。
しかし、そんな状況を打破していかなければ、オーディン様からの試練にはクリアできないし、今後の戦闘の課題にもなる。
「(森の中…密集した木…。ハイデン、あなたの身体能力と輝石の恩恵でできることがあるかもしれません!)」
「ガーゴイル型はその翼をまずどうにかするのが常套手段です。それをクリアできるのですか?」
「(はい!)」
「…分かりました。あなたを信じます。」
ハイデンが一瞬の間の後、頷いてくれたので、私は周りの環境を使って空中にいるガーゴイル型ディアボロと戦う作戦をハイデンに話した。
話している間もガーゴイル型ディアボロはハイデンに向かって何やら赤黒いエネルギー弾を発射して、攻撃してきていた。あれを食らったらダメなやつだと直感で悟った。
ハイデンが森の木々を上手く使って攻撃を避けて一定の距離をとっているため、ディアボロたちは次第にイライラしだして、力を溜めてからエネルギー弾を放った。先程までと同じようなものだと思っていたが…。
「(木々を避けて追ってくるタイプになりましたよ!?)」
「っち…厄介ですね。でも、ゼルチアーノの作戦は試す価値はありそうですね。やってみます!」
自動追尾のエネルギー弾を気にしながら、ハイデンは私の作戦通り、密集した森の木々を利用して、木に向かって走っていき、根本の方から木を蹴って少し上へジャンプし、直ぐ近くの木を蹴って…というふうにどんどん上へとジャンプしていった。これはハイデンの元の身体能力に私の輝石の恩恵によって上乗せされた身体能力の向上とスピードによってできる芸当だ。
「さぁ、あなたたちと同じ高さになりましたね。」
「グルルッ…!」
2体のガーゴイル型ディアボロもまさか人間が空中戦に張り合ってくるなど思ってなかったのか、悔しそうに歯軋りをした。その一瞬も逃すことなく、ハイデンは動きを止めることなく、更に上に伸びる木々の間を素早いジャンプで移動し、1体のガーゴイル型ディアボロの翼の左側に向かってレイピアを突き刺して、そのまま、馬乗りになるような形で地面に落とした。ディアボロはハイデンが木々を使って移動して予測不能な軌道で繰り出してくる攻撃に対処することができずにそのまま背中から森の地面に落ちた。
もう1体のガーゴイル型ディアボロがエネルギー弾を放とうと両手を翳して構えたのを視界の端で捉えると、翼に突き刺さったレイピアを直ぐに抜き、そのまま垂直に上に高くジャンプした。
翼に攻撃したディアボロに馬乗りになっていたことで、もう片方のディアボロのエネルギー弾の照準はディアボロに馬乗りになっているハイデンだったわけで…、ハイデンがジャンプして避けたということは…?
「ギャギャギャッ!!!!!」
片方のディアボロが放った赤黒いエネルギー弾はハイデンが避けた先、つまりは地面に落ちていたディアボロに当たった。
エネルギー弾を直撃で食らってしまったディアボロは、電撃を受けたみたいにビリビリと体が痙攣し、焦げたような匂いと少量の煙を上げていた。
「(うわ…、絶対あのエネルギー弾には当たっちゃダメじゃないですか!)」
「でも、味方の攻撃では倒すことはできてないですね…。やっぱり私たちがフェデーレを使って頭を落とさないと。」
少し体が焦げてしまったディアボロは体力がだいぶ削れてしまったようで、ふらふらと立ち上がった。が、翼には先程ハイデンがレイピアを突き刺して開けた穴が空いているその痛みもあってか、飛ぶことができないようだった。
「まだガーゴイル型には白い仮面が付いたままです。体力が1番削れている奴から先に片付けましょう。」
「(はい!)」
上空にいるディアボロも目の前の地上にいるディアボロも両手を翳してエネルギー弾の発射準備に入ったので、ハイデンはサッと身を翻して森の木々の影に隠れた。その瞬間に2体のディアボロから赤黒いエネルギー弾が次々と放たれ、木に隠れていなければ蜂の巣状態になるほどの連射が止まらなかった。
「2体同時に連続で撃つことで近づけさせないつもりですね…。しかも力を溜めて放てば追尾型のエネルギー弾も発射できる…。2体いるというのが厄介ですね。」
「(……。)」
「攻撃が止むまで隠れていても持久戦に持ち込まれては不利になりやすいですし…、なんとかして翼に穴を開けた方を倒さなければ…。」
隠れている木から少しだけ顔を出して様子を伺ってこの状況の打開策を考えているハイデンに対し、私は考え込んでいた。
「(あの、ハイデン。ディアボロたちが放ってくるエネルギー弾って、そもそもどんな力で構成されているんですか?)」
「え…?えっ、と…、恐らくですが、人間たちや文明から吸い取った生命エネルギーを暗転させたもの…、でしょうか?」
「(それなら…、人間である私たちフェデーレが持っている力は生命エネルギーの塊…ということになりませんか?フェデーレの武器だけがディアボロを倒すことのできる唯一の武器というのにも頷けます。なら、この力はディアボロのエネルギー弾にも対処できるはずです!私であのエネルギー弾を弾く…とか、切ってみましょうよ!)」
私からの質問に最初ハイデンは困惑した表情で答えていたが、私の質問の意図に気付くと、ハッとして顎に手を当てて考え込んだ。数秒考えた後、最後の私を使って試すことには一瞬心配そうな顔をしたが、短いため息を吐くと、頷いてくれた。
「分かりました。このエネルギー弾の猛攻をどうにかして手傷の負ったディアボロに近付くにはその方法を試すしかなさそうですね…。ゼルチアーノ、"絶対に勝つ"という強い意思を持って、最強硬度を保ってください。カウント3で正面から突撃します。」
「(分かりました!)」
「3……2……1……!」
ハイデンの3カウントの間に言われた通りにこのディアボロに負けない、絶対に倒す!と強く思ってから、何物も貫き通すという最強硬度の意識を持った瞬間、ハイデンは木々の影から飛び出して走り出した。
再び現れたハイデンに、ディアボロ2体は直ぐに気がついた。両手を翳して溜める様子もなく、エネルギー弾を乱発してきた。その様子にハイデンは臆することなく、逆に走るスピードを速めて、翼を負傷しているディアボロに向かって距離を詰めた。
そして――
「ハッ!!!」
「グギャッ!!??」
乱発してくるディアボロのエネルギー弾をハイデンはレイピアを使って次々と真っ二つに切っては払い落としていった。まさか先ほどまで避けていて自分たちに近付けもしなかった奴らがエネルギー弾を切り落としていく姿にディアボロは動揺を隠せずにいた。翼を負傷して地上から攻撃をしているディアボロは動揺が攻撃の手を緩めてしまい、その一瞬の隙にハイデンは輝石の恩恵で右足を強く踏み込むと、素早くディアボロの前まで移動して至近距離からガーゴイル型ディアボロの顔を覆う、白の仮面に向かって鋭い突きを繰り出した。
〈ガギィィン!!!〉
一瞬バチリと火花が飛んでいたが、ハイデンのスピードとパワーが増している突き技はなんとかガーゴイル型のディアボロの白い仮面を破壊した。だが、仮面が砕け落ちただけで、ディアボロの頭は無事だった。
クマ型ディアボロの時は頭と仮面を同時に吹っ飛ばすことも出来たし、ハイデンの蹴りだけでも白い仮面は破壊できてた。
「(もしかして…)」
「ディアボロの姿によって白い仮面の耐久力が違う…んでしょうか?」
「(ディアボロの姿によって白い仮面の耐久力が違う?)」
私とハイデンは同じ結論に辿り着いたらしく、同時に口に出していた。
「(ハイデンもそう思いましたか?)」
「ええ。この推測なら先程のクマ型ディアボロの仮面がいとも容易く壊せたのも頷けます。」
ハイデンも知らなかったディアボロの白い仮面の耐久力がディアボロの強さに比例していること。小さな発見かもしれないが、私たちにとっては戦いに何か役立てることができる気がしていた。
白い仮面が無くなればディアボロの力はガクッと下がる。飛べもしないし弱点の頭を守るものも無くなったディアボロはあっという間に倒された。
「さて…、ここに残るのは1体だけになりましたね。」
「(戦い方は分かりましたし、1体だけなら…、サクッと終わらせましょう!)」
「ギャ…ギャウッ!!!!!!」
ハイデンの不敵な笑みにディアボロは一瞬怯んだが、直ぐに吠えてこちらに突っ込んできたので、ハイデンはレイピアを使って、まずは翼を使えなくするためにわざと体を少しずらして片方の翼を狙って穴を開けるように攻撃をした。
ディアボロはくるっと旋回して再び飛ぼうとしたが、ハイデンの攻撃により、翼をうまく使うことができず、そのまま地面にズザザァーッと滑り込んでしまった。
その隙をハイデンが逃すはずもなく、一瞬で距離を詰めると、地面に倒れ込んでいるディアボロの白い仮面に向かってレイピアを振り下ろした。
が、その瞬間、ディアボロは最後の抵抗だとばかりに、レイピアの先が顔の目の前まで迫ってくる間にエネルギー弾を挟み、なんとかレイピアの先が仮面に届くのを阻止していた。
私のレイピアの先とエネルギー弾がばちばちと火花を散らしているが、私はその瞬間から"貫き通す!"という意思を強く持った。すると、ググッとレイピアが次第にエネルギー弾にズブズブと突き刺さっていった。
「ギャギャァッ!?」
この苦肉の策でもダメかとディアボロは驚いていたが、あれだけの生命エネルギーを暗転させた、"負のエネルギー"のエネルギー弾を使ったということは、それだけ生命エネルギーを奪い取って蓄積していたということ。人々を襲い、文明を壊したディアボロだと自ら暴露した。
そんなやつはさっさとこの世界からおさらばするべきだ。
「(壊れろ!!!!)」
私が最後にそう念じると、ハイデンがレイピアにグッと力を入れて、そのままレイピアの先はエネルギー弾を貫き、ディアボロの白い仮面の中心に突き刺さった。そして、その勢いのままハイデンが力を込めて地面にまでレイピアを突き刺したことで、ディアボロの白い仮面と頭はレイピアが貫通した。
「ガ…ガガッ…ガァアアア…………」
最後に両手をジタバタと空を掻きむしるように動かしてからディアボロは動きを止め、そしてハイデンが立ち上がると同時に砂となり、空に舞っていった。
「(やりましたね、ハイデン!)」
「はい、これで残るは山の奥の1体だけですね!」
――――
こうして山の中腹あたりで私とハイデンは1体のクマ型ディアボロ、2体のガーゴイル型ディアボロを倒すことができたのだった。
