第6話
夢小説設定
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「楓香ちゃん、きゅうり2本!」
「はーい!」
週4日の八百屋でのバイト。
楓香はいつも通り看板娘として元気よく働いていた。
今までは年齢層の高い人ばかりが来ていたが、楓香がS級ヒーローになったからか若い人も来るようになった。
「サインください!」
20代前半くらいの男の人に声をかけられる。
楓香はこういう人を利用して商売をする方法を最近覚えた。
「んー。今日はトマトの売れ行きが良くなくて、忙しいんだよねー・・・」
困ったように腕を組む。
こうすれば、大体の人は買ってくれるのだ。
「5個買います!」
楓香は袋にトマトを5個入れ男の人に渡す。
そして渡された紙にペンでサインを書いた。
(サイン考えといてよかった)
S級ヒーローになったらもしかしたらこんなこともあるのではないかと思って練習しておいたのだ。
「ありがとうございましたー!」
笑顔でお客さんを見送る。
「楓香ちゃん、ちょっといいかな」
声をかけられ振り向くと、少し暗い顔をした店長が手招きをしていた。
ただ事ではないと思って、店長に続いて店の奥へ入る。
後ろで店長の奥さんが店のシャッターを閉めた。
「えっ?」
「今日はもう閉店にするよ」
店長の寂しそうな顔に違和感を覚える。
「それで、話って何ですか?」
居間に通され、ちゃぶ台の上に熱々のお茶を出された。
猫舌なのですぐには飲めないなと思い、とりあえず話を聞こうと目の前の店長を見つめた。
店長の日焼けした顔は、申し訳なさそうな、辛そうな顔をしていた。
いつもはニコニコしていて目尻のシワがチャームポイントのはずなのに、今は目尻のシワは薄く、代わりに眉間にシワが寄っていた。
店長はしばらく黙っていたが、やがて重い口を開いた。
「・・・店を、閉めることにしたんだ」
「え・・・?」
(何で?)
驚いて店長を質問攻めにしてしまう。
「何でですか!? 売れ行きが悪くなったわけじゃないですよね? 最近はお客さんもどんどん増えてるし・・・
あっ、立ち退きしろって言われたとか? それか・・・」
「いや、そういうわけじゃないんだ」
楓香は口をつぐみ次の言葉を待った。