このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

イタチ

「兄さん兄さん」
 机に向かい筆記課題を片づけていると、妹が来た。俺の椅子の脇に座り込み、こちらに寄りかかる。声は通常どおりを装っているが、顔はこちらを向かない。
「どうした?」
「何かもう滅茶苦茶泣きたい。泣いていい?」
「はあ」
「...うえぇ...」
「即行か...」
 何があったかは知らないが不安定なのだろう。傍らで泣く妹の頭をぽんぽんと軽く撫でる。柔らかな髪の感触が掌に心地よい。わざわざここに来るということは、一人になりたくなかったのだろう。よそで年甲斐もなく泣きじゃくるのを厭い、ここまで耐えてきたのだろ うか。何のせいで泣いているのかはわからないが、何にせよ原因となったものを全力で叩き潰したい心情に駆られる。俺の妹を泣かせるとはどういう所存だ。滅してやる。
「兄さん」
「何だ」
「私、兄さんが妹のためなら何でもやらかすようなシスコンでもなく『俺には関係ねーよ』って突き放すような薄情者でもなくいつも話聴いてくれるけど根掘り葉掘り詮索したりもしないほどよく優しいいい人でほんとよかったって思う」
「......そうか」
「ありがと、だいすき」
 何が原因かは知らないが仕方ない。この可愛い妹に免じて抹殺はやめてやろう。

20130224
1/1ページ
    スキ