第10話
夢小説設定
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「心の、強さ・・・」
楓香はジェノスを見つめ返した。
そうだ。ジェノスも壁を乗り越えたうちの1人なんだ。
故郷を暴走サイボーグに襲われ、友達も家も家族も奪われ、残ったのは自分の命だけで。
喪失感に飲み込まれ抜け殻の日々を過ごすのでもなく、いっそのことみんなの所へと自ら命を断つのでもなく、二度とこんなことが起こらないように必ずその暴走サイボーグを破壊する、と強く生きる道を選んだ。
私じゃ想像できないほどの恐怖や憎しみに打ち勝ち今ここにいる。
それに気づいた時、自分の悩みがとてもちっぽけに思えた。
壁を乗り越えなきゃこれ以上強くはなれない。
今私に必要なのは、壁に立ち向かえる心の強さなんだ。
絡まった糸がほどけていくように、今まで考えていたマイナスの事が浄化されて消えていく。
いつの間にか涙は乾いていた。
「・・・ありがとう、ジェノス」
楓香がそう言うと、ジェノスは微笑んだ。
その顔が優しいけれどどこか儚げで、その美しさに胸が締め付けられそうになった。
(ジェノスってこんな
しばらくその端正な顔に見惚れていた楓香は、いつの間にかジェノスが不思議そうな顔をしているのに気づいて慌てて目をそらした。
再び沈黙が訪れるかと思いきや、今回はジェノスが先に話しかけた。
「・・・夕方には退院できるそうだ。迎えに来るからそれまでゆっくり休むといい」
楓香が疲れていることに気がついたのか、ジェノスはそう言って立ち上がり部屋をあとにした。
楓香はジェノスが出て行った扉を見つめた。
窓からは陽の光が暖かく降り注いでいる。
壁にかかっている時計を見ると、もう正午を少し過ぎていた。
(ジェノスの言った通り、少し休もう・・・)
ベッドに横になり布団を胸元まで引き上げると、あっという間に眠気が襲ってきた。
最近色々なことがあっていつの間にか疲れがたまっていたようだ。
ジェノスはそれに気づいていたのだ。
(私、自分でも気づかなかったのに・・・)
気にかけてくれていたことが嬉しくて、楓香は気持ちよさそうに微笑みながら眠りについた。