長谷部
今日なんか利き手親指の付け根あたりが痛むなぁと思っていたら知らぬ間に内出血していたようで、掌を見て紫がかった色味に気付き「うわあ」と思わず声をあげていた。そういえばいつか何かの時に「あっやっちまった」と思った(今思えば負傷の)瞬間があったような気もする。何かを握ったり放したりすると鈍く痛むので、思いものを持つのはしんどそうである。刀とかちょっと厳しそうだし「これ私が剣士だったら大変なところだったなあ」などと考えていたのも声に出ていたようで、ちょうどさっきの「うわあ」を聞いて駆けつけてくれたのだろう近侍が複雑な顔をした。なに、それどういう気持ちの顔?なんてこともすぐに訊けない審神者と近侍の距離感ってなんだか思ったより遠いのかもしれない。刀を振るう気もない奴だと思って呆れられたかな、持って欲しかったかな、呑気過ぎて呆れられたかな、このうつくしい刀はいま何を思ってどんな感情を抱いているのだろう、それを気にしている私は何なんだろう、近侍の期待に応えられる主だと思われたいのだろうか、不満を抱かれるのが怖いのだろうか。私は彼にどう思われたいんだろう、私はどうしたいんだろう。ああまた勝手にぐるぐる考えてるなあ私の頭、難儀だなあ。
不意に近侍が私の痛めた手を両手でそっと包むようにして触れた。そして一言「お大事に」と言ったその声は労りに満ちていて、そのささやかな温度が、ああなんてあたたかいんだろう。馬鹿だなあ私、こんなに大事な刀に、こんなに大事にされてるのに。うまくいえないけど多分生卵を手に取る時よりもずっと優しく、丁寧に、触れられている気がする。いいのかな、こんな私のまんまでそんなに優しくされていいのかな。独り言なら勝手に溢れ出すくらい出るのに、なんて言っていいかわからない。わからないけど、こんなふうに触れられてしまう審神者と近侍の距離感って、もしかすると思ったよりずっと近いのかもしれない。
不意に近侍が私の痛めた手を両手でそっと包むようにして触れた。そして一言「お大事に」と言ったその声は労りに満ちていて、そのささやかな温度が、ああなんてあたたかいんだろう。馬鹿だなあ私、こんなに大事な刀に、こんなに大事にされてるのに。うまくいえないけど多分生卵を手に取る時よりもずっと優しく、丁寧に、触れられている気がする。いいのかな、こんな私のまんまでそんなに優しくされていいのかな。独り言なら勝手に溢れ出すくらい出るのに、なんて言っていいかわからない。わからないけど、こんなふうに触れられてしまう審神者と近侍の距離感って、もしかすると思ったよりずっと近いのかもしれない。
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