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第3話
名前変換
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ふとレイの言葉が脳裏をよぎる。
『うちの村には変なしきたりがあってさ、毎年誕生日になると、神社で特別なお祈りをした地蔵に、願い事を書いた板を1年間───次の誕生日までくくりつけるんだ。そうすると願いが叶うっていわれてるんだって』
ドクンと心臓がが跳ねた。
『今年はなんて書いたと思う?
・・・ “この幸せな日々がずっと続きますように” 』
気がついたら、俺は地蔵をぐちゃぐちゃにひっくり返しながら板を探し回っていた。
違う。違う。
これでもない。
ふと、ある板を見つけて手が止まった。
雨風に晒され、少し汚れている。
そこに並んでいたのは、あまり綺麗とは言えない少し角ばった字。
この幸せな日々がずっと続きますように
震える手でゆっくりとその板を裏返すと、隅に小さく名前が書かれている。
それを見た瞬間、血の気がサァっと引いていく感覚がして、視界がぐらついた。
叫び声が聞こえた。
声の主は自分だった。
こうなったのがレイのいる村でなければ良かったのに。
代わりに別の場所が襲われればよかったのに。
そんなことを考えてしまう自分が恐ろしいとも思わなかった。
あれからどうやって帰ったか覚えていない。
里の近くで倒れていた俺を、誰かが家まで運んでくれたらしい。
事情を聞かれても、俺は答えなかった。
そもそもレイのことを知っている人はいないし、あの惨状を言葉にするのが恐ろしかった。
これは夢で、そのうち目覚めてくれると信じたかった。
でも、夢じゃなかった。
後になって「梓村が何者かに襲われた」という噂が広まった。
俺はただ、呆然とするしかなかった。
あれから俺は、気を紛らわせるように死にものぐるいで修行をした。
スピードも技術も、何もかもが上達した。
それでも悲しみは消えるわけがなかった。
レイは俺のすべてだったと言っても過言ではないのだと思う。
そのレイが、生きていた。
これほどまでに希望を感じたことが、今まであっただろうか。
「絶対に見つけ出す・・・!!」
俺はビルの屋上から街を見下ろしながら、決意した。
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