第10話
夢小説設定
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「「・・・・・・」」
楓香とジェノスの間を沈黙が流れる。
気まずさを紛らわせるように、楓香は再びプリンを食べ始めた。
ジェノスは先程までサイタマが座っていた椅子に座り、楓香を見つめた。
楓香の名前を呼ぼうと口を開いたその時、
「私・・・」
楓香が先に話し始めたので、ジェノスは口をつぐんだ。
「何でS級ヒーローになったんだろうね」
食べかけのプリンを見つめるその瞳は、なんだか哀しそうだった。
『それは、楓香の傷を癒やす力が特別なものだと協会に判断されたから』
そう言おうとしたが、これが本当に楓香の質問の答えになるとは思わず、黙って続きを待った。
「いくら傷を治せたって、こんな・・・」
こんなに弱かったらS級ヒーローにふさわしくない、と言いたいのだろう。
「さっきの怪人も、ジェノスは難なく倒せたのに私はあそこまで追い詰められた。
こんなに弱いのに “S級” ってだけでみんな私が来れば助かると思ってる。
それでみんなを油断させて、もし怪人に怪我させられるようなことがあったらどうしよう・・・っ」
ポタリとプリンカップの中に涙が落ちた。
そんなことも気にせず楓香は続ける。
「私、そんな無責任なことできないよ・・・!」
「ならA級にランクを下げてもらうつもりか?」
「え・・・?」
ジェノスの言葉に、楓香は顔を上げる。
楓香の瞳に映るのは、いつにも増して真剣な顔のジェノス。
「A級以下に降格するのは、協会にS級として活動すべきと判断されたのにそれに応えず逃げるということだ。そんなのは甘えだ」
「・・・・・・」
「いつまでも逃げていてはヒーローにはなれない」
(確かにそうだ。でも・・・)
楓香には自信がなかった。
自分じゃどんなに頑張ってもS級並の強さになるのは無理だ。
「楓香は市民を守りきれる自身がないのだろう? だったら強くなればいい」
「そんな簡単に言われたって」
「簡単じゃないかもしれない。だが楓香はその力を持ってる」
ジェノスはまっすぐに楓香を見つめる。
楓香の瞳に光が灯ったような気がした。
「誰だってはじめは無力だ。
困難に直面して、苦しんでもがいて、それでも諦めずに立ち上がったとき初めて成長できる。
強い人間か弱い人間かを決めるのは、そういった試練に立ち向かう心の強さがあるかどうだ」