短編
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「目的地はここを降りたところだから」
2Bはこちらを振り返りもせずに、ポッドに片腕を絡みつかせた。そのまま一呼吸のためらいもなく、崖から飛び降り、なまえの息を止めさせた。
「さぁなまえ、僕たちも行きましょう。ポッドを支援につかせるので」
「えっ無理」
9Sの優しい声に対して、全力で拒否した。確かにここからの景色は見晴らしも良く、突起物や障害物もない。けれども、距離が問題なのだ。一体着地まで何キロあることか。いくら緑に覆われていて土壌が柔らかいとしても、この高度から落下するのは自殺するのと同義である。
「大丈夫です、ポッドがあるので」
「せめて階段とかないの?ほら、どこか近くににエレベーターあるでしょ?」
「ないですよ。このルートが最短距離で任務のために効率が良いんです。他の道だと遠回りになりますし何時間も歩くんじゃ体力の無駄です」
「だって、ここ崖だよ?!」
「それじゃあ僕ももう行くので」
9Sは赤い機体のポッドに手を伸ばした。
「やだっ、置いてかないで!」
この高度から飛び降りるのも恐怖だが、置き去りにされるのは嫌だ。ここは平和主義のロボットたちの住むパスカルの村でもない、荒野だ。いつ機械生命体が襲ってくるかもわからない。それになまえはこれといった戦闘手段を持たないのだ。コールドスリープ前に訓練としてある程度護身術を叩き込まれたとはいえ、生身では鋼鉄のボディにへこみ一つつけることすらできないだろう。
もちろん、生きた人間である彼女をこんなところに残すわけがない。が、このまま動けないようでは任務に支障が出るのであえて突き放すような言い方をした。
そうして窮鼠の状態に陥ったなまえは、9Sの首に両腕を回してしがみついた。勢いで彼はたたらを踏み、足場が離れた。2人の体ががくりと下がる。9Sはとっさに自由な方の腕をなまえの体に回し支える。
「わっ、とっ、危ないなぁもう!」
「きゃああああああ!!!」
「ポッドb、なまえの補助を」
『了解』
黒いアームがしっかりと9Sの首の後ろで組まれた手首を上から掴み、飛行を助けた。首の締まりが楽になった。降下が緩やかになる。
長い滞空時間。締め付けるようにくっつく首からも胸からも早い脈動が聞こえる。彼女の身体の温もりが、アンドロイドのカラダに伝わるには十分すぎる。アンドロイドの身とは違い、戦闘用に強化されていない純粋な生物は、筋肉ですらこんなにも柔らかいのか。
そのあたたかさに心地よさを感じつつも、どうしてか背徳感が生まれる。
無事に着地してポッドが離れてからも、なまえの両足は浮いたまま。膝を曲げて下ろそうとしたが、彼女の足は体を支えてはくれなかった。あわてて引き上げて、抱きしめる形になる。
「なまえ、もう着きましたから」
「う、うん……」
「2Bがどんどん先に行ってますよ」
「もうちょっと、待って」
そう言って、彼女は深呼吸を繰り返す。離れるとき9Sの肩をかすめた指先はいまだ震えている。
爽やかな風が急に冷たく感じられた。
「ありがとう」
『報告:9Sの心拍数が急速に上昇、頭部に熱が集中』
「うるさいポッド」
「え?ナインズ大丈夫?私が首締めちゃった?」
2Bはこちらを振り返りもせずに、ポッドに片腕を絡みつかせた。そのまま一呼吸のためらいもなく、崖から飛び降り、なまえの息を止めさせた。
「さぁなまえ、僕たちも行きましょう。ポッドを支援につかせるので」
「えっ無理」
9Sの優しい声に対して、全力で拒否した。確かにここからの景色は見晴らしも良く、突起物や障害物もない。けれども、距離が問題なのだ。一体着地まで何キロあることか。いくら緑に覆われていて土壌が柔らかいとしても、この高度から落下するのは自殺するのと同義である。
「大丈夫です、ポッドがあるので」
「せめて階段とかないの?ほら、どこか近くににエレベーターあるでしょ?」
「ないですよ。このルートが最短距離で任務のために効率が良いんです。他の道だと遠回りになりますし何時間も歩くんじゃ体力の無駄です」
「だって、ここ崖だよ?!」
「それじゃあ僕ももう行くので」
9Sは赤い機体のポッドに手を伸ばした。
「やだっ、置いてかないで!」
この高度から飛び降りるのも恐怖だが、置き去りにされるのは嫌だ。ここは平和主義のロボットたちの住むパスカルの村でもない、荒野だ。いつ機械生命体が襲ってくるかもわからない。それになまえはこれといった戦闘手段を持たないのだ。コールドスリープ前に訓練としてある程度護身術を叩き込まれたとはいえ、生身では鋼鉄のボディにへこみ一つつけることすらできないだろう。
もちろん、生きた人間である彼女をこんなところに残すわけがない。が、このまま動けないようでは任務に支障が出るのであえて突き放すような言い方をした。
そうして窮鼠の状態に陥ったなまえは、9Sの首に両腕を回してしがみついた。勢いで彼はたたらを踏み、足場が離れた。2人の体ががくりと下がる。9Sはとっさに自由な方の腕をなまえの体に回し支える。
「わっ、とっ、危ないなぁもう!」
「きゃああああああ!!!」
「ポッドb、なまえの補助を」
『了解』
黒いアームがしっかりと9Sの首の後ろで組まれた手首を上から掴み、飛行を助けた。首の締まりが楽になった。降下が緩やかになる。
長い滞空時間。締め付けるようにくっつく首からも胸からも早い脈動が聞こえる。彼女の身体の温もりが、アンドロイドのカラダに伝わるには十分すぎる。アンドロイドの身とは違い、戦闘用に強化されていない純粋な生物は、筋肉ですらこんなにも柔らかいのか。
そのあたたかさに心地よさを感じつつも、どうしてか背徳感が生まれる。
無事に着地してポッドが離れてからも、なまえの両足は浮いたまま。膝を曲げて下ろそうとしたが、彼女の足は体を支えてはくれなかった。あわてて引き上げて、抱きしめる形になる。
「なまえ、もう着きましたから」
「う、うん……」
「2Bがどんどん先に行ってますよ」
「もうちょっと、待って」
そう言って、彼女は深呼吸を繰り返す。離れるとき9Sの肩をかすめた指先はいまだ震えている。
爽やかな風が急に冷たく感じられた。
「ありがとう」
『報告:9Sの心拍数が急速に上昇、頭部に熱が集中』
「うるさいポッド」
「え?ナインズ大丈夫?私が首締めちゃった?」
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