日々の仕事は意外と大変だった。時々怪我をする人がいてほとんどは大人達の八つ当たり。それに腹が立つしなによりそれはヒューマンデブリに向けられることが多かった。彼らのほとんどは医務室になんか来てくれなくて私が話を聞いて迎えに行っていた。私は怪我を手当することは心の手当にも値すると思っている。人にやってもらうことで心のケアをして心までは大人に渡させない。全てを諦めてしまってはいけない。ここに来てヒューマンデブリについてたくさん調べたけれど彼らを自由にするには彼らが自分を買い戻すか登録書を手に入れるしかない。でもそれは現実的とは言えない。私がマルバから買って登録書を彼らに渡す、それが一番安全でいい案なはずだ。でもマルバもそう簡単には渡してくれないだろう。それに私はチャドさんだけじゃなくてみんなを自由にしたい。偽善かもしれないけどそうしたい。でもそうするにはまだまだお金が足りないだろう。何せここはヒューマンデブリの人数が多い。
「ユールさん、ヒューマンデブリって、どれくらいで売られてるか、知ってる？」
「……やめときな。ヒューマンデブリだった人間がそうじゃなくなったとしてもその後に普通の生活ができるって保証はない。」
「でも、」
「ここでなら多少の給料がある。他はどうかわからないでしょ。余計なことしない方がいい。」
わかってはいても、どうにかしたいって思ってしまう。でもこれは自己満足に過ぎない。彼らがそれを望んでいるのかと聞かれれば答えはわからない、だ。私が彼らにできることは怪我を手当することだけだ。
「…クロエ、倉庫に行って荷物を持ってきてくれる？今は考えるより体を動かしていた方がいい。」
「はい…。」
ユールさんの言う通りだ。私みたいな子供がいくら考えても何も変わらない。私は私にできることをやるしかないんだから、できないことを考えても仕方ない。
倉庫へ行き箱を一つ持って外に出るとチャドさんが遠くにいた。いつか私はチャドさんを幸せにしたい。隣に私がいなくても、彼だけは幸せにしてあげたい。今までたくさん辛い思いをしてきた彼だから人の痛みに敏感な彼だからこそ幸せになってもらいたかった。あわよくば幸せな彼の隣に私がいたのなら、どんなに幸せか。
そんなことを考えているとつい足は彼の方へ進んでいた。せっかくだから一声かけてまた仕事に戻ろう。このモヤモヤを吹き飛ばしてしまうために一度休憩だ。